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チャーチル閣下の秘書 [海外の作家 ま行]


チャーチル閣下の秘書 (創元推理文庫)

チャーチル閣下の秘書 (創元推理文庫)

  • 作者: スーザン・イーリア・マクニール
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
空襲が迫るロンドン。この街で1年余りを過ごしたアメリカ育ちのわたしに、チャーチル首相の秘書としてタイピストにならないかという話が舞い込んでくる。自らの能力に見合った職ではないことに苛立ちを感じながらも、わたしはその申し出を受け入れた。首相官邸をめぐるいくつもの謀略が待ち構えていることなど知るはずもなく。才気煥発なマギーの活躍を描く、魅力のシリーズ開幕編。


読後の第一印象は、ウェルメイドな海外ミステリを読んだなぁ、というものでした。
今風なところも盛り込まれていますが、戦時中のイギリスを舞台に、勝気な主人公と、それをとりまく個性的な面々。チャーチルや戦時下のイギリスを取り巻く事件、そして、主人公自身の秘密(父の秘密)。
コージー・ミステリに登場しそうな面々を、第二次世界大戦中のロンドンに抛り込むとどうなるだろう、といった趣きの作品。
非常に要領よく、現代ミステリの要素をちりばめた作品となっています。
逆に言うと、それだけ尖ったところのない作品とも言えるわけで、そのことを物足りないと受け止める読者もいらっしゃるでしょうが、これがデビュー作、いやいや、これだけ楽しく読めればたいしたものではないでしょうか。
父の秘密はあっけないというか、物足りないものの、それを起点に物語がさらに進んでいく構図は、ありふれてはいても手堅いものですし、難しい時代に巡り会ってしまった登場人物たちの仲も楽しめます。
「あなたたちだって、自分であることからは逃げられないはずよ。わたしもそうなだけ。ただし、理解してもらえるとは思ってない」(380ページ)
というのは、なかなかの名せりふではないでしょうか。
既に、
「エリザベス王女の家庭教師」 (創元推理文庫)
「国王陛下の新人スパイ」 (創元推理文庫)
とシリーズの続刊が翻訳されています。
またまた楽しみなシリーズができました。

<蛇足>
全体的に読みやすい翻訳文だったと思いますが、「二の舞を踏む」(218ページ)というのはちと残念。
東京創元社にしてはチェックが甘い!?


原題:Mr. Churchil's Secretary
作者:Susan Elia MacNeal
刊行:2012年
翻訳:圷香織




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スワン・ソング [海外の作家 ま行]

ここから今年の感想です。

年末年始の休み期間中に古ーい積読本のどれかを消化しようと思って引っ張り出したのが、このマキャモンの「スワン・ソング」〈上〉  〈下〉 (福武文庫)
福武文庫って、今もあるのでしょうか? 出版社はベネッセコーポレーション(旧福武書店ですね)。特に海外作品では、結構渋いというか、貴重なセレクションをしていたような印象。ウィリアム・ディールの「真実の行方」も福武文庫でしたね。

奥付を見ると1996年。いやあ、古い! おそろしく長い積読にしていました。
当然絶版で、今 amazon.co.jp では手に入りません。いつものような感じではぼくの腕では引用ができなかったので、下のような形で書影を引用します。

スワン・ソング〈上〉 (福武文庫)

スワン・ソング〈上〉 (福武文庫)

  • 作者: ロバート・R. マキャモン
  • 出版社/メーカー: ベネッセコーポレーション
  • 発売日: 1996/10
  • メディア: 文庫
スワン・ソング〈下〉 (福武文庫)

スワン・ソング〈下〉 (福武文庫)

  • 作者: ロバート・R. マキャモン
  • 出版社/メーカー: ベネッセコーポレーション
  • 発売日: 1996/10
  • メディア: 文庫

なんか絵は大きいし、上巻の絵は横倒しになっているし(amazon.co.jp のページでの絵自体が横倒しです)、不思議です。

キング、クーンツに次ぐ、モダン・ホラー第三の男、として日本に紹介されていましたね、マキャモンは。
ホラー、ホラーした作品よりも、「少年時代」〈上〉 〈下〉 (ヴィレッジブックス)「遙か南へ」 (文春文庫)といった作品の方が評価が高かったように思います。
この「スワン・ソング」〈上〉  〈下〉 は、それらに比べると古い作品なので、作者が未だ発展途上にいる時代の作品です(原書発行は1987年)。
第1回ブラム・ストーカー賞と日本冒険小説協会大賞を受賞しています。

<裏表紙あらすじ>
第三次世界大戦勃発。核ミサイルによる炎の柱と放射能の嵐が全土を覆い尽くした。生き延びた人々を待っていたのは、放射能障害、「核の冬」の極寒、そして過去の遺物の争奪……死よりなお凄惨な狂気の世界であった。核戦争後のアメリカ大陸を舞台に繰り広げられる世界再生の鍵を握る少女スワンを巡る聖と邪の闘い。世紀末の黙示録神話を描く「超」大作巨篇。<上巻>
“輪(リング)”の浮かぶ掲示に導かれるシスター達、ロシアの来襲を妄想し狂気の軍隊を進軍させるマクリン大佐とローランド、復興に向かう人々の心を再び荒廃と狂気に引き戻さんと暗躍する「深紅の目の男」、あらゆる者たちの運命の糸が、次第にスワンのもとに集められていく……果たして世界の行方はいかに。ホラーの枠を超えたマキャモンの現代の聖杯伝説はここに円を閉じる。 <下巻>

非常に分厚い上下巻ですが、退屈しませんよ。特に下巻は、ページを繰るのがもどかしいほどでした。
核戦争後の世界での正邪の対決、って、まあ手垢のついたアイデアですし、特殊な能力を持った少女とそれを守る人々(こちらは普通の人たち)、というのも、ありふれた話です。
ただ「B級グルメが話題になり人気を集めるように」といったら失礼かもしれませんが、わりとよくある話を、盛りだくさんな内容でリーダビリティ抜群に仕上げられていまして、とてもおもしろいです。
ラストも、お約束、といったら叱られるでしょうか? わかりやすいところへ、わかりやすく着地します。でも、それがいいのです。
普通の人たちが、力を合わせて、悪い集団(しかも人間じゃなかったりもします)に立ち向かっていく、そして勝利する。核戦争後の荒廃した世界に、きっちりと希望の光が差し込んでくる、こんな素敵な話があるでしょうか。
タイトルは、主人公である少女の名前がスワンだから、スワン・ソング、なのですが、一般的にスワン・ソング(=白鳥の歌)といえば、「死ぬまぎわに白鳥がうたうという歌。その時の声が最も美しいという言い伝えから、ある人が最後に作った詩歌や曲、また、生前最後の演奏など」を指す語なので、「生前最後」だと、スワンは死んでしまうんだろうなぁ、と思いながら読んでいました。結果どうだったかは、読んでのお楽しみ、です。

もっと早く読めばよかった。
ちょっと今となっては入手困難かもしれませんが、どこかでお手に取る機会があれば、ぜひ、ぜひ。




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リガの犬たち [海外の作家 ま行]


リガの犬たち (創元推理文庫)

リガの犬たち (創元推理文庫)

  • 作者: ヘニング マンケル
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
スウェーデン南部の海岸に、一艘のゴムボートが流れ着いた。その中には、高級なスーツを身につけた二人の男の射殺死体が抱き合うように横たわっていた。彼らはいったい何者なのか? どうやら海の向こう、ソ連か東欧の人間らしいのだが……。小さな田舎町の刑事ヴァランダーは、この国境を超えた事件に思いもよらぬ形で深入りすることになるのだった! 注目のシリーズ第二弾。

「殺人者の顔」 (創元推理文庫)に続き刑事ヴァランダーが主人公をつとめるシリーズの第2作で、帯にも「北欧警察小説の金字塔」と書いてあります。
しかし、読んで受ける印象は、警察小説ではありません。
ヴァランダーはスウェーデン南部の田舎町のイースタ警察の刑事で、その捜査活動を描くので、その意味では警察小説と言ってもよいとは思うのですが、前作「殺人者の顔」 のときも、小さな田舎町の事件かと思っていたら、背景の非常に大きい、国際問題に近いネタが仕込まれていて、スケールのギャップに驚いた記憶があります。
この「リガの犬たち」でも、死体発見こそ田舎町で、最初の捜査は地道な警察小説のパターンですが、途中から急旋回し、タイトル通り、バルト三国のひとつラトヴィアの首都リガまで出張ります。
時代背景としては、まだ独立前のラトヴィアで、旧ソ連の一部です。原書は1992年出版で、作者のあとがきによれば、この本が完成してから数ヶ月後の1991年春にソ連でクーデターが起き、その後押しでラトヴィアが独立する、という時系列です。
独立運動が盛んだったリガで、ソ連派と独立派の闘いに巻き込まれていく外国スウェーデンの田舎町の刑事を主人公にした小説って、警察小説ではないですよね。スパイ小説、冒険小説のテイストでしょうか?
まだ2作しか読んでいませんが、この調子でどんどんスケールの大きい、国際問題がらみの事件に次々とヴァランダーが取り組んでいくとすると、かなり異色のシリーズとして大きく期待したいです。こんな変な小説(念のため、褒め言葉です)、そうそうないですから。読後感は、くそまじめな顔して、バカなこと、とんでもないことをやってみせる人を、横から見ている感じでしょうか? シリアスな作品なのですが、なんだかニヤニヤしてしまいそうです。次作も期待して読みます!
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Xに対する逮捕状 [海外の作家 ま行]

Xに対する逮捕状 (創元推理文庫)

Xに対する逮捕状 (創元推理文庫)

  • 作者: フィリップ・マクドナルド
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/12/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
米国の劇作家ギャレットは自作公演でロンドンを訪れ、齢三十四にしてG・K・チェスタトンの最高傑作ともいうべき本に巡りあった。所在ない日曜の午後、チェスタトンに導かれてノッティング・ヒル界隈を逍遥した彼は、立ち寄った喫茶店で犯罪の謀議と思しき会話を耳にする。すわ一大事と会話の主を追うが尾行に失敗、事件の予兆を告げようにも取り合ってくれる相手が見つからず……。

この「Xに対する逮捕状」は、もともと、国書刊行会の世界探偵小説全集の1巻として翻訳されたものです。クラシックミステリをどんどん翻訳してくれたこの世界探偵小説全集にはとても感謝しています。「探偵小説ファンの見果てぬ夢」と山口雅也さんもおっしゃっている、好企画だったと思います。第4期まで全部で45作となりましたが、実は、「Xに対する逮捕状」だけ、買いそびれていました。単行本で揃わなかったことはかなり残念なのですが、ようやく全部読めたことはたいへんうれしく感じています。
あらすじ、からもわかるかもしれませんが、本書は、本格ミステリというよりは、サスペンスの色彩が強いように思いました。ハリウッドで脚本を書いていた、という作者フィリップ・マクドナルドの経歴が反映されているのかもしれません。
それでいて33ページに「自分がソーンダイク博士だったらな、と思った。そして俄然、ソーンダイク博士とまではいかなくともフレンチ警部くらいにはなったような気になり」なんて文章があったり、茶目っ気があります。
偶然耳にした会話から犯罪の匂いをかぎつける、という、なんだかケメルマンの「九マイルは遠すぎる」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)を思わせるような発端ですが、論理論理を積み重ねていく「九マイルは遠すぎる」 と違い、どうやったらたどりつけるのか、推論しては途切れ、途切れては思い付き、思い付いては行き止まり...という一喜一憂ぶりが楽しい作品です。
最後なんて、タイムリミットサスペンスみたいな風味づけもあります。
世界探偵小説全集の1冊だったことから、本格ミステリを期待するとちょっと肩すかしですが、クラシカルな良質のサスペンスだと思いました。なんだか矛盾した表現ですが、おっとりとしたサスペンス-でも、だれたりしません!-をお楽しみください。
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踊るドルイド [海外の作家 ま行]


踊るドルイド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

踊るドルイド (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

  • 作者: グラディス・ミッチェル
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2008/09/26
  • メディア: ハードカバー


<表紙見返しあらすじ>
見知らぬ男に車に乗せられ、「遅かったな」と言われてなぜか「重病人」を運ばされた。
犯罪に巻き込まれてしまったかもしれない。
相談を受けたミセス・ブラッドリーと秘書のローラが調査に乗り出し、まもなく「ドルイド」をめぐる大規模な犯罪計画が浮かび上がるのだが……

原書房のヴィンテージ・ミステリ・シリーズの1冊で単行本です。
グラディス・ミッチェルというと、風変わりな作品で知られていますが、この作品も相当奇天烈です。
イギリスで巨石群といえばストーン・ヘンジですが、表紙の写真を見るとちょっと雰囲気が違いますね。
9年間隔の連続失踪事件が発生した場所の中心に巨石群ドルイドがある、という設定自体は非常に興味深く、きちんと漏れなく合理的に説明されたら相当感銘を受けるのではないかと思うのですが、謎解きの部分では不満が残る出来栄えとなっています。一応それなりに説明はされるのですが、すっきりしないというか、なんだかなぁ、という印象が残ります。
本書の特長は、ミセス・ブラッドリーを中心に、秘書のローラ、有能な助手(?)ジョージ、巻き込まれた大学生オハラとデニスといった面々が、わいわいがやがやと事件を解こうとどたばた大騒ぎを起こすところだと思います。ドルイドでの見張りというか潜入行なんかはその象徴的シーンだと思います。
かっちりした本格ミステリが好きな人には向かないと思いますが、変な作品がお好きな人にはぜひ、と思います。
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春を待つハンナ [海外の作家 ま行]


三毛猫ウィンキー&ジェーン〈2〉春を待つハンナ (ヴィレッジブックス)

三毛猫ウィンキー&ジェーン〈2〉春を待つハンナ (ヴィレッジブックス)

  • 作者: エヴァン マーシャル
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
前回、愛猫ウィンキーとあざやかに事件を解決し、一躍“ノース・ジャージーのミス・マープル”として有名になった著作権エージェントのジェーン。でも依然として事務所の経営は火の車で頭を抱えていたところ、超人気歌手ゴッデスの代理人をやらないかという耳よりな話が持ちこまれた。いそいそとゴッデスとの初対面に臨んだ場で、なんと仲立ちしてくれた編集者が無惨な姿で発見される。何日か前に開いたひとり息子ニックの誕生日パーティーでは首吊り死体を発見してしまうし、どうしてジェーンの行く先々に死体が? 今度もウィンキーの手を借りて、みごと事件解決となるのか? 好評シリーズ第二弾。

エヴァン・マーシャルのコージー・ミステリーシリーズの第2作で、「迷子のマーリーン―三毛猫ウィンキー&ジェーン〈1〉」 (ヴィレッジブックス) に続くものです。このあと、「すったもんだのステファニー―三毛猫ウィンキー&ジェーン〈3〉」 (ヴィレッジブックス) が訳されていますが、こちらは品切れ(絶版?)で、手に入りません。増刷(復刊?)してくれないものでしょうか。
この作品の最大の特徴は、猫がラストで大活躍するところだと思います。前作「迷子のマーリーン」 では正直さほどの活躍でもなく、「三毛猫ウィンキー&ジェーン」というシリーズの名前の付け方は若干誇張気味だなと思ったのですが、この作品くらいの位置づけならば、ふさわしいと思いました。途中で、ウィンキーの様子がおかしい、というエピソードが出てくるのですが、ちゃんとラストにつながる伏線(?)ともいえるものでした。ウィンキーがんばる、というところ。
シングル・マザーで、子供を抱えていて、仕事があって、周りには支えてくれる暖かい環境・地域社会があって、というコージーらしい枠組みですが、このシリーズは主人公の職業が著作権エージェントということで、かなり派手な要素を自然と入れられるようになっています。アメリカの出版業界の舞台裏を少しのぞける気分が楽しめます。
前作でも思いましたが、作者は登場人物に対してかなり意地悪な解決を用意していまして、これがコージーの色合いを損ねていない点がすばらしいと思っています。ミステリとしてはちょっと最後が急すぎると思いますが、猫を利用して犯人を追い詰めるくだりはとても愉快でした。
コージー・ミステリ好き、猫好きなかたには、よい作品ではなかろうかと。
「すったもんだのステファニー」 が読みたい!

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