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黄緑のネームプレート: 杉原爽香〈46歳の秋〉 [日本の作家 赤川次郎]

黄緑のネームプレート: 杉原爽香〈46歳の秋〉 (光文社文庫)

黄緑のネームプレート: 杉原爽香〈46歳の秋〉 (光文社文庫)

  • 作者: 次郎, 赤川
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/09/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
家族旅行先で、入水自殺を図ろうとした〈AYA〉を助けた爽香と明男。その背景には〈官邸御用達〉と名高い大物作家・郡山の影が……。人気アナウンサーの降板、でっち上げられた不倫疑惑、現総理に反発する人々への圧力――すべてに郡山が関わっていると睨んだ爽香は、次第に事件の真相へ迫っていく! 登場人物が読者と共に年齢を重ねる大人気シリーズ!


帯に「今度の爽香は政治と権力に立ち向かう!」とありまして、まあそれはそれで結構なのですが、個人的には爽香の嫌な面が前面に出た作品だったなぁ、と思いました。
もっとも爽香の嫌な面、というのは、一般的にはいい面としてとらえられる気もしますが......
もうずいぶん前「菫色のハンドバッグ: 杉原爽香、三十八歳の冬」 (光文社文庫)感想に書いたことを繰り返してしまいますが、
「いい人だし、頼りになりますが、なんでもかんでも自分ひとりで背負い込んで、自分でやらないと気がすまない。こういう人が実際に近くにいたとしたらどうでしょうか? いい意味での「遊び」がなさすぎて、息が詰まりそうです。近頃では、わりと独善的に見える行動も目につきますし、長いファンとしては複雑なところです。」

象徴的なのが、<T芸能社五十周年>パーティで、今回のもっぱらの敵である〈官邸御用達〉と名高い作家・郡山に対して物申す場面でしょうか。(250ページ)
郡山の振る舞いも目に余るものではありますが、その対象である栗崎英子が相手にせず受け流そうとしているにもかかわらず、爽香はあえて口をはさみ、郡山をやりこめようとする。
正義を押し通しやりこめたので快哉を叫ぶべきところなのかもしれませんが、個人的にはむしろ、その強引さにうんざりしてしまいました。若い人のやることなら「言ってやった」ですむかもしれませんが、46歳にもなって職場でリーダーも務める人のすることとは到底思えません。
栗崎英子の登場するシーンはいつも楽しみなのに、今回はみそがついてしまいました。

郡山とその妻の造型も、あまりにも俗物のステレオタイプで、興ざめです。

ちょっと爽香の性格を中心に、物語が硬直的になってしまっているような気がします。
それへの対策も含めて、「肌色のポートレート: 杉原爽香〈41歳の秋〉」 (光文社文庫)感想に書いたことを繰り返しておきます。

「いつも厄介ごとに巻き込まれる爽香ですが、たまには、そう、これだけシリーズも巻を重ねてきたのですから1冊くらいは、爽香の子供世代(甥とか姪とかでも当然OK)の活躍を取り込む、明るいトーンのストーリーにしてあげてくださいね、赤川さん。
それじゃあ、物語になりにくい? でも赤川次郎の腕なら、十分読める話になると信じています。」









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