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狼と兎のゲーム [日本の作家 我孫子武丸]


狼と兎のゲーム (講談社文庫)

狼と兎のゲーム (講談社文庫)

  • 作者: 我孫子 武丸
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/10/15
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
智樹のクラスメイトの心澄望(こすも)は、警察官の父親から暴力を振るわれて傷が絶えない。夏休みのある日、勤務中の父親のパソコンを壊してしまったと怯える心澄望と智樹がこっそりと家に戻ると、弟の甲斐亜(かいあ)の死体を始末している父親の姿が。慌てて家を飛び出した二人は、迫り来る怪物から逃げ切ることができるか?


我孫子武丸の作品を読むのは久しぶりですね。
「警視庁特捜班ドットジェイピー」 (光文社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)以来で、ほぼ6年ぶりですね。

作者の「あとがき」によると、もともとは「ミステリーランド」用に考えていたプロットらしいです。
うひゃー、これ、こどもに読ませるんですか.....
こどもというのは、大人が思うよりもいろんなことに耐性があり、大人が思うより強いものだ、とは思いますが、それでもこの作品を読ませるのは躊躇しますね。
かわりに、「眠り姫とバンパイア」 (講談社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)をひねり出した、とありますが、いや、本当にこの作品でなくてよかったです。

あらすじからもあきらかで、あとがきにも書かれていますが、「逃げる物語」です。
「狼と兎。
 参加者を狼側のチームと兎側のチームに分けて行う、一種の鬼ごっこだ。単なるかくれんぼや鬼ごっこに飽きた高学年でも、これくらいの遊びだとまだまだ面白く遊べる。
 地域や学校によっては、『探偵と盗人(ぬすびと)』とか『泥棒と警官』とか色んな呼び方で呼ばれているが、智樹の学校では『狼と兎』と呼ばれていた。」(128ページ)
と説明されていますが、兎である心澄望と智樹が、狼である心澄望の父=警察官からどう逃げるか、というストーリーです。

こどもが大人から逃げるという、非常に困難な設定でして、それだけでも十分迫力ある物語になったと思うのですが......
この作品、非常に後味が悪い。
普通に逃げる話だけにしておけばよかったんじゃないかと思いました。
逃げる話のパートだけでも、相当後味の悪い部分があるのですけれど、それに加えてもっともっと後味を悪くするエピソードが加えられています。

物語としては、逃げる物語は典型的ですし、加えられた(後味の悪い)エピソードも、まあ定型どおりのものになっていますので、新規性はないと言ってしまってよい仕上がりなので、後味の悪さが一層気になってしまいました。

口直しに、さらっとした作品を読みたくなりました。


8月24日にこの記事をドラフトのまま間違えてしばらく公開しておりました。
たいへん失礼しました。

タグ:我孫子武丸
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