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2 Moons 2 [タイ・ドラマ]

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今回の作品は、先日感想を書いた「2 Moons」(感想ページはこちら)の続編?。
「2 Moons」の感想にも書いたのですが、キャストが総入れ替えになっています。
この事実は事前に知っていたので、キャスト入れ替えの続編なのかと思ったら、冒頭、「2 Moons」と同じシーン。リメイク?
「2 Moons 2」では「2 Moons」のエンディングよりも、さらにさらに先まで物語は進みます。
結果としてみると、「2 Moons 2」は「2 Moons」のキャストを変えて取り込んで綴りなおして、その先につなげたかたちとなっています。
ややこしい。

日本では、楽天TVで観られるようですね。
楽天TVのホームページからあらすじを。

大学の理学部新入生のワ―ヨーは、入学早々先輩のパーと出くわし小競り合いに。生意気な言葉を浴びせてしまうワーヨーだったが、実はパーは高校時代からワーヨーが片思いをしている相手だった。自分のことに気づいてもらえない寂しさも相まって反抗的な態度をとってしまい、それ以来気持ちとは裏腹に何かとパーにつっかかってしまう。

ある日、大学のムーンを決めるミスターコンテストに、学部の代表として選ばれたワーヨー。工学部に通う親友のミンも同じく学部の代表に選ばれ、2人はコンテストに挑む。前年度のムーンであるパーは、今年の候補生を補佐するために2人の前にたびたび姿を現すようになる。

その頃、ミンはパーと一緒に訪れていた親友のキットにアプローチを始める。ミンが遊び人だと気づいたキットは、必死で遠ざけようとするのだが…。

いつもの MyDramaList によると、2019年6月から9月にかけて Mello Thailand で放映されていたようです。
全12エピソード。
放送局が変わっているのが、大人の事情というやつなのでしょうね。

メインとなるのはやはり中段のお二人。
左側が Pha。
演じているのは Benjamin Brasier。 Ben と呼ばれているようですね。
「2 Moons」の Pha と比べると、柔らかいイメージになっていますね。
で、右側が、Yo。
演じているのは Teerapat Ruangritkul、愛称は Din。
「2 Moons」の Yo の童顔具合いがとても気に入っていたので、交代は個人的に残念に感じたのですが、Pha と Yo の身長差を考えると、こちらの Yo の方が背が低く、役柄的にはふさわしいのかもしれません。

右側の二人が Ming と Kit。腕を回しているのが Ming で顎に手を当てているのが Kit。
Ming を演じているのは Archen Aydin、Joong と呼ばれているようですね。
Kit を演じているのは Kornchid Boonsathitpakdee、愛称はNine 。
Joong は何系のかたなのでしょうか? 非常に目鼻立ちの整った俳優さんで、これがデビュー作のようですが、平常時の表情、茶目っ気を見せる表情、落ち込んだ時の表情それぞれはっきりしていていいですね。
Nine は、「2 Moons」の俳優さんとは方向性が若干違うものの、身構えるような、少しすねたような役柄をうまく演じていると思いました。

左側、肩に手を回しているほうが Forth。
演じているのは Naret Promphaopun、愛称は Pavel。
険のある表情と穏やかな時の落差が素晴らしい。
最後に一番左に位置するのが Beam。
演じているのは Woranart Ratthanaphast、愛称は Dome。
「2 Moons」の段階ではなかった葛藤を表現されていました。

最初のうち、どうしても「2 Moons」と比べてしまってちょっと乗りづらいところがあったのですが、そのうち馴染んできます。
「2 Moons」ではクライマックスだった、新入生コンテストは、「2 Moons 2」では全12エピソード中のEP4までで終わってしまうんですよ。

「2 Moons」では最終的に、Yo と Pha にはハッピーエンディングとなっていまして、「2 Moons 2」では、お互い嫉妬したり、ちょっかいかけてくる奴がでてきたり、という流れ。
必然的に、Ming と Kit、Forth と Beam の比重が上がってきます。

Ming と Kit は、押して押して押しまくる Ming に Kit がほだされていく過程を楽しみます。
EP8 で Kit が Ming を実家に連れていき、兄に関係がばれて話をするのが一種のクライマックスですね。
Forth と Beam は、EP7で急展開。観ていて、かなり驚きました。
ひょんなことから付き合いだす二人、という構図が興味深いです。
ハプニングから始まった恋でも、ちゃんとお互い思い合ってるのが伝わってきます──からかったり、からかわれたり、もあるんですけどね。

物語の後半EP8以降は、Yo にちょっかいをかけて来る男 Park がクローズアップされてきます。
よりによって、Pha の浮気を疑った Yo は、Park と映画を観に行くという悪手を打ちます。
Pha は Yo を取り戻すのですが、Park はいわゆるストーカーなのでしょう、ちょっと常軌を逸した感じ。そして緊迫したラストへ。
なのですが、ここで「2 Moons 2」は終わってしまいます。なんと中途半端な!
ということで、「2 Moons 3」は未視聴ですが、2022年に作られています。
またもやキャスト入れ替えだったようで......

それにしても、相手が男だということにまったく臆さない人物ばかりであっぱれです。
また、「Love by Chance」(感想ページはこちら)に出てきた女優さん(Samantha Melanie Coates)が、コミカルな役どころで盛り上げてくれるのも楽しかったです。

「2 Moons 3」はいつ観ることになるでしょうか......


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月明かりの男 [海外の作家 ヘレン・マクロイ]


月明かりの男 (創元推理文庫)

月明かりの男 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/08/31
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
私用で大学を訪れたフォイル次長警視正は“殺人計画”の書かれた紙を拾う。決行は今夜八時。直後に拳銃の紛失騒ぎが起きたことに不安を覚え、夜に再び大学を訪れると、亡命化学者の教授が死体で発見された。現場から逃げた人物に関する目撃者三名の証言は、容姿はおろか性別も一致せず、謎は深まっていく。精神科医ウィリングが矛盾だらけの事件に取り組む、珠玉の本格ミステリ。


読了本落穂ひろい。
ヘレン・マクロイの「月明かりの男」 (創元推理文庫)
手元の記録によると2018年1月に読んでいます。
巻末のリストによるとウィリング博士もの第2長編のようです。

発表年からすると当たり前のことなのかもしれませんが、大学を舞台にした作品であるにもかからわず、戦争の影が色濃いのが特徴と言えますね。

目撃者の食い違う証言というのは魅力的な謎なのですが、その種明かしはやや拍子抜け。
正直反則技に近いように思われるのですが、現実なんてそんなものかもしれません。

ただ、この作品はこの謎に寄りかかっているわけではなく、これはほんのごく一部。
細かなものがおおいですが、さまざまなアイデアが盛り込まれています。
心理的なことに着目するウィリング博士の捜査方法にはさほど感心はしなかったものの、アイデアがちりばめられた様子に満足できました。
戦争という背景も、上手く謎解きに取り込まれています。

特に個人的に感心したのは、動機です。
ミステリでよく言われる ”意外な動機” ではないのですが、現実的で説得力のある動機ですし、背景がうまく隠されています。

鳥飼否宇による解説がよくて、購入する前に確認したいかたは、解説を読まれるといいと思います。


<蛇足1>
「五月と六月は年間で最も自殺の多い時期なんです。」(88ページ)
おもしろいですね。こういう統計があったのでしょうか?
日本だと、四月が新学期・新年度の始めで、五月病というのがありますが、そうではないアメリカでも五月は憂鬱になる人がおおいのでしょうか?

<蛇足2>
「口蓋は拳銃自殺する者が選ぶ箇所七つのうちのひとつです」(89ページ)
拳銃自殺で選ばれる場所が7ヶ所もあるのですね。7つも思いつきません。

<蛇足3>
「細かい点まで、なにからなにまでが自殺を指し示しているのは奇妙じゃないか? 検死が必要になる現場では不確定要素がつきものだ。にもかかわらず、今回の場合は、”自殺だ!” という標識があちらこちらに立っている。まるで、法医学を勉強中の大学生が、お決まりの手がかりをありったけ詰めこんだ典型的な自殺の例をこしらえようとしたみだいじゃないか。あらかじめ計画されていたのでなければ、物事はこんなふうにきっちりとは進まない。教科書どおりに行くことは、医学と同じく犯罪学でもまれなんだ」
「そういう理論は初めて聞きましたよ!」「自殺の根拠が多すぎるから殺人にちがいない? 法廷でそんな理屈が通用しますか?」(92ページ)
ミステリではよく出くわす議論ですが、わくわくしますね。

<蛇足4>
「銃口を身体のどこかに接触させて発砲した場合、火薬の爆発によって噴出するガスが弾と一緒に強制的に体内へ送り込まれ、ぎざぎざの大きな銃創を作ります。ガスの威力は実にすさまじく、発射の際に銃口がふさがれていると、銃まで粉砕するほどです。つまり、接射で人体に損傷を与えるのは銃弾ではなくガスなので、銃弾はあってもなくてもかまいません。空砲でも実弾と同じ結果になります。銃口と体が接触してさえいれば」(116ページ)
こういう詳しい説明がされる、初めてな気がします(といいながら、記憶力がないだけの可能性も大なのですが)。
物語の後段(171ページあたりと、もう二ヶ所)でこの知識が活用されるのでニヤリとしてしまいました。

<蛇足5>
「しかも、それぞれの関係は殺人の二大動機にからんできます。二大動機とは、フロイト的動機とマルクス的動機、すなわち愛と金です。」(142ページ)
フロイト的動機とマルクス的動機とはおもしろい表現ですね。
広まっていてもよさそうな感じですが、ほかで見かけたことはない気がします(といいながら、ふたたび、記憶力がないだけの可能性も大なのですが)。

<蛇足6>
「ナッソー郡警察の保安官は、これほど疑わしき点のない自殺は初めて見たと言っている。」(171ページ)
突然「疑わしき」と古語が出てきてびっくりしました。「疑わしい」を使わない理由が、なにか言語にあるのでしょうか? それとも単なるタイポ?

<蛇足7>
「大学のガウンらしいね」
ー略ー
「犯人が自分の服に返り血がつかないようあらかじめ着ていたと思われる。ソルトが月光に照らされた逃げていく人物を女性と見まちがえたのは、おそらくこのせいだろう」(170ページ)
さらっと流されているのですが、ガウンを着ていたくらいで、女性と間違えられるでしょうか?
スカートをはいていたとでも思ったのかな?

<蛇足8>
「そういうやつがヨークヴィル大学の教員のなかにいるなどということを、わたしに信じろとおっしゃるのですか?」
ー略ー
「学問は必ずしも感情の成熟にはつながらないのです。」(193ページ)
象牙の塔は、むしろ逆にミステリでは犯罪の温床のような気がしますね(笑)。

<蛇足9>
長くなりすぎるので引用は控えますが、鉤十字について歴史や含意が204~205ページに書かれています。
第二次世界大戦前のナチスドイツの影響が感じられる箇所です。

<蛇足10>
「たいていの殺人者には自分の気に入った殺害方法がある」ベイジルは指摘した。「ボクサーそれぞれノックアウトを決める際の必殺パンチがあるようにね。興奮状態での暴力行為は儀式的になりがちなんだ」(222ページ)
”儀式的” という語の指すところがよく理解できないのですが、それでも前段の指摘はミステリではよくあるものですね。

<蛇足11>
「大酒飲みの血筋がてんかん以外にも夢遊病やサディズムと関連しているのは、おそらくそれが原因だろう。どれも神経系の疾患だ」(254ページ)
なかなか刺激的な発言ですが、お酒って怖いですね。



原題:The Man in the Moonlight
作者:Helen McCloy
刊行:1940年
翻訳:駒月雅子




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老子収集狂事件 [日本の作家 は行]


(P[ふ]3-2)老子収集狂事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

老子収集狂事件 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 藤野 恵美
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/11/05
  • メディア: 文庫

<カバー裏表紙あらすじ>
弱小タウン誌『え~すみか』のバイト編集者・真島が出会った美女書道家の胡蝶先生は、中国の思想家・老子の言葉を引用し、どんな謎をも解き明かす名探偵だった。ある日、寂れた神社の賽銭箱に、三千万円が投げ入れられる珍事が起こる。折りしも、街では猫の連続行方不明事件も起きているようで……。
ハルさん』の著者が贈るほのぼのユーモアミステリー、すべての謎が明かされる涙と笑いの完結篇!


読了本落穂拾いです。
藤野恵美「老子収集狂事件」 (ポプラ文庫ピュアフル)
「猫入りチョコレート事件」 (ポプラ文庫ピュアフル)(感想ページはこちら)の続編にして完結編。
手元の記録によると2017年10月に読んでいます。「猫入りチョコレート事件」からそれほど間を開けずに読んだのですね、珍しい。

今回もタイトルが「老子収集狂事件」と、やってくれています。

収録作品は
「見えないスクリーン」
  ……ジョン・スラデック「見えないグリーン」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「金曜日ナビは故障した」
  ……ハリイ・ケメルマン「金曜日ラビは寝坊した」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「五匹の仔猫」
 ……アガサ・クリスティー「五匹の子豚」 (ハヤカワ・クリスティー文庫)
「そして江角市の鐘が鳴る」
 ……キャサリン・エアード「そして死の鐘が鳴る」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「老子収集狂事件」
 ……ディクスン・カー「帽子収集狂事件」 (創元推理文庫)
の5つ。
それぞれ内容が元の作品にちなんでいるわけではないですが、こういうのは楽しい。

前作「猫入りチョコレート事件」のあとがきで作者も「少しでも朗らかな気持ちになり、くすりと笑っていただけたなら幸いです」と書いておられた通り、肩の凝らない軽ミステリを目指した作品で、それはその通りなのですが、探偵役である(はずの)胡蝶先生の謎が明らかになっていくにつれ、現実的なというか俗世間的なというか、世知辛い(?) 内容も絡んできます。

老子の使い方はかなり強引ですが、猫が登場するので許す!(←偉そうに、何様?)
大器晩成ならぬ大器免成というのは気に入りました。いい言葉。

推理に使う老子は強引で無理筋でも、物語の着地に用いられるところはしっくりきました。
軽ミステリとして楽しい連作です。



タグ:藤野恵美
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ウェディングケーキは待っている [海外の作家 ジョアン・フルーク]


ウェディングケーキは待っている (ヴィレッジブックス)

ウェディングケーキは待っている (ヴィレッジブックス)

  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2018/11/30
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ニューヨークで開催されるデザートシェフ・コンテストに出場することになったハンナ。ロスとの結婚式をレイク・エデンでささやかに挙げ、ハネムーンをかねてニューヨークに向かう予定だったが、急遽コンテストの日程が早まり、式は後回しになってしまう。あわただしいままコンテストが始まり、実力派揃いのなか好調な滑り出しを見せていたハンナだったが、またまた彼女の死体レーダーが発動して……。


2022年12月に読んだ4冊目の本です。
ジョアン・フルークのお菓子探偵ハンナシリーズ第19弾。
いよいよハンナも結婚するんですねぇ......
結婚相手が、マイクでもノーマンでもないというのが、なかなか。
二人にどう告げるべきかというのが通常ですと難問で、ハンナも悩んだりするのですが、このシリーズのこと、あっさり。

デザートシェフ・コンテストというのももう一つのトピックスですが、これがまた素晴らしくご都合主義な展開で笑ってしまいました。
ネタバレだろうと気にしませんよ~。ハンナが優勝しますよ~(笑)。

ミステリ的な出来映えは、まったくよくないですね(笑)。
今回はなかなか犯人の見当がつけづらいな、と思っていたら、最後になって隠されていた事実を明かすという次第でした。

まあ、結婚式のぎりぎりまでドタバタする、ということで楽しめましたし、ハンナが幸せならそれでよし、ということにしましょう。
しかし、なんか不穏な感じがするんですよね、ロス。


<蛇足1>
「放送していたのはハンナが見たことのないシェフの番組で、彼はエビの炒め物(シュリンプ・スキャンピ)を作っていた。」(107ページ)
シュリンプもスキャンピもエビです。
シュリンプ・スキャンピは、数種類のエビを使った料理ですね、きっと。「エビの炒め物」とするしかなかったのでしょうね。訳者の苦労がしのばれます。

<蛇足2>
「ハンナは胃のなかで蝶が飛び立つのを感じた。」(143ページ)
「胃のなかで蝶が暴れまわり、末端神経はそのあおりをくらって、ハンナは険しい峡谷の淵を歩きながら、今にも谷底に落ちてしまいそうな気分だった。」(179ページ)
コンテストで緊張してナーバスになっている様子です。
胃のなかに蝶がいるという表現がおもしろいです。

<蛇足3>
「やるって何を?」ミシェルがサリーにきいた。
「調査よ」ハンナが妹に答えた。「身内が巻きこまれたらわたしが手を出さずにいられないのを、サリーは知ってるの。」
「身内がっていうのは余計でしょ」サリーはハンナに言った。「手を出さずにはいられないってだけで充分よ。」(262ページ)
サリー、さすがです。よくご存知で(笑)。

<蛇足4>
「うちの給仕助手(バスボーイ)全員が冷蔵にはいるのを嫌がってるの。」(262ページ)
バスボーイ、知りませんでした。レストランだとウェイターの格下の役どころということですね。

<蛇足5>
「ちょっと待って。どうしてそんなにすぐに気が変わったの? 一、二秒まえは関節痛のカタツムリ並みのスピードでクレアの店に向かってたのに、今は早くなかにはいりたくてしかたないみたい」(292ページ)
ミシェルがハンナにいうセリフですが、カタツムリに関節があったのか...(笑)




原題:Wedding Cake Murder
著者:Joanne Fluke
刊行:2016年
訳者:上條ひろみ





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死体にもカバーを [海外の作家 あ行]


死体にもカバーを (創元推理文庫)

死体にもカバーを (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/12/11
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
心機一転、〈ページ・ターナーズ〉書店で働き始めたワケありのヘレン。困ったお客と、もっと困った最低オーナーにもめげず、日々奮闘する彼女に、またも災難が降りかかる。アパートでシロアリが大発生したかと思えば、お次はくだんの最低オーナーが殺される始末。おまけに容疑者として逮捕されたのは意外な人物で……!? 南フロリダで職を転々、必死に働くヒロインの活躍、第二弾。


2022年12月に読んだ3冊目の本です。
「死ぬまでお買物」 (創元推理文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾。

主人公ヘレンの設定に特色のあるシリーズです。
自分の居所を見つけられないようにしないといけない状況なので、活動にいろいろ制約があり、就ける職業も限られる。
職業を転々とするという趣向になっていて、今回は本屋の店員。
支えてくれるのは住んでいる<ザ・コロナード・トロピック・アパートメント>の面々。

事件は、その書店のオーナーが殺される、というもので、こいつがなんとも嫌なやつというのがポイントですね。
殺される理由なんかいくらでもありそうな人物という設定なのですが、こういう場合は犯人になりそうな怪しげな容疑者がわんさかいて、捜査は右往左往というのが定番の展開かと思うところ、実際に検討される容疑者は絞られているのがポイントですね。
ミステリとしての精度はたいしたことないのですが、主人公たちの日常の(といってもわれわれの日常とは一味も二味も違いますが)てんやわんやのさなかにチョロチョロと謎解きに取り組むゆるさを楽しんでしまいました。
主人公たちのキャラクターがそうさせてくれるのでしょう。

シリーズはこのあと
「おかけになった犯行は」 (創元推理文庫)
「結婚は殺人の現場」 (創元推理文庫)
と第4作まで翻訳がされたのですが、いずれももう品切・絶版状態です。
復刊そして続刊を期待したいです。


<蛇足1>
「ヘレンがようやくレジを決算したのは二時だった。」(196ページ)
レジで、一日の売上と手元の現金が合うかどうかを突合する作業(いわゆる「締める」という作業ですね)のことをいうのだと思うのですが、レジを「決算する」というのでしょうか?

<蛇足2>
「昼間のきれいな蝶は消えてしまった。いまは皮の翼を持つ生き物が腹の中ではばたき、不安をかきたてている。」(206ページ)
皮の翼を持つ生き物って何でしょう? わかりません。
皮翼目という分類になる生き物がいるみたいなので、それでしょうか? こういう言い回しが英語にはあるのかな?



原題:Murder Between the Covers
作者:Elaine Viets
刊行:2004年
訳者:中村有希


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怪物の木こり [日本の作家 か行]



<カバー裏あらすじ>
良心の呵責を覚えることなく、自分にとって邪魔な者たちを日常的に何人も殺してきたサイコパスの辣腕弁護士・二宮彰。ある日、彼が仕事を終えてマンションへ帰ってくると、突如「怪物マスク」を被った男に襲撃され、斧で頭を割られかけた。九死に一生を得た二宮は、男を捜し出して復讐することを誓う。一方そのころ、頭部を開いて脳味噌を持ち去る連続猟奇殺人が世間を賑わしていた──。第17回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。


2022年12月に読んだ2冊目の本です。
第17回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。

うーーん、これはちょっと厳しい感想しか浮かびませんね。
冒頭2000年の事件として十五人の子供を殺害し庭に埋め、四人を監禁していた静岡児童連続誘拐殺人事件が描かれ、その後、「怪物マスク」を被った人物に襲われるサイコパスで連続殺人鬼の二宮の視点のストーリーと、脳を持ち去る連続猟奇殺人捜査をしている警察戸城嵐子の視点のストーリーがつづられていくのですが、いくらなんでも読者のレベルを低く見積もりすぎだと思います。

二宮視点のパートから連続猟奇殺人は二宮の仕業でないことがわかり、「怪物マスク」が連続猟奇殺人犯だろうな、というのは極めて簡単な推測。
二宮が治療を受ける際に、脳にチップが埋め込まれていたことが判明。
となると、連続猟奇殺人犯の狙いは、脳チップ。すなわち脳チップを埋め込まれた人物を殺して回っている。
しかし、脳チップを埋め込まれた人物が、そこらに多数いるはずはない。
で、想起されるのは冒頭に描かれる子供を対象とした過去の事件。とすると連続猟奇殺人の被害者は、過去監禁されていた子供たちなのだろうな、と。

とこれだけで、プロットの大半が尽くされてしまいます。
これは双方のパートを見ているからこそ、であって、たとえば二宮は連続猟奇殺人のことを詳しくは知りませんし、逆に連続猟奇殺人を捜査する警察に脳チップのことが判明するのはかなり先ですから、両者を結び付けて考えられるのは、読者の特権です。
しかし、物語は両者をなかなか結び付けないまま進んでいくので、非常にまどろっこしい。
事件が矢継ぎ早と起こっているというのに、ちっともスピーディには感じない。

ちょっと空想科学の領域に突っ込んでいったようなアイデア自体は悪くないのに(決して良いとも言えませんが)、もったいない気がしました。
読者のレベルを高く見積もってしまうと臆病になって大胆な伏線がはりにくい、一方でこの作品のように読者のレベルを低く見積もってしまうと読者が退屈を感じてしまう。
ミステリって、難しいですね。


<蛇足>
傷口をステープラーという医療用のホッチキスで留めただけで、手術もせずに済んでいる。(31ページ)
ホッチキスは、英語では Stapler (ステープラー)です。
医療用のホッチキスに、一般名詞を固有名詞化し商品化しているものがあるのでしょうか?





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2 Moons [タイ・ドラマ]

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久しぶりにタイ・ドラマの感想を。観たものの感想を書いてないもの、いっぱいあるんですよね(笑)。
今回の作品は、「2 Moons」。
いつもの MyDramaList によると、
2017年5月から7月にかけて GMM One で放映されていたようです。
全12エピソード。
上で引用したものは、ドラマそのもののではなく、何かのイベントのポスターではないかと思います。


メインとなるのは中段のお二人。
右側が、Wayo (劇中では、短くYo [ヨー]と呼ばれたりしています)。大学の理学部新入生。
演じているのは Suradej Pinnirat、愛称は Bas。ご覧の通り、かなりの童顔ですね。
臆病で内気なくせに、妙に大胆なところもある役どころにピッタリかと思いました。
左側が、お相手となる Phana (劇中では、短くPha [パー]と呼ばれたりしています)。医学部2年生。
演じているのは Itthipat Thanit、愛称は God 。整った顔立ちで、どことなく冷たい印象を与えるところが役どころにピッタリ。ぶっきらぼうな感じもいいですね。

Yo は高校のときから Pha のことが好きで、でも高校のときにはほとんど近づけなくて、なんとかしたいと思って Pha と同じ大学を目指して首尾よく合格。入学するところから物語がスタートします。

学生寮(だと思われます)に入る日に、Yo は Pha と偶然出くわすのですが、それが最悪のスタート。からかわれて反発してしまい、ちょっと険悪に。
そしてその後も、Pha に目を付けられたのか、ことあるごとに角を突き合わせることに。
定番中の定番の展開ともいえますが、 Yo がつい反射でつっかかってしまい、あとで悶絶するのがおもしろいです。

Yo の高校からの同級の友人で Yo を支える存在が、上段左の Ming。gの音は聞き取れませんので、ミン、ですね。
モテモテのプレイボーイ、スポーツもよくできるという設定。工学部一年生。
演じているのは Kimmon Warodom Khemmonta。愛称として Kim と呼ばれているようです。
Yo と Ming のやり取りもとても楽しいです。
そのお相手が、上段右の Kit。いじってくる Pha と違い、Yo を支えてくれるよき先輩ですね。Pha と同じく医学部2年生。
演じているのは Panuwat Kerdthongtavee、愛称は Copter 。
高校時代ガールフレンドをとっかえひっかえしていた、という Ming ですが、Yo を介して接しているうちに、 Kit が気になってきて......猛アタックするところが見どころでしょうか。
こちらは最初拒絶していた Kit の変化がポイントですね。

最後の下段の二人は2年生コンビです。
左が Forth。工学部の2年生。
最初 Yo を狙っていましたね。Pha と恋の鞘当てを演じる役どころ。
演じてるのは、Darvid Kreepolrerk、愛称は Tae。
右が Beam。医学部の2年生。Pha、Kit と仲良し。3人はずっと以前からの長ーい友だちという設定です。このドラマではあまり目立ったことはしていないのですが、周りを見守っているような役で、要所要所でしっかり支えていきます。
この二人、カップルになる想定のようですが、ドラマの中ではカップルにはなりません。というより、ほぼ関係がない(笑)。

Yo と Pha の関係性を軸に物語は進んでいきます。
そのバックボーンを支えるのが、新入生コンテスト。女性の Star と男性の Moon を選ぶミスター&ミスコンテストです。
これなかなか準備が大変そうな一大行事で、エピソード1からこの話題がスタートし、コンテストはエピソード11 なので、ほぼ全編がコンテストがらみ。
でも考えたら、新入生コンテストなわけで、そんなにじっくり何ヶ月もかけてやるようなものでもないでしょう。このドラマ、おもうより短い時間軸なんですね。
Yo と Ming はそれぞれの学部の代表に選ばれ、コンテストを目指します。
Pha は昨年の Moon 受賞者。
コンテストの結果は、エチケットとしてここには書きませんが、タイトルが 2 Moons と複数になっているのが暗示的ですよね。

一番の山場はやはりコンテストそのもの、ではあるのですが、印象的なシーンはあちこちに用意してあります。
個人的には、EP5から7にかけての、コンテスト前の小旅行(ポスターを撮るための撮影旅行という建付けのようです)。
Ming と Kit のやりとりも印象深いです。特に、だいたいおちゃらけている Ming が深刻な顔を見せるのがポイント。
でもそれよりも増して、Yo と Pha! Yo を Forth が狙っていることをキーに、大きく Yo と Pha の関係が変化する大切なエピソードです。
Yo 演じる Bas は童顔だけあって、笑顔が弾けるようでとてもよいのですが、意外と(?)憂い顔も得意なようで、困ったり悩んだりしている表情がすばらしい。EP7の感情を爆発させるシーンはドラマ中お気に入りのシーンとなりました。

コンテストのシーンでは、やはり Yo がパフォーマンスを見せるシーンですね。”Ordinary Man”(ふつうの男)という歌を披露するのですが、歌と共に演じるみなさんの表情がよかったです。

最後に、看過できない問題点(?)を。
このドラマ、眼鏡の有無をプロットのキーに据えています。
眼鏡をはずしたら別人、とはよく言われることですが、これは見違える、とか見直す、とかいう趣旨であって、文字通り別人と間違えるという意味ではないはずですよね。
ところがこのドラマは、眼鏡をする、しないでその人物と認識できない、ということが重要になってきます。そんなバカな(笑)。
ましてやこのドラマの場合、名前まで判明しているのに、眼鏡をしていないからその人物とは思わなかった、なんて設定になっているのです。しっかりしてくれよ、Pha。
それとは話がそれますが、それぞれの子役が用意されているのですが、見事なまでに似ていない子役が用意されていて笑えました。
こういう点も含めて、楽しんでいただけるもの、と思います。

実はこのドラマ未完でして「2 Moons 2」というのが造られているのですが、おそらくは大人の事情で、この「2 Moon」に出演している俳優さんたちは総入れ替えになってしまっています。
このメンバーでの続編も期待したいのですが......






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〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件 [日本の作家 は行]


○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

○○○○○○○○殺人事件 (講談社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
アウトドアが趣味の公務員・沖らは、仮面の男・黒沼が所有する孤島での、夏休み恒例のオフ会へ。赤毛の女子高生が初参加するなか、孤島に着いた翌日、メンバーの二人が失踪、続いて殺人事件が。さらには意図不明の密室が連続し……。果たして犯人は? そしてこの作品のタイトルとは? 第50回メフィスト賞受賞作


読了本落穂ひろいです。
手元の記録によると2018年1月に読んでいます。
早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」 (講談社文庫)

第50回メフィスト賞受賞作で、「2015本格ミステリベスト10」第6位。
文庫の帯に、「ミステリが読みたい! 2015年版」(早川書房)第1位! と書かれていて、いつもこの早川のベストはこのブログで使っていないのですが一位であれば、と思って確認したところ第7位。
あれっと思って帯をもう一度見たら、(国内篇新人部門)と小さく書かれていました。

ミステリを読んでずいぶん長くなりますが、一番の衝撃作、です。
というより、撃作、というべきかもしれませんが。読者を選ぶ作品ですね。嫌いな方はとことん嫌いでしょう。
早坂吝らしくエロ全開で、軽薄に軽快につづられていきますが、ミステリの骨格はしっかりしっかり忍ばされています。

タイトルが非常に特徴的ですね。
文庫本の表紙は、〇の数がわかりやすくていい。〇は八つ。
文庫本の奥付には「まるまるまるまるまるまるまるまるさつじんじけん」とルビが振られています。
冒頭「読者への挑戦状」が掲げられていて、タイトル当てを挑まれています。〇〇の部分はことわざだと。
(英語だとよいのですが、日本語だと漢字をひらく、ひらかないで文字数が変わってしまうのが気になりますが、これは余計な話)

このタイトル当てという趣向に加えて、ミステリ的側面から言うと、この「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」を特徴づけるポイントがあと2つあります。
厳密にはネタバレになってしまいますが、
特徴2は、孤島が舞台であることの必然性、
特徴3は、物理的な(と呼んでおきます)トリック、
です。
個人的に、特徴2でギョッとし、特徴3で爆笑してしまいました。

これらを成立させるのに、南国モードと通常モードで人格が切り替わる主人公(視点人物)というのがとても重要なポイントとなっています。
南国モードの一人称が俺、通常モードの一人称が僕、という親切設計でわかりやすく、親しみやすい。
入れ替わる113ページとか楽しいですよ。
探偵役である上木らいちは本作が初登場作ですが、初登場シーンからインパクト大。
島へと向かう船の中からすでにエロ全開。さすがです。

特徴2は、あっぱれと言いたくなるような首尾で、きめ細かに手がかり(?) が埋め込まれていて、さらっと読み飛ばしたような箇所が、そういう意味だったのか、とにんまりできます。
今回この感想を書こうとしてパラパラと見返していたのですが、結局ほとんど通読してしまい、あちこちに紛れ込んでいる細かな表現をとても楽しんでしまいました。
この特徴だと、クローズドサークルが成立するのが必然であることに深く感心しました。

特徴2が読者に明らかになった段階で、読者がそれまで想定していた謎解きが一旦ご破算になってしまうところがすごい。
仮面を常につけているという非常に怪しげな特徴を持った登場人物がいるのですが、その段階で読者は「ああ、なるほどねー」とある種のトリックを想定して読み進めると思うんですね。
でも、特徴2が明かされた途端、その想定が吹っ飛ばされてしまう。
この衝撃にはすっかりやられてしまいました。
特徴2のせいで、それまで組み立てていた推理・推測をやり直さなければならない。

その衝撃が冷めやらぬうちに、特徴3が読者に襲い掛かります。
特徴3は、特徴2が明らかになるまではまったく想定外の事象に関連していまして、まさかね。
ただ、特徴3は、個人的には無理があると思います。これ、すぐばれますよ、きっと。
ここで使われる手法には詳しくはないのですが、通常想定される手法とは違う手法が適用されたのだ、と説明されているものの、それでもほかの人が気づかないということはありえないと思います。
見ないようにするのが普通だとはいえ、どうしたって見えてしまうものですし、見えてしまえば違いは明らかだと思うんですよね。ここで使われている手法ではカバーしきれない違いがそもそもある気がします。本当に千差万別ですよ。
でもね、この発想、好きです。爆笑。
犯人のセリフにらいちが突っ込むところ(265ページ)とか、もう最高。
こんなバカバカしいアイデア(褒め言葉です)を作品に仕立て上げるなんて、早坂吝、すごい!!

特徴2から特徴3にいたる衝撃の連打でもたらされる(読者の)感情の起伏は、なかなか得られない読書体験でした。

エロの衣を纏っていなければ本書の成立は難しかったでしょうね。性行為がらみのエロだけではなく、中学生・高校生男子レベルのエロもあります(お嫌な方もいらっしゃるでしょうから、下の<蛇足1>に書いておくことにします)
さらに探偵が犯人を突き止める過程でも、エロは重要なポイントとなっています。
その後の作品も読み進めているところですが、最強のエロ・ミス作家かもしれません(笑)。


<蛇足1>
「俺は顔の傷を見ないよう、実は少しだけ見てみたいという気持ちもあるが、失礼なので絶対に見てしまわないよう、じっと俯いていた。そんな俺の目に皮を被ったペニスが映る。俺のムスコも仮面を着けているのだ。包茎に特段コンプレックスはないつもりだったが、重紀のズル剥けと並ぶと、一流民間企業に就職した大学の同期の手取りを聞いた時のような劣等感が芽生えてくる。右隣に座っている浅川の、同じく皮被りを盗み見て、こんなもんでいいんだと自分に言い聞かせる。」(134ページ)
包茎を気にするシーンって、ミステリではなかなかお目にかかれませんね。
西村京太郎の青春ミステリ「おれたちはブルースしか歌わない」 (講談社文庫)にちらっと出てきたような記憶がありますが、それくらいでしょうか。
しかし、この「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」のすごいところは、こういう部分も謎解きに奉仕している(?)点ですね。

<蛇足2>
「風呂から出て、食堂でメタリックに冷えたコーラを飲んでいると、」(135ページ)
メタリックに冷えた、という比喩表現がいいですね。すごく伝わります。

<蛇足3>
「そこまで先読みしていたとは……。まさかこいつクローズドサークル慣れしている!?
 そっち方面でも経験豊富なのかもしれない彼女は続ける。」(251ページ)
らいちに対する主人公沖健太郎のコメントですが、クローズドサークル慣れ(笑)。
そして「そっち方面」。もちろん「こっち方面」はエロですね。



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C.M.B.森羅博物館の事件目録(36) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(36) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(36) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/17
  • メディア: コミック



この第36巻は、
「山の医師」
「ルバイヤートの物語」
「かすみ荘事件」
の3話収録。

「山の医師」はチベット医の師匠が遺した薬箱の行方を捜す物語。チベット仏教の教えに則った謎解きが楽しかったですね。

「ルバイヤートの物語」は舞台がイスラム世界。森羅たちにいる現代の謎解きと、11世紀のサマルカンドの、ハサン・サッバーフとオマル・ハイヤームの物語が交互に綴られます。
マンガでなければ納得できなそうな殺人トリックが出てきて楽しい(といいながら、実は、マンガで図解されてもあまり納得できなかったのですが)。
ルバイヤートの成立過程って、ほんとにこんな感じだったのでしょうか?

「かすみ荘事件」は、新宿近く(だと思われます)の古い土地・建物を舞台に事件が発生します。
「捕まえたもん勝ち! 七夕菊乃の捜査報告書」 (講談社文庫)に出てくる刑事・七夕菊乃が再登場します。
おもしろい思いつきをベースにしたトリックが秀逸なのですが、絶滅したと考えられていたのち再発見されたもののごく珍しいヤマトセンブリを手がかりとするのは少々無理があるような気がしました。
とはいえ、いいトリックだと思います。


タグ:加藤元浩 CMB
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Q.E.D. iff -証明終了-(8) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(8) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(8) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/17
  • メディア: コミック


<カバー裏あらすじ>
「海辺の目撃者」
瀬戸内の島に住む男子高校生が、フェリーの上から、廃工場での殺人を目撃。釣船店を切り盛りする女性が疑われるが、彼女が犯人とは思えない青年は、記憶を辿り……?
「白いカラス」
資産家の遺産分配に立ち会うことになった燈馬と可奈。弁護士による遺産隠しを疑う遺族たちに協力することになるが、途中で可奈とケンカした燈馬が帰ってしまい!?


Q.E.D. iff のシリーズ第8巻。

「海辺の目撃者」は、男子高校生の目撃談から出発しているのですが、この決着はありえないと思います。混乱する記憶、といいますが、そもそも物語の出発点として成立していないように思います。
すくなくとも男子高校生の視点とは違う地点から物語を描いていかないと、単なるインチキだと感じてしまいます。

「白いカラス」は遺産相続をめぐる遺族たちの醜い姿にうんざりできますが、ストーリーの意外性は十分かと思います。
それに絡めて、タイトルにも関連するのですが、燈馬と可奈の仲違いが描かれるのですが、こちらの話も少々窮屈に作りすぎていて、素直には受け止められませんでした。

ということで、この「Q.E.D.iff -証明終了-(8)」 (講談社コミックス月刊マガジン)は個人的には厳しい感想となってしまいました。残念。


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