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Q.E.D. iff -証明終了-(14) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(14) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(14) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「1億円と旅する男」
徘徊しているところを保護された謎の老人。彼は1億円を所持していた! 記憶喪失の男が唯一覚えているのは、病床で聞いたオルゴールの音と、妻の遺した「ある言葉」だけ……。はたして彼の正体は!? 「メモリ」
事故で無くなった、燈馬の研究仲間・黄成(ファンソン)。彼が遺した研究成果はサーバーセキュリティを揺るがすものだった! それを知った各国はデータを奪取すべく暗躍。燈馬はデータを守り抜くことができるのか


Q.E.D. iff のシリーズ第14巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(14)」 (講談社コミックス月刊マガジン)
奥付をみると2019年10月です。

「1億円と旅する男」は、非常によく企まれた作品で、記憶喪失の男の正体の着眼点はおもしろく、1億円のエピソードにも感心しました。犯人の狙いには驚愕しますし(帯にも「ラスト15P(ページ) 貴方は震撼する!!」とあるのは看板に偽りなしです)、底流となっている燈馬の思いは、なかなかシリーズでは出してこなかった部分でとてもいい感じです。
途中、可奈がこれまで見せてこなかったような表情を見せるのもとても印象的です。
なので、傑作! と言い切りたいところなのですが、アイデアが壮観で壮絶な分無理があり、さすがにこの記憶喪失の状況は起こらないのではないかと思えてならないのが惜しい。
ちなみに、七夕菊乃がちらっと出てきます。

「メモリ」は、量子暗号に資する研究データの入った USBメモリの争奪戦で、米ソ中が狙うというのだから大事です。久しぶりに、内閣情報調査室の梨田俊二も登場します。
にしては、遊園地を舞台にした幼稚でレベルが低く、マンガみたい(って、これマンガなんですが)。
蛇足ですが USBメモリに関するトリック(?) はうまくいかない気がします。少なくとも相手が不注意でないと思ったような効果は得られないように思います。
とはいえ、狙いは面白いですし、ここでも燈馬の思いが垣間見れてよかったです。
余談ですが、三角関数の加法定理の証明が懐かしかったですね。


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C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) [コミック 加藤元浩]



C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/10/17
  • メディア: コミック

<帯あらすじ>
ジャガーの棲む南米の大湿地帯・パンタナールを訪れていた森羅と立樹。そんな矢先、友人の夫が営む大農場の西にある森で、2つの殺人事件が‥!
だが、それらは全てシャーマンの老婆によって予言されており──!?
《「ジャガーの森(前・後編)」他2編を収録》


シリーズ第42巻です。「C.M.B.森羅博物館の事件目録(42) 」(講談社コミックス月刊マガジン)

この第42巻は、
「月下美人」
「ジャガーの森」
「死体がない!」
の3話収録。

「月下美人」は、売れない、役者志望の青年が主人公。
不幸のポイントが貯まるといずれ還元されて幸福が訪れるという考え方が面白いですね。
小さなトンネルで消えた恋人(候補)の謎解き自体は噴飯ものですが(さすがにこの解決はないでしょう)、主人公の性格とは調和していると思いました。
蛇足ですが、作中バイトで配達中の主人公に、「そうやって空気が読めないからネクタイ締められないんだよ」というサラリーマン風の男が出てくるのですが、なんか典型的すぎて笑ってしまいました。

「ジャガーの森」はパンタナールが舞台。
パンタナール、いいですよ。でも行った際にはジャガーには会えませんでしたが。
さておき、そんな素敵な舞台で起こるのは、広大な農園の廻りで暗躍する麻薬組織や密猟者の影、相次ぐ殺人と物騒な物語です。
真相は納得感のあるもの──というか、わりと見え見えで──ですが、周囲の人は気づかないものか疑問です。少なくともシャーマンは気づいていたわけですから。
ジャガーのエピソードは超自然ですが、パンタナールやアマゾンといった地域ではあってもおかしくないような、あってほしいような思いがします。

「死体がない!」は経済学者&人材派遣会社社長の邸宅から凶器を持った血塗れの男が出てくるという派手な出だし。
邸宅には血だまりはあるものの事件らしきものの形跡はそれだけで死体などはなく、捕まった男も森羅を呼べというだけ。
非常によく企まれた事件になっていて面白かったのですが(目と口が線で描かれた森羅の顔がいいですね)、地下室の部分は森羅の説明通りとはならないように思います──とても楽しいアイデアなのですが。
ところで、経済学者&人材派遣会社社長の梅中大蔵って、竹中平蔵をどうしても連想させますね。わざとそうしているのだとは思いますが......


タグ:加藤元浩 CMB
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憂国のモリアーティ 12 [コミック 三好輝]


憂国のモリアーティ 12 (ジャンプコミックス)

憂国のモリアーティ 12 (ジャンプコミックス)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/07/03
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
残酷なる脅迫王は人々の破滅を嘲笑う──
脅迫王・ミルヴァートンこそが、メアリーの ”秘密” を握りジョンとの結婚を破談させようと目論む張本人だった。自らの愉悦のためだけに、罪なき人々を破滅させるその卑劣な手口からジョンたちを救うべく、シャーロックはミルヴァートンとの直接対決を決意する!!
ロンドンを掌握する強大な悪意に、裁きは下るのか…


シリーズ第12巻。憂国のモリアーティ 12 (ジャンプコミックス)
表紙は......これまた誰だ レストレード警部でしょうか?

#44、45、46、47 犯人は二人 第一幕、第二幕、第三幕、第四幕(Two Criminals Act 1, Act 2, Act 3, Act 4)
を収録。

第11巻の終わりで、メアリーを脅迫しているのはミルヴァートンだとホームズが言い切って、その後の展開です。
想定通り、この第12巻はミルヴァートンとの対決です。

メアリを救うためミルヴァートンの屋敷に侵入しようとするホームズとワトソン、というのも面白いですし、同時にミルヴァートンのことを邪魔だと思っているモリアーティたちも動き出す気配を見せていてワクワク。

ホームズの潜入の手段は、ホームズともあろうものが、と言いたくなるほど凡庸ですが、ワトソンが男としての魅力?を発揮せざるを得なくなるという状況が楽しいので、よしとしましょう。ワトソンって、肉体派だったのですね笑

いよいよ本書のクライマックスは、ミルヴァートンの屋敷での対決シーンなのですが、ここがとても面白い。
こういう展開に持ち込むとはまったく予想していませんでした。
急展開といえば急展開ですが、物語の加速を予感させて楽しいです。

ところで、気になった点をいくつか。
ぼかして書きますが、ネタバレ気味かもしれませんので、気になる方は以下を飛ばしてください。

まずミルヴァートンに引導を渡したのは誰か?
作中ではセリフと硝煙でホームズとしていますが、そうとは限らないのでは?と思っています。
ドンデン返しに使えそう笑

それとホームズがどういう探偵かということはこのシリーズでは詳らかになっていませんが、ここまでのコミックを見る限りにおいては、モリアーティと相通じるところがある、とホームズ自身が感じているように見受けられます。
犯罪(そして犯罪者)を憎むというのは間違いないとしても、この第12巻で示されるように例外もあるわけですし(家宅侵入は置いておくとしても、みずから殺人に手を染めています)、これまでモリアーティのやってきたこととホームズは必ずしも対立するものではない。
優れたもの同士の対抗心というのも、ホームズの性格からしたら似合わない感情のような気がします。
このあたりの整理はしてほしい気がします。

ところで、ここが人気のある由縁なのかもしれませんが、中盤、屋根の上でホームズとワトソンがサンドイッチを食べるシーンは個人的には好きではありません。
ホームズがワトソンに対して「俺はずっとお前の事認めてるつもりだぜ」と口にするとか、友情がどうこうと述べてみるとか、ここまであからさまにいうのはある意味下品だと思うのですが。まあ、賛同者は少ないでしょうね。
物語では、こういうことはセリフとして述べるのではなく、各人の行動をもって示すべきだという古い人間なので。


さておき、とても面白くなってきました。

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謎解きはディナーのあとで2 [日本の作家 東川篤哉]


謎解きはディナーのあとで (2) (小学館文庫)

謎解きはディナーのあとで (2) (小学館文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/11/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
 立川駅近くの雑居ビルで殺された三十代の女性。七年間交際していた男は最近、重役の娘と付き合い始め、被害者に別れを切り出したようだ。しかし、唯一最大の容疑者であるその元恋人には完璧なアリバイが。困った麗子は影山に〈アリバイ崩し〉を要求する。
 その後も、湯船に浸かって全裸で死んでいた女性の部屋から帽子のコレクションが消える、雪のクリスマス・イブに密室殺人が起きる、黒髪をバッサリ切られた死体が発見されるなど、怪事件が続発!
 令嬢刑事と毒舌執事コンビのユーモアミステリ第二弾。書き下ろしショートショート『忠犬バトラーの推理?』収録。


読了本落穂ひろいで、シリーズで感想が抜けていた「謎解きはディナーのあとで (2) 」(小学館文庫)。東川篤哉の大人気シリーズです。
第1巻と第3巻の感想は既に書いています。
「謎解きはディナーのあとで」 (小学館文庫)(感想ページはこちら
「謎解きはディナーのあとで 3」 (小学館文庫)(感想ページはこちら

この「謎解きはディナーのあとで (2) 」は、
「アリバイをご所望でございますか」
「殺しの際は帽子をお忘れなく」
「殺意のパーティにようこそ」
「聖なる夜に密室はいかが」
「髪は殺人犯の命でございます」
「完全な密室などございません」
の6話と、ボーナストラックとして
「忠犬バトラーの推理?」
が収録されています。

さて、このシリーズは探偵役である執事の影山のキャラクターがポイントで、主人であるはずのお嬢様、麗子に対する影山の暴言(?) が売りです。
今回も決め台詞を各短編から抜き出してみます。

「失礼ながら、お嬢様は相変わらずアホでいらっしゃいますね。──いい意味で」(「アリバイをご所望でございますか」)
「お言葉を返すようで恐縮ですが、お嬢様のほうこそ、どこに目ン玉お付けになっていらっしゃるのでございますか」(「殺意のパーティにようこそ」 )
「大変失礼ながら、お嬢様の単純さは、まさに幼稚園児レベルかと思われます」(「聖なる夜に密室はいかが」)
「これだけの情報を得ておきながらまるで真相にたどり着けないとは、お嬢様は頭がお悪いのではございませんか?」(「髪は殺人犯の命でございます」)
「確かに、お嬢様の凡庸な閃きなど、誰かに話すほどのものではございません。聞くだけ時間の無駄でございました」(「完全な密室などございません」)
「失礼ながら、お嬢様、そのような馬鹿げた謎解きは、犬の晩御飯のあとにでもお聞かせくださいませ」(「忠犬バトラーの推理?」)
なお「殺しの際は帽子をお忘れなく」は、麗子以外も謎解きに参加する関係で、麗子に対していうわけではないということで影山のセリフに変化があり、そこも見どころです(笑)。

敬語がいい加減なことも(決め台詞以外でも「お嬢様、三百円、お持ちでございますか──」(44ページ)などでたらめな日本語を話す執事です)、決め台詞にしては切れ味が鈍っていることも、このシリーズの定番。もともと泥臭いミステリを志向されているので、これらはわざとなのでしょう。

ミステリとしての側面に目を向けると....

「アリバイをご所望でございますか」は、謎解きシーンで影山が「今回の事件は、典型的な《返り討ち殺人》でございます」というように、あまりにも典型的な仕掛けなのが残念。

「殺しの際は帽子をお忘れなく」の帽子をめぐるやり取りは読んでいて楽しいのですが、推論が乱暴だなと感じました。あの状況で帽子が出てくるかな?

「殺意のパーティにようこそ」 は、推理クイズで出てくるようなアイデアと、パーティでのあるある敵事象とを結びつけて展開しているところがおもしろい。どちらもミステリに仕立てるのは難しそうなアイデアであるのに、きちんとミステリが成立しているのがすごいです。

「聖なる夜に密室はいかが」の雪の密室トリックは想像するだけでも楽しいものなのですが、作中で言われるような効果は得られない気がしてならないのですが。

「髪は殺人犯の命でございます」は、被害者の頭髪が無残に切り取られていたという事実から導き出される推理に飛躍があるのを飛躍と感じさせない作者の手腕に感心しました。

「完全な密室などございません」のトリックは、さすがにアウトだと思います。怒り出す人もいておかしくはない。だけれども、このシリーズの中に置くと、収まりがいいような気がしてくるから不思議です。
また、風祭警部と麗子のエピソードを物語に搦めている点はベテラン作家の腕だな、と。

「忠犬バトラーの推理?」のメインのネタをトリックと呼んではいけないのかもしれませんが、このアイデアはいいですね。好きです。応用も効きそう。
全然違うものなのですが、東野圭吾のある作品を連想してしまいました。


<蛇足1>
「風祭警部は腑に落ちたとばかりに深々と頷いた。」(16ページ)
「腑に落ちない」と否定形でよく見る表現ですが、こういう風に肯定形で使われるのは珍しいように思います。

<蛇足2>
「『ん、三階と四階!? 両方とも空き部屋だよ。不況のせいでかれこれ二ヶ月も空いたままさ』
 権藤ビルは極めて稼働率が悪いビルらしい。
(16ページ)
会話の仕方にもよりますが、テナントが出た後2ヶ月空いていたくらいでは、不況のせいとはいいがたいように思います。
5階建てのビルで、2フロアが空いているというのは確かに稼働率は悪いですが、全体のテナント数が少ないので悪いと言い切るのはかわいそうな気がします。

<蛇足3>
「宝生清太郎は鉄鋼、造船、航空機産業から情報通信、電気ガス、果ては映画演劇、本格ミステリまで一手に牛耳る巨大財閥『宝生グループ』の創設者にして会長である。」(45ページ)
本格ミステリを牛耳るとは、宝生グループ見どころがありますね!




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ブラウン神父の無心 [海外の作家 た行]


ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

ブラウン神父の無心 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/12/10
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ホームズと並び称される名探偵「ブラウン神父」シリーズを鮮烈な新訳で。「木の葉を隠すなら森の中」など、警句と逆説に満ちた探偵譚。怪盗フランボーを追う刑事ヴァランタンは奇妙な二人組の神父に目をつける……「青い十字架」/機械人形でいっぱいの部屋から、血痕を残して男が消えた。部屋には誰も出入りしていないという。ブラウン神父の推理は……「透明人間」。


読了本落穂ひろいです。
2016年2月に読んだG・K・チェスタトンの「ブラウン神父の無心」 (ちくま文庫)

近年、チェスタトンの作品は南條竹則さんによる新訳が刊行されていて、そのうちの1冊です。
旧訳としては、創元推理文庫の中村保男訳である「ブラウン神父の童心」 (創元推理文庫)(ただし新版ではなく旧版ですが)で読んでいます。
訳者あとがきで原題の "Innocence" が訳者泣かせだと言及されていますが、採用された訳は「無心」。
「童心」もなかなか考えた訳だとは思いますが、ここでの "Innocence" の訳語として違和感を感じておりました。

「青い十字架」
「秘密の庭」
「奇妙な足音」
「飛ぶ星」
「透明人間」
「イズレイル・ガウの信義」
「間違った形」
「サラディン公の罪」
「神の鉄槌」
「アポロンの目」
「折れた剣の招牌」
「三つの凶器」

ブラウン神父は風采は上がらないのに驚くような洞察と推理、という設定ですが、それにしても、外見描写は容赦がないですね。
初登場の場面がこちら。
「小柄な神父はあたかも東部地方の平地の精気が凝って出たかのようで、顔はノーフォークの茹で団子のように間が抜けており、目は北海のごとく虚ろだった。」(「青い十字架」11ページ)
目がうつろって......
余談ですが、ブラウン神父って煙草を吸うんですね。そういう印象がありませんでした。
「中から聖マンゴー小教会のブラウン神父が、大きなパイプをふかしながら出てくるのをご覧になっただろう。フランボーという、いやに背の高いフランス人の友達が一緒で、こちらはうんと小さな紙巻煙草を吸っている。」(「間違った形」191ページ)
また、所属教会も作品によって違うのかな?
「背の低い男を正式に御紹介すると、こちらはキャンバーウェルの聖フランシスコ・サビエル教会所属のJ・ブラウン師で」(「アポロンの目」282ページ)
教会名が、上の「間違った形」から変わっていますね。

その凡庸そうなブラウン神父から繰り出される鋭い洞察と推理、逆説的なロジックが醍醐味なのですが、ミステリとしてみた場合、これはすごい! と感嘆することもあれば、こちらの実感に合わずにそうかなぁ、と思うこともあり、その振れ幅も実は読んでいて楽しかったりもします。

たとえば、ブラウン神父デビューの「青い十字架」は、二人組の神父が繰り返す奇行が解き明かされるのですが、面白いことを考えるなぁ、とニヤリ。
「秘密の庭」も「透明人間」も「神の鉄槌」も「三つの凶器」も「折れた剣の招牌」も....と挙げだすときりがない、というよりこれ全編そうなのですが、ミステリ的に斬新(だった)アイデアで、鋭さにびっくり。これらの作品、ネタがわかってから読んでも(今回は新訳ではありますが、物語自体は何度目かわからないくらい読んでいます)やはりニヤニヤできます。
ブラウン神父のこと、大見得を切ることなくしずかに絵解きをするのですが、そこに至ると「待ってました!」と声をかけたくなるような興奮を覚えます。

一方で各種アンソロジーにも収録され世評高い(と思われる)「奇妙な足音」は何回読んでもすっきりしないんですよね。ブラウン神父の目の付け所には感心できるのですが、そこから真相に至るには飛躍が多すぎる気がします。
それでもそんな作品でも、
さよう。紳士になるのはまことに大変でしょう。しかし、わたしは時々考えるんです。給仕になるのも、同じくらい骨が折れるんじゃないかとね」(106ページ)
などというブラウン神父のセリフにはニヤリとできるんですよね。

ブラウン神父シリーズの、南條竹則さんと坂本あおいさんによる新訳は、次の「ブラウン神父の知恵」 (ちくま文庫)で止まっているようです。
ぜひ続けていただきたいです。



<蛇足1>
「彼の道楽の一つは、アメリカにシェイクスピアが現れるのを待つことだった──釣りよりも気長な趣味といえる」(45ページ)
イギリス人らしい言い方かとは思いますが、比較対象が「釣り」だと皮肉のレベルは低い??

<蛇足2>
「劇の始まりは、贈り物の日(ボクシング・デー)の午後からということになろう。」(109ページ)
贈り物の日には、「クリスマスの翌日に使用人などに祝儀を配る習慣がある」と注意がついています。
BOXING DAY はイギリスにいたとき祝日でした。(24日クリスマス・イヴは休みではありません)
BOXINGときいて、スポーツのボクシングを思い浮かべてしまって???でした。
BOXに動詞としての使い方があることをこれで知りました。日常生活で使うことはなかった気がしますが(笑)。

<蛇足3>
「彼はそう言うと、縁の奇妙な丸い帽子を脱いで、鋼の裏張りがしてあるのを見せた。ウィルフレッドはそれが日本か支那の軽い兜で、屋敷の古い広間にかかっている戦利品から剥ぎ取ってきたものであることに気づいた。」(「神の鉄槌」256ページ)
日本と中国では兜の形はずいぶん違うように思うのですが、そこはやはりFar East(極東)でいっしょくたなのでしょうね。
ところで、支那って漢字変換が出ないようになっているのですね......

<蛇足4>
「あのエレベーターがじつに滑らかに音も立てないで動くことも、知っての通りだ。」(「アポロンの目」305ページ)
当時にこんな音を立てないエレベーターがあったのでしょうか? 今の技術でも音は消せていませんよね。
ひょっとして(ハンドルをくるくる回して操作するような)手動式で、ゆっくりやれば音がしなかった、とかいう感じなのでしょうか?

<蛇足5>
「事務所を通り抜けてバルコニーへ出、雑踏する通りの前で安全に祈祷をしていたんだ。」(「アポロンの目」306ページ)
「雑踏」も動詞としての使い方があるのですね。

<蛇足6>
「ステイシー姉妹のような人達は決まって万年筆を使うが」(「アポロンの目」306ページ)
決まって万年筆を使う人たちって、どういう人なのでしょう??


原題:The Innocence fo Father Brown
著者:G. K. Chesterton
刊行:1911年(wikipediaによる)
訳者:南條竹則・坂本あおい




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盗みは忘却の彼方に [日本の作家 赤川次郎]


盗みは忘却の彼方に (トクマノベルズ)

盗みは忘却の彼方に (トクマノベルズ)

  • 作者: 赤川次郎
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/03/20
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
旅番組の撮影で見知らぬ町に取り残されてしまった、崖っぷちタレントの久保田杏。追い打ちをかけるように雨が降り始め、森の中の小屋へと駆けこんだ。「このままじゃ、風邪ひいちゃう」と呟いた瞬間、ドアを開けて入ってきたのは三人の強盗犯! 杏はとっさに隠れるも、クシャミをして密談中の男たちに見つかってしまう。「二つに一つだ。ここで死ぬか仲間になるか」──。彼女は必死の演技で強盗犯の手助けをすることに!? 大人気シリーズ「夫は泥棒、妻は刑事」第二十四弾は、淳一と真弓が一億円強奪事件に立ち向かう!


2023年9月に読んだ12作目(14冊目)で、最後の本です。
「夫は泥棒、妻は刑事」シリーズ最新刊で、第24弾。「盗みは忘却の彼方に」 (トクマノベルズ)

このところ「三毛猫ホームズと炎の天使」 (KAPPA NOVELS)(感想ページはこちら)、「花嫁純愛録」 (ジョイ・ノベルス)(感想ページはこちら)と立て続けにあまりにも現実的とは思えない内容にケチをつけてきましたが、この「盗みは忘却の彼方に」 に関しては、どれだけ現実離れしても同様のケチはつけません。なんといっても、夫は泥棒、妻は刑事、というのですから。
このシリーズはこれでいい、現実ではありえない話と割り切って楽しむシリーズだと理解しています。
(その意味では、カバー裏に「現実にもこんな夫婦がいたら面白いのに、と誰もが思う」と書いてあるのは少々言い過ぎかと思いますが、エンターテイメントとしてはいいのでしょうね)

冒頭強盗事件に巻き込まれるタレント杏というところから非現実的なのですが、その後の展開はそれ以上。
そんなことあるかよ! と突っ込みながらも勢いのある展開を楽しみます。
そんな杏があれよあれよという間にTVスターになっていくという赤川次郎好みの展開。
強盗仲間の一人もひょんなことからスターへの道を歩み始める......

杏たちがとてもいい人間のように描かれているので、読者としては幸せになればいいな、と願いながら読むことになるわけですが、それでも罪を犯したことは事実。
話の途中を楽しみながらも、どういうエンディングになるのだろうと大きな気がかり。
いつもの赤川次郎パターンだと、しっかり償うべき罪は償って、となりそうですが......
実際にどう落ち着いたか(あるいは落ち着かなかったか)は読んでいただくべきかと思いますが、結構思い切ったラストになっているように思いました。
タイトルもなかなか含蓄深いです。

ひょっとしたら少しずつではありますが、5月に感想を書いた「たそがれの侵入者」 (フタバノベルズ)(感想ページはこちら)といい、赤川次郎の作風が変わりつつあるのかもしれません。



<蛇足1>
「しかし、照美の身を守るのは、淳一の泥棒としてのプライドだったのだ……」(67ページ)
人の身を犯罪組織の手から守るのが泥棒のプライドというのはわかりにくいですが(泥棒は別にボディガードというわけではないし、照美は淳一の仲間というわけでもないので)、「お互い、闇の世界で仕事をしている身だぞ。明るい昼の世界で働いている人を脅したり傷つけたりするな」(66ページ)というセリフがその前にあるのでこの文脈で理解するのでしょうね。

<蛇足2>
「コーヒーカップを手で弾き飛ばすと、カップの受け皿をつかんで、散弾銃の男へと投げつけたのだ。更は男の首を横から直撃した。
 男は痛みに呻き声を上げてよろけると、引金を引いていた。正面のガラス窓にボカッと三十センチほどの直径の穴があいた。」(99ページ)
散弾銃なのに穴が一つ? と思いましたが、一発弾を発射する散弾銃もあるのですね。





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動機、そして沈黙 [日本の作家 西澤保彦]


動機、そして沈黙 (中公文庫)

動機、そして沈黙 (中公文庫)

  • 作者: 西澤 保彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
時効まで二時間となった猟奇犯罪「平成の切り裂きジャック」事件を、ベテラン刑事が回想する。妻と戯れに推論を重ねるうち、恐ろしい仮説が立ち上がってきて……。表題作ほか、妄執、エロス、フェティシズムに爛れた人間の内面を、精緻なロジックでさらけだす全六作品。


2023年9月に読んだ11作目の本です。
西澤保彦の「動機、そして沈黙」 (中公文庫)

タイトルから、デイヴィッド・マーティン「嘘、そして沈黙」 (扶桑社ミステリー)と何か関連性があるかな、と思いましたが無関係ですね。

「ぼくが彼女にしたこと」
「迷い込んだ死神」
「未開封」
「死に損」
「九のつく歳」
「動機、そして沈黙」
以上6編収録短編集。

西澤保彦といえば、独特のロジックが展開するのが特徴で、非常にアクが強い。
こちらが若い頃はそれでも飲み込んでいましたが、ちょっと読んでいて辛いものがありました。

西澤保彦の初期作に多かった特殊設定下だと、状況を理解していくのにああでもないこうでもないと試行錯誤が必要で、そのために極端なロジックが展開されても理解に役立つ面があり受け入れやすかったのだと思いますが、普通の一般社会の設定だとロジックの極端さが強調されて受け入れにくくなってしまっているのでしょう。

顕著なのが「未開封」なのではないかと。
この作品のロジックを実感を持って受け止められる人、どのくらいいるのでしょうか?
根っこの部分は理解できなくもないのですが、そこから殺人への飛躍振りがついていけないように感じました。
続く「死に損」 も難解です。早々に犯人の見当がつき、動機探し的な物語になっているのですが、肝心の動機が......

「ぼくが彼女にしたこと」はロジックは普通のものですが、その周りに配置されている性的な色彩が強くてちょっとげんなり。

その意味では、迷い込んだ屋敷で展開される悪夢のような一族の物語の裏側が明かされる「迷い込んだ死神」や、ストーカーに付き纏われていたことが判明したことから主人公が思いもよらなかった自らの秘密(?) にたどりつく「九のつく歳」は、どぎつさのバランスが抑え気味なのでとっつきやすいかもしれません。
表題作「動機、そして沈黙」が、長さ的にも一番の力作なのでしょう。定年間近の刑事が、もうすぐ時効を迎える「平成の切り裂きジャック事件」の真相を妻とのディスカッションからつかんでいく。同趣向の作品はあるように感じましたが、なんともいえない余韻が残るのがポイントかと思います。

解説で千街晶之が
「著者の作品群において、本格ミステリとしてのロジカルさと同時に、フェティシズム、人間の記憶の不確実性、家族間の確執、狂気──そして、それらをひっくるめた『異形の妄執』が一貫して描かれ続けていることを意味する。実はロジックもまた、その妄執のかたちを可視化するための道具立てなのだ。」
と指摘しているのに深く頷いてしまいます。

最後に、西澤保彦といえば、難読苗字が連発されるのも特徴ですね。本書でもこの特徴は健在。
吉目木(よめき)、茨田(ましだ)、竹楽(つずら)、伊良皆(いらみね)、紫笛(してき)、乳部(みぶ)、国栖部(くずべ)、陸井(くがい)、壬生(みぶ)、尾立(おりゅう)、津布楽(つぶら)......



<蛇足>
「郷里在住の友人の結婚披露宴に出席するため、列車で海松市へやってきたところだった。ふたりが同じ便に乗り合わせていたのは、別に事前に示し合わせていたわけではなく、単なる偶然だという。」(140ページ)
列車を便というのですね。なんとなく飛行機にしか使わないイメージでしたが、当然列車にも使うべき語ですね。

タグ:西澤保彦
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ゴーグル男の怪 [日本の作家 島田荘司]


ゴーグル男の怪 (新潮文庫)

ゴーグル男の怪 (新潮文庫)

  • 作者: 荘司, 島田
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
煙草屋の老婆が殺された夜、ゴーグルで顔を隠した男が闇に消えた……。死体の下から見つかった黄色く塗られたピン札、現場に散乱する真新しい五十本の煙草。曖昧な目撃情報に怪しい容疑者が続出し、核燃料製造会社をめぐって奇怪な噂が。そしてついに《ゴーグル男》が出現した。巧緻な伏線と戦慄の事件が、ねじれ結ばれ混線する! この上なく残酷で、哀しい真相が心を揺さぶるミステリー。


2023年9月に読んだ10冊目の本です。
島田荘司の「ゴーグル男の怪」 (新潮文庫)

都下福来(ふっき)市のはずれの野々上町の煙草屋で店番をしていた高齢の女性が殺された事件。
釈然としない点の多い事件で、近くでは怪しいゴーグル男が目撃されていた。

この事件と並行して、野々上町にある核燃料製造会社で働く若い男の視点による回想が語られていきます。
この若い男のパートを読むのがつらかったですね。
中学生の頃に受けた繰り返される性的暴行、核燃料製造会社で起こった臨界事故とその波紋。

煙草屋の強盗殺人事件とこの若い男のパートがどう結びつくのかがミステリとしての興味をかきたてることになります。
結果的に、意外な、というよりは変わった結びつき方をしまして、物語、お話として、ある種抒情的なエンディングになっています。

この小説をミステリとしてみた場合はどうでしょうか?
煙草屋の事件に意外性がないことが残念ですし(紙幣のエピソードもちょっと陳腐です)、犯人を落とす決め手となるピース缶(念のため色を変えておきます)のくだりも、ちょっと決め手に欠けるように思います。
なにより気になるのが、若い男のパートの果たす役割でしょうか。
ぼかして書くにしてもネタバレになると思うので、ここも色を変えておきます。
この若い男のパートは全体として読者に対するミスディレクションという役割を担っているのですが、この内容をそういう風に使うことの是非が気になりました。 一方でこういう設定だからこその抒情的なエンディングなのですが、その点を踏まえてもなお、よりデリケートに扱うべき事柄のように思えてしまっています。
この点はエンターテイメントとして大きな問題で、後になればまったく違う意見になってしまうかもという気もしますが、現時点ではもやもやしています。

驚いたのは、解説であかされていることで、この抒情的なエンディングをもたらしている第40章が、文庫版で加筆されているということです。
部分的な加筆なのでしょうか? 単行本のときにはこの第40章はなかったのでしょうか? これがあるとないとでは、印象がまったく違ってくるように思えますので、とてもびっくりしました。



<蛇足1>
「その現代青年らしからぬ純情ぶりに、刑事は意外を感じた。」(262ページ)
意外を感じるという表現に違和感を覚えました。
こういう表現一般的でしょうか?

<蛇足2>
「これだけの美人だから無理もないが、ナルシスティックな傾向がある。」(332ページ)
英語からすると、ナルシストではなくナルシシストなので、ここもナルシシスティックとなるところですが、日本ではナルシストという言い方が広まっているのでこうされたのでしょうね。

<蛇足3>
「だけど、これはインチキで、銀行は金を貸しているわけじゃない、数字を書いたただの紙を渡しているだけだ。そして、銀行の金庫にはこれと同量の金が入っていると言っているんだけど、誰も確かめることはできない。」(363ページ)
ここは現在の制度が金本位制ではなく管理通貨制度であることを説明した箇所なのですが、銀行の金庫に金が入っているというのは、いつ、だれが言ったことでしょう? 金本位制でもこうはならないと思いますね。
作中人物のセリフなのでこの人物がそう思い込んでいればよい、ということかもしれませんが、間違った認識なので気になります。






タグ:島田荘司
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野蛮なやつら [海外の作家 あ行]


野蛮なやつら (角川文庫)

野蛮なやつら (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
舞台はカリフォルニアのラグーナ・ビーチ。2人の若者ベンとチョンは、幼なじみのオフィーリアとの友好的な三角関係を愉しみつつ、極上のマリファナの栽培と売買で成功を収めていた。だがメキシコのバハ麻薬カルテルが彼らのビジネスに触手を伸ばす。傘下入りを断った2人に対し、組織はオフィーリアを拉致。彼女を取り戻すため、2人は危険な賭けに出るが──。鬼才ウィンズロウの超絶技巧が冴え渡る犯罪小説の最進化形。


2023年9月に読んだ9作目(11冊目)の本です。
ドン・ウィンズロウ「野蛮なやつら」 (角川文庫)

いきなりの1ページ目の第1章が

ざけんな。

そして第1章は、これで終わり。
独特の文体でつづられる、野蛮なやつらの物語。
最初のうちはこの文体に戸惑うのだけれど、次第に、個性あふれる登場人物たちが絡み合い、作用しあって紡がれる物語にしっかり引き込まれていきます。

ベン、チョンサイドは、麻薬ビジネスをやっているといっても、どこか牧歌的というか、ゆるゆる。
一方のメキシコのカルテルは、当然のことながらハード。
ゆる~いマンガ的世界(現代の発達したコミックというよりは、昔懐かしいマンガのイメージです)とハードな裏社会とをかけあわせるとどうなるか、というのを斬新な実験的文体でつづった作品、ということになります。

個人的にはゆるゆるの世界を強く支持したいのですが(あっ、でも麻薬はダメです)、この2つが混じった世界がどうなるか、多勢に無勢あるいは組織体個々の決着がどうなるかというのは、カルテルサイドの内紛がどの程度影響を及ぼすかにかかってくるとは言え、まあ容易に想像できてしまうわけで、ベン、チョンサイドに立って読み進める読者としては、悲劇的な結末を迎えてしまうのだろうな、とやや悲観的になってしまいます。

ゆるゆるだった世界が、途中からハードな世界に搦めとられ、どんどん色を変えていく様子。
想定される悲劇的な結末。

軽いウィンズロウが懐かしくもありますが、これはこれで充実した読書体験でした。


<蛇足1>
「何が災いしたと思う?」
「強欲だな」と、チョン。「強欲と不注意と頭の悪さ」
(ベンに言わせれば、それは、今は亡き ”連合” のみならず、人類全体にとっての滅亡の三要素だった)(56ページ)

<蛇足2>
「手荷物受取所にベンの姿があり、まるでコスタリカの研修旅行から帰った大学生のがきみたいに、緑色のダッフルバッグを待っている」(92ページ)
「ベルトコンベアでバッグが運ばれてくる。チョンがそれを取って、肩にかけ、三人で外へ向かうその途中に」(93ページ)
海外から帰ってきたベンをチョンたちがジョン・ウェイン空港へ迎えに行くシーンです。
ここを読むと、迎えに来た一般人が、手荷物受取所のベルトコンベアのあたりまで行けるようです。
国際線の出口あたりがこういう構造になっているとは思えないのですが......

<蛇足3>
「あお連中の下で働く気はないだろう?」ベンが確かめる。
「ああ」と、チョン。「まったくない。決まり金玉だ」(138ページ)
決まり金玉(笑)。
懐かしいですね。
ニール・ケアリー、帰ってきて!

<蛇足4>
「仏陀の怒りを買うよ」
「あの太っちょの日本人のか」
「太っちょインド人だ」
「日本人だと思ってた。でなきゃ、中国人だと。仏陀はアジア人じゃなかったのか」
「インドもアジアだよ」(138ページ)
英語のアジアというのは、日本人のイメージと違ってインドあたりを指す語だと理解していたのですが(でないと、東アジアや東南アジアという語の方角がおかしくなってしまう)、チョンは日本人と同じようなイメージを抱いているようですね。
もともとインドとの結びつきが強いイギリスと異なり、一般的なアメリカ人にしてみたら、インドよりも日本や中国が先に台頭していたからからもしれませんが。



原題:The Savages
著者:Don Winslow
刊行:2010年
訳者:東江一紀




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ダンジョン飯(9) [コミック 九井諒子]


ダンジョン飯 9巻 (ハルタコミックス)

ダンジョン飯 9巻 (ハルタコミックス)

  • 作者: 九井 諒子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: コミック




ダンジョン飯、シリーズ第9弾です。

今回は
第57話 兜煮
第58、59話 サキュバス1、2
第60話 有翼の獅子 
第61話 焼き歩き茸
第62話 6日間
を収録しています。

巻数が重ねられてくることで、物語の方向性もずいぶん変わってきました。

出てくる料理は
第57話 デュラハンの馬の兜煮(予定)
第59話 サキュバスホットミルク
第60話 ライ麦パン、ワイバーンの卵焼き、ヒポグリフのソーセージ、歩き茸のスープ
    サキュバスとバイコーンの脳ドリア 
第61話 焼き歩き茸
第62話 バロメッツのスープ

品数は減ってきていますが、料理の比重が回復してきたように思います。
また料理の作り手もセンシではない話が増えてきていますね──これはいい傾向なのかどうか?

第57話は、ライオスとマルシルの出会いの話。

第58、59話はイヅツミに焦点があたります。
この話に出てくるサキュバスは、淫魔ではなかったですね。似ていますけれど。

第60話は、ライオスは夢(?)で有翼の獅子と出会い、ライオスが迷宮の国の王となったときの様子を見せられます。そして「カナリアに気をつけろ」と注意される。

第61~62話は、カブルーの物語。カブルーはカナリア隊(!)の隊長ミスルンと一緒にいます。
ミスルンはかつて迷宮の主だったという。

迷宮の設定がいろいろと拡充されてきていて、物語の幅が大きくなってきています。
いったいどうなるのでしょうね??



タグ:九井諒子
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