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Blacklist [タイ・ドラマ]

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久しぶりにタイ・ドラマの感想を。
「Blacklist」。
いつもの MyDramaList によると、
2019年10月から12月にかけて GMM 25で放映されていたようです。
全12エピソード。
ぼくが観たときは、YouTube に日本語の字幕もあったのですが、今確認するとありませんね。
英語字幕になってしまいます。



タイ・ドラマとして前回感想を書いた「2 Brothers」のあとに観たのが「The Gifted」(感想ページはこちら)で、あまりの面白さにびっくりし(未だに My タイ・ドラマ No1 はダントツぶっちぎりで「The Gifted」です)、似たような作品はないものか、と探して辿り着いたのが「Blacklist」。
「The Gifted」同様BLではなく、学園を舞台にしたサスペンスタッチのドラマです。
ポスターや上の YouTube のサムネイルをご覧いただくとわかりますが、「The Gifted」の主役を務めた Nanon が主演。ほかの出演者も、いままでタイドラマでお馴染みの俳優がいっぱい。

なんですが、最初にいってしまうと、これは駄作です。
同じGMM 25 だし、「The Gifted」を超えるものを作ろうと意気込んだんだと思うんですよね。
それで選んだ道が、扱う事件や悪人の狙いをエスカレートさせること、だったのが失敗です。
なんだかんだいっても舞台は高校。
そこにマフィアか暴力団かと見紛うような事件を盛りこんだら、非現実的になりすぎるでしょう。
それを高校生が解決するというのも無理がありますよね。
だから、というわけなのでしょうか、上のポスター中央にいる大人がメンバーに入っています。教師です。これ、興ざめではありません??

物語は Nanon 演じる Traffic の視点で進みます。
彼は失踪した姉の謎を探るために Akeanan 高校に転入してきた。
この校内に怪しい組織──リーダーは ”神の手” と呼ばれている──があって、それと対抗すべく? 作られた Blacklist と呼ばれるチーム。そのリーダーが教師。Traffic は Blacklist に加わり、姉の失踪の解明含め、学校に巣食う悪と戦うことに。

「The Gifted」をスケールアップさせようという狙いだったのだと思いますが、大きくしすぎて制御できなくなり、ぐちゃぐちゃになった印象です。

といいながら、見どころをあげておくと、タイドラマらしくというのか、最後まで視聴者を楽しませよう、驚かせようと、次から次へと山場を盛り込んでくところは立派だと思います。
Blacklist の狙いがどんどん変わっていく── "神の手" との闘いなのだろうと思ったら、 "神の手" の奥に更なる対象がいて、さらにさらに、と移り変わっていく──様子は、これでもかこれでもかと盛り込もうという意欲の表れ。物語が着地しそうになってからも仕掛けてくるのですから、すごいです。
その分無理が重なっていくのですが、意欲は買いたい。

また、出てくる俳優さん、女優さんたちの大多数が、もうすっかり顔なじみになっていまして、再会をよろこぶ楽しみもあります。

それにしてもエンディングでは Blacklist が再結集(?) していまして、いつでも続編が作れそうなかたちになっているのが笑えました。
さすがにこの続編は無理だろう(笑)。

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蛇棺葬 [日本の作家 三津田信三]


蛇棺葬 (講談社文庫)

蛇棺葬 (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
幼い頃、引き取られた百巳(ひゃくみ)家で蛇神を祀る奇習と怪異の只中に“私”は過ごす。成長した“私”は訳あって再びその地を訪れる。開かずの離れ“百蛇堂”での葬送百儀礼で何が起こるのか? もうひとつの怪異長編『百蛇堂 怪談作家の語る話』へと繋がるホラー&ミステリ長編。著者の創る謎と怪異の世界。全面改稿版。


2023年9月に読んだ8作目(10冊目)の本です。
三津田信三「蛇棺葬」 (講談社文庫)
「百蛇堂 怪談作家の語る話」 (講談社文庫)とセットの作品です。

因襲に満ちた田舎の旧家で起こる怪異。
主人公である語り手の少年時代の目と、大人になってからの目を通して語られるところがミソなのでしょう。
タイトルからもわかるように、蛇を思わせるイメージにあふれた恐怖譚です。
ただ作品中にはっきりとは書かれていなかったように思います。口にすることがタブーに近いということなのかな、と感じました(少年時代のエピソードにそれに近いことがあらわれます)。

ミステリではなく、ホラーの方に振り切っていまして、怪しい現象はかずかず起こるものの、その正体が何なのかは明かされません。
この ”雰囲気” が怖い。なんだかぬめぬめとした恐怖感。
いくら伝統だといっても、こんなお葬式は嫌だなぁ。

はっきりと書かれないうえに、語り口が冗長なものに設定されているので(なにしろ目次に「長い長い男の話はいつまでも続いた」とあるくらいですから)、焦点が定まらないもどかしさがあると同時に、それが恐ろしさを引き立てているような。

「蛇棺葬」を読むにあたって、続く「百蛇堂 怪談作家の語る話」 (講談社文庫)を続けて読もうと思っていましたが、ちょっと怖いので間をおこうと思います。


<蛇足>
さらっと書かれているのですが、友人が周りから忌避されていることに気づき、民(百巳家の使用人?)に問うシーンが印象的でした。
「唯な、坊。そんなもんで人様の値打ちは決まらんけ。坊が砂川君をええ友達や思うたら、それが正しいけ。でもな、大人の世界はそういう訳にはいかんけ。分かるけ、坊」(185ページ)




タグ:三津田信三
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ハロウィーン・パーティ [海外の作家 アガサ・クリスティー]


ハロウィーン・パーティ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫)

ハロウィーン・パーティ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2023/08/24
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
推理作家ミセス・オリヴァーが参加したハロウィーン・パーティで少女が殺された。少女が殺人現場を見たことがあると自慢していたことから口封じのための犯行かと思われたが、彼女は虚言癖の持ち主。殺人の話を真に受ける者はいなかった。ただ一人ポアロを除いては。クリスティーらしさが詰まった傑作が新訳で登場。


2023年8月に読んだ7作目の本です。
アガサ・クリスティーの「ハロウィーン・パーティ」〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫)
映画「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」(感想ページはこちら)の原作です。
映画を観る前に読もうと思って購入しました。感想は前後しましたが、なんとか原作を先に読みました。

解説で若竹七海が
「物語は本作の十三年前に発表された『死者のあやまち』そっくり(ポアロとオリヴァー夫人が登場し、ゲームの最中に少女が殺され、物語の背景には美しい庭)。」
と書いているように、本当に「死者のあやまち」 (クリスティー文庫)(感想ページはこちら)そっくり。

こちらの少女は虚言癖があって、それが原因で殺されたのだろう、と推察される。
てっきり嘘だと思い込んでいたオリヴァー夫人が、自責の念(?) に駆られて、ポアロの出馬を要請する。
物語の流れはよいのですが、少女が殺されることと言い、どうも後味がよろしくない。
美しい庭と絶世の美青年が出てきても、これは拭えませんね。

ポアロが乗り出してから、関係者への聞き取りシーンの連続で、物語は極めて短調。
クリスティーの作品には、もともとおしゃべり(捜査や尋問というよりは、おしゃべり)のシーンが多いのですが、この作品では特に目立ったような気がします。

これ、どうやって映画化するのかなぁ?
映画は舞台をベネチアに移し(庭がない!)、ハロウィーン・パーティのあと開催される降霊会(!) を受けての殺人という、原作とは別物といえるものでしたが、観る前はそう思っていました。

ちょっと欠点が目についた感想になっていますが、それでも犯人の隠し方はさすがクリスティーと言えそうで、さらっと読者の目をそらしてしまう手際は素晴らしい。それすら若竹七海には「犯人の設定はクリスティーがさんざん使い込んできたおなじみのパターン」と断じられていますが、効果抜群です。
そして御歳79歳の作品とは思えない、みずみずしい庭園の場面が強く印象に残っています。
傑作、ではないかもしれませんが、クリスティーらしさにあふれた作品だと思いました。


原題:Hallowe'en Party
著者:Agatha Christie
刊行:1969年
訳者:山本やよい





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冬空トランス [日本の作家 な行]


冬空トランス (角川文庫)

冬空トランス (角川文庫)

  • 作者: 長沢 樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/10/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
少女はなぜ4階のこの教室から飛び降りなければならなかったのか? 撮影不可能な映像はいつどうやって撮られたのか? タイムリミットは一晩。絶体絶命の完全密室から、脱出することはできるのか? 屋上観覧車、校舎、放送室……様々な場所に仕掛けられた難解トリックに “可愛すぎる名探偵” 樋口真由が挑む。文庫書き下ろし「『消失グラデーション』真の解決編」も収録した、横溝賞〈大賞〉受賞作家、真骨頂の学園ミステリ決定版!


2023年9月に読んだ6作目(8冊目)の本です。
長沢樹「冬空トランス」 (角川文庫)

横溝正史賞受賞作であるデビュー作「消失グラデーション」 (角川文庫)(感想ページはこちら)からスタートし、「夏服パースペクティヴ」 (角川文庫)(感想ページはこちら)と続編(?) が書かれたシリーズの第3作で、4編収録の短編集です。
amazon のページに各話の紹介文があったのでつけておきます。
「モザイクとフェリスウィール」
動画投稿サイトで注目を集める天才は、絶対に撮影不可能な、驚異の映像を生み出した。果たしてどのような手段で撮られたものなのか。超難関の挑戦を受けた、遊佐渉の答えは?
「冬空トランス」
少女はなぜ4階のこの教室から飛び降りなければならなかったのか? 状況は手首を切って自ら飛び降りたことを示している。しかし、真由は即座に疑念を呈す――自殺とは思えない。
「夏風邪とキス以上のこと」
完全に閉じ込められた。だが状況は単純だ。縦5m、横4m、高さ3.5mの空間から脱出すればいい。タイムリミットは一晩。追い込まれた真由、決死のリアル脱出ゲームが始まる。
「わがままなボーナストラック」
あの衝撃の消失事件の主役・網川緑の目撃情報が!? 文庫書き下ろしの『消失グラデーション』真の解決編

香山二三郎の解説にもある通り、時系列的には
「モザイクとフェリスウィール」
「夏服パースペクティヴ」
「冬空トランス」
「消失グラデーション」
「夏風邪とキス以上のこと」
「わがままなボーナストラック」
という順番となります。

非常に気を使った書き方がされてはいるものの、それでもこれまでの作品のネタバレにつながりかねない部分は多々あり、かつ登場人物たちの結びつき具合が与える影響がとても大きいので、すくなくとも「消失グラデーション」は先に読んでおいた方がよいと思います。
「消失グラデーション」は極めて優れたミステリなので、この「冬空トランス」 (角川文庫)を読む気がない方でも、ぜひお読みください。

それにしても、「消失グラデーション」で始まった作品世界が、ここまで広がり深化するとは。

「モザイクとフェリスウィール」は、遊佐渉が樋口真由を見つけるまでの話。
映像から突き止める、という、文章ではなかなか難しいところに挑んでいます。
(真由たち登場人物は、渉も含めて映像を嗜んでいるという設定なので、自然な流れではあるのですが)

「冬空トランス」は、シリーズで繰り返し出てきた、樋口真由の転校について、そのきっかけを描いているものと思われます。
この作品で使わているトリック(?)、個人的にイメージがつきづらかったのですが、実際にその現場にいたとすると圧倒されるような気もします。
作中終盤の真由の行動は気持ちはわかるものの行き過ぎだと思いましたが、これも当事者ゆえの感情の爆発で、それほどまでに......ということなのだと理解しました。

「夏風邪とキス以上のこと」は、このトリックというか仕掛けはうまくいくのだろうか? と思いましたが(なんだかんだいっても、学校の建物なんてそんなに緻密には造られていないと思うので。もっとも私立学校という設定なので贅沢に作られているのかもしれません)、放送室のスタジオからの脱出という知恵比べ的な部分はとても面白かったですし、敵役が真由を追い込んでいく手つきは憎たらしいほどで、脱出直後のシーンを想像すると真由の強靭さと屈辱の凄まじさが恐ろしい。
タイトルのキス以上のこと、というのは、渉が真由にキス以上のことを求めたことから来ていますが、途中で、
「更に問題を複雑化させているのは、この程度のことを、遊佐渉が気づかないはずがないということだ。その上で、遊佐は自分を放置している。このまま密室から抜け出せなければ遊佐との約束が果たせなくなる。遊佐はそれを承知で手を出さないのか──ヒカルの仕掛けたゲームに便乗して、本気でキス以上のことを狙っている? 由々しき事態だった。もっと優しく接していればよかったのか?」(291ページ)
というところでは、真由には申し訳ないですが、笑ってしまいました。

「わがままなボーナストラック」は、『消失グラデーション』真の解決編とありますが、ミステリ的な解決編というよりは、物語としての完結編といった趣です。
ワタルの正体を含め、これまでの諸作を微妙にずらしてみせる手際がとても興味深かったです。おもしろい。

シリーズはこのあと出ていないようですが、なんらかのかたちで、また渉、真由たちと出会いたいですね。
このシリーズ、どの登場人物も癖のある、かつ推理力に長けた人物として設定されており、丁々発止的なやり取り含め、読んでいてとても楽しいですから。


<蛇足>
「中を改め、女性の名が椎野小和であることが判明した。」(165ページ)
ルビがふっていないので、「小和」って何と読むのだろう?と思いました。
さわ、とか、こより、とか読むようです(ほかにも読み方はあるようです)。
他の読み方が考えられないようなケースを別にして、人名には初出時にルビが欲しいな、と思ったりしたのですが、考えてみればこの ”消失”シリーズにそれを望んではいけませんでしたね(笑)。








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詩歌川百景 (1) [コミック 吉田秋生]


詩歌川百景 (1) (フラワーコミックス)

詩歌川百景 (1) (フラワーコミックス)

  • 作者: 吉田 秋生
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2020/10/09
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
温泉旅館で働く青年・飯田和樹。
町いちばんの美人といわれる幼なじみの小川妙に日々からかわれながらも和樹は彼女の事情を気にかけていて……?
小さな温泉町を舞台に描かれる瑞々しく精細な人間ドラマ 第1巻!


奥付を見ると2020年10月。もう3年たつのですね。
「海街diary」のあと吉田秋生が描いているのが、この「詩歌川百景」です。
詩歌川は、うたがわ、と読みます。

第1話 町いちばんの美女
第2話 帰らぬ人
第3話 美女は野獣
第4話 冬の花
の4話収録。

「海街diary」の最終巻である「海街diary 9 行ってくる」 (フラワーコミックス)のラストに収録されていた「番外編 通り雨のあとに」に出てきた和樹が主人公をつとめます。
すずが鎌倉に来る前に一緒に暮らしていた弟・和樹は、いまでは山形県北部の河鹿沢温泉の旅館「あづまや」で湯守(の見習い)をして、下の弟守(まもる)と一緒に暮らしている。

和樹と妙の関係性が物語の中心というのは見当がつきますが、ふたりをとりまく登場人物たちも魅力的です。
和樹の弟の守もそうですし、和樹(と妙)の同級生だった森野、林田(二人合わせて森林組合笑)や旅館の大女将や湯守の倉石さん。
妙の母絢子さんなど、曲者役の人たちもなかなかいい感じ。
舞台が小さな田舎なので、狭い人間関係で物語が展開するのが効果的です。
ヨーダみたいな慈仙寺の住職も、三悪と呼ばれるおじさん(じいさん?)連中も、スナック「サンバ」の面々も、どんどんお馴染みなっていくのでしょう。

和樹の二つ下の弟である智樹は、和樹たちと離れて母親についていきその後15のときに厚生施設に入所が決まったという設定です(「番外編 通り雨のあとに」に智樹のエピソードがありましたね)。
和樹だけでなく妙サイドも、家族関係が一筋縄ではいかない設定になっており、物語に陰影を与えます。
和樹にしろ、妙にしろ、周りをとてもよく観ていて(森林組合のうち林田も)、彼らの交わす会話は、若い人にありがちなふざけたやりとりにとどまらず、すっと深いところをつかみとるような鋭さをしばしば発揮し、はっとさせられます。

第1話の林田が妙に投げかけるセリフ「うっかり毒リンゴ喰らうなよ 白雪姫」なんて、いつか意味が分かるときが来るのだろうな、と思って読みました(うっすら見当がついてはいるのですが)。

いまのところ3巻まで出ています。
追いつこう。



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名探偵コナン (8) [コミック 青山剛昌]


名探偵コナン (8) (少年サンデーコミックス)

名探偵コナン (8) (少年サンデーコミックス)

  • 作者: 青山 剛昌
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1995/12/09
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
蘭に俺の正体を暴かれそうになる大ピンチ!! とっさの機転でしのいだけれど、もうちょっと蘭を安心させてやりたかった…早く元の工藤新一に戻りたいけど次から次へと事件が起こってそれどころじゃないんだよ!! 空から ”闇の男爵” が降って来たぁ

名探偵コナン第8巻です。

FILE.1 ついに見つけた!!
FILE.2 闇の男爵(ナイトバロン)
FILE.3 恐怖のウイルス
FILE.4 仮面の下
FILE.5 蘭の涙
FILE.6 風のいたずら!?
FILE.7 落下地点の秘密
FILE.8 花嫁の悲劇
FILE.9 禁断のレモンティー!?
FILE.10 殺しの理由
の10話収録。

FILE1は、前巻 「名探偵コナン (7)」 (少年サンデーコミックス)の FILE8~10の続きで大団円。
犯人の指摘は第7巻で終わっているので、ミステリとしてというよりは、物語として(という言い方は変ですが)どう終わらせるかというのが興味になりますね──その意味では第7巻感想はピント外れでした。
蘭に誤解されたままというのは至極まずいですし(笑)、なんとかうまくごまかせたかな?

FILE2~7は、伊豆のホテルを舞台に、「伊豆ミステリーツアー」と称し、参加者に化けて紛れ込んでいる主催者を見つけると宿泊費がタダになるというツアーにコナンたちが参加します。
その主催者は、コナンの父である推理作家が生み出したキャラクターである ”闇の男爵(ナイトバロン)" に扮し事件を起こすことになっていて......実際に起こった事件はなんと殺人事件。
ちょっとあからさますぎる手がかりがあって、そのせいで蘭含めた登場人物の行動が変わってくる、という流れになっているのですが、あまりにあからさますぎるのでどう処理するのだろうと思っていたら、さらりとひねりが加えられていて満足しました──もっとも、といってもやはりそのせいで真相が見抜きやすくなってしまっていますが。
ミステリとしては小さなトリックをいくつも投入している点が見どころですね。
途中埼玉県警の横溝さんが再登場し、
「先月から静岡県警に転勤してきたんですよ!」
と言ったのには笑ってしまいました。佐野洋が生きていてこれを読んだら、噛みついたことでしょう。

FILE8~10は、新一と蘭の中学校時代の恩師の結婚式での悲劇を描いています。
くりかえし出てくるレモンティーが効果的に使われてます。
登場人物が限られているので犯人の目星はすぐについてしまうのですが、そのことがお話としての悲劇性を高める効果を持っている点は注目点かなと思います。

裏表紙側のカバー見返しにある青山剛昌の名探偵図鑑、この8巻は銭形平次です。
青山さんのオススメは「銭形平次捕物控」って、これじゃ特定できないような......。





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コールド・コールド・グラウンド [海外の作家 ま行]


コールド・コールド・グラウンド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

コールド・コールド・グラウンド (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/04/04
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
暴動に揺れる街で起きた奇怪な事件。被害者の体内からはなぜかオペラの楽譜が発見され、現場には切断された別人の右手が残されていた。刑事ショーンは、テロ組織の粛清に見せかけた殺人なのではないかと疑う。そんな折、“迷宮"と記された手紙が彼に届く。それは犯人からの挑戦状だった! 武装勢力が乱立し、紛争が日常と化した八〇年代の北アイルランドで、ショーンは複雑に絡まった殺人鬼の謎を追うが……。大型警察小説シリーズ、ここに開幕


2023年9月に読んだ5作目の本です。
エイドリアン・マッキンティ、「コールド・コールド・グラウンド」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

1980年代初頭の北アイルランドという設定で、いわゆるアイルランド紛争が激しかった頃。
アイルランドをめぐる各派入り乱れての状況が背景にあり、おおまかな構図すら頭に入っていなかったので、略号や別称が入り乱れ、読んでいて混乱しました。
読み終わってから、訳者あとがきにキーワードの簡単な説明として解説がされていることに気づき、あとがきから先に読んでおけばよかったと後悔しました。

もともとアイルランドはカトリックが盛んな島で、北アイルランドはイギリスから分離しアイルランドと一緒になることを目指すカトリック系(いわゆるナショナリスト。そのうち過激な人たちがリパブリカン)と、現状のままイギリスに属すことを目指すプロテスタント系(いわゆるユニオリスト。そのうち過激な人たちがロイヤリスト)の対立が激しく、当時はテロや紛争が頻発していました。住民同士の対立も激しかった頃。
有名なIRA(アイルランド共和軍)はリパブリカン系。対するロイヤリスト系の組織がUDA(アルスター防衛同盟)。UDAの下部組織にアルスター自由戦士(UFF)というのがあるそう。また、UVF(アルスター義勇軍)はプロテスタント系のテロ組織。
ちなみにIRAの政治部門(?) が、シン・フェイン党。IRAの内部治安部隊がFRU。
フェニアン(フィアナ騎士団)というのが、カソリック教徒に対する蔑称(11ページ)
プロテスタントはプロディ(カソリックサイドから見た蔑称です)とルビが振られていたりしますし、単にプロディと書かれていたりします。

主人公であるショーン・ダフィは、王立アルスター警察隊(RUC)巡査部長で、カトリック。
大学も出ているある種変わり種。
舞台は北アイルランドですから、イギリス支配下で、すなわちプロテスタントの領域。RUCの組織もほとんどがプロテスタントの人で占められていたはずで、ダフィの置かれた状況の困難さを想像しながら読み進めます。
このダフィの性格設定が本書の、そしてシリーズの最大のポイントなのだと思います。
「IRAはベルファストのどこかに、”IRAは知恵がまわり、UDAは酒がまわる” という落書きをしていて、俺はそれを見るたびに内心ほくそえんでいた」(174ページ)
というくらいには頑迷で、
「俺たちはプロディ流に食前の祈りを捧げた。」(204ページ)
という箇所では、きちんと相手に合わせているくせに”プロディ”を使っていたりします。

捜査もカソリック住民が多い地域、プロテスタント住民が多い地域でやりにくくもなり、やりやすくもある、というところが緊迫感を高めます。

事件は、同性愛者を狙ったとおぼしき連続殺人と、ハンスト中のIRAメンバーの元妻の失踪事件。
ダフィが、全体の方針とは違う方向に捜査を進めていく、というのは警察小説のある意味王道ではあるのですが、当時の北アイルランド情勢を絡めながら、どうもやみくもに戦線を拡げているように思われるところ、一転してラスト間際で大きな転換点を迎えるところが、ミステリ的には見どころなのだと思いました。

こういう展開は現実世界ではよくあるのでは? とも思いますし、ミステリの世界でも物語の序盤あるいは遅くとも中盤でこういう展開になり、その後主人公たちが苦闘する、という流れとなるのはあるのですが、この「コールド・コールド・グラウンド」のようにクライマックス近傍で展開して見せるのは珍しく、ちょっとびっくりしました。
同時に、こういう展開はアイルランドにふさわしいのかも、とも感じました。

その後の展開は衝撃的でした。難しいところへ挑んでいったな、と。
シリーズを続けて読んでいきたいと強く思いました。

今のところ
「サイレンズ・イン・ザ・ストリート」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「アイル・ビー・ゴーン」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「ガン・ストリート・ガール」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「レイン・ドッグズ」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「ポリス・アット・ザ・ステーション」 (ハヤカワ・ミステリ文庫 )
まで翻訳されています。

しかしまあ、勤務時間中に普通にお酒を飲む時代だったのですね......
(人種的に日本人よりもアルコールに強い人たちではありますが)

最後に翻訳について2点。
1点目。登場人物たちの返事がすべて「あい」。
aye という語の訳のようですが、最後まで違和感をぬぐえませんでしたね......
2点目は巻頭に掲げられている、タイトルの由来となったトム・ウェイツの歌詞。訳されていません。原語のまま。
どちらも訳者があえてそうされているのだとは思いますが、馴染めませんね。


<蛇足1>
「お定まりのビニール袋を探した。六ペンス硬貨が三十枚、もしくは五十ペンス硬貨が三十枚入った袋を。けれど見つからなかった。タレコミ屋の処刑現場には銀貨三十枚が残されていることが多いが、必ずというわけではない。
 これが汚い金を受け取った手だ。そしてこれが、ユダが得た裏切りの対価だ。」(29ぺージ)
こういうのがあるのですね。

<蛇足2>
「できん! うちは今、聖歌隊の少年のケツの穴よりきつきつなんだ」(33ページ)
コンプライアンス的にどうかという警部の発言ですが、こういうのが一般的に使われていた表現なのでしょうか?
警部がカトリック系であることも、いろいろと考えさせられます。

<蛇足3>
「あれは一九七四年、五月二日。── 略 ── 俺は大学の下宿から二十メートルばかりの距離にあるオーモー・ロードのバー、〈ローズ&クラウン〉のまえを歩いていた。」(42ページ)
〈ローズ&クラウン〉というパブ、日本でチェーン店でありますね。

<蛇足4>
「聖書のなかで、バト・シェバが自分の髪を梳いてダビデ王の気をひいたように。何か裏があるにちげえねえです。」(100ページ)
クラビー巡査刑事のセリフで、大学を出たという設定になってはいますが、こういうのがさらっと出てくるくらいに聖書は読み込まれているということなのでしょう。なんだかすごいです。

<蛇足5>
「俺はふたりをハイ・ストリートの〈ゴールデン・フォーチュン〉に連れていき、スパイスのきいていない典型的なアイルランド風中華チップスと麺と豚バラを食べた。」(102ページ)
アイルランド風中華チップスって、なんでしょうね? 気になりました。
えびせんべい(龍蝦片)のことかな? でもそれだとアイルランド風とは言えないですね......

<蛇足6>
「被害妄想だな」と一蹴したが、すぐに考え直した。「ウィリアム・バロウズが言うには、被害妄想患者というものは、実際に何が起きているかを理解している人間のことだがね。」
「ビリー・バロウズ? あのフィッシュ・アンド・チップス店の店長がそんなことを?」(183ページ)
「裸のランチ」 (河出文庫)などで知られる作家が、フィッシュ・アンド・チップス屋さんと間違えられるとは(笑)。

<蛇足7>
「ある朝、ストラスブールの欧州人権裁判所で、ジェフリー・ダジョンという同性愛者対イギリスの裁判において、イギリス政府に不利な判決が出たことが新聞で報じられた。判事らは十五対四で、北アイルランドの同性愛行為禁止法は欧州人権条約に違反していると判断した。イギリス法務長官はこれを受け、北アイルランドの法律は変わらなければならないだろうと発言した。成人間の合意にもとづく同性愛行為は合法化されるべきである、と。」(471ページ)
わずか40年ほど前まで違法だったのですね。
ネットでみたところ「英国の性犯罪法は1967年にイングランドとウェールズで、21歳以上の男性同士の同性愛行為を合法化した。 しかしスコットランドでは1980年、北アイルランドでは1982年になるまで、同性愛は違法だった。」ということらしいです。



原題:The Cold Cold Ground
著者:Adrian McKinty
刊行:2012年 
訳者:武藤陽生



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私立探偵 [海外の作家 あ行]


私立探偵 (講談社文庫)

私立探偵 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/09/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
娼婦ライラのベッドで、ブリーム神父が腹上死した!“やもめで片目でアル中気味”の私立探偵ラルフ・ポティートは、階上に住むライラの頼みを断れず、神父の死体を教会に運ぶのを手伝う。その直後、彼女の部屋が突然ガス爆発。本人は大火傷を負う。事件に巻きこまれたポティートは、教会と神父の謎を追う。


2023年9月に読んだ4作目の本です。
ローレン・D・エスルマン「私立探偵」 (講談社文庫)
どこから引っ張り出してきたんだ、と言われそうなほど長らく積読していた本です。
奥付を見ると1996年7月の第2刷。同年6月初刷ですからすぐに増刷がかかったのですね。

ローレン・D・エスルマンといえば、ローレンス・ブロックの「殺し屋 最後の仕事」 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)(感想ページはこちら)に名前が出てきておやっと思いましたね。

さておき、「私立探偵」とはなんともそっけないタイトル。
原題が "Peeper"
解説で木村仁良が書いているように、直訳するとのぞき屋で、私立探偵の卑称です。
なので、原題通りといえば原題通り。でも「私立探偵」というのと「のぞき屋」というのではまったく印象が違いますよね。なにか工夫がほしかったかな。

飲んだくれ、というのはハードボイルドに出てくる私立探偵にはよくある属性ですが、探偵役であるラルフ・ポティートは開巻早々二日酔いを電話で起こされ、階下の売春婦から腹上死した神父の死体隠ぺいを手伝ってほしいと頼まれるという、まあ、卑称にふさわしい登場ぶり。
彼の設定は、まさしく Peeper です。

その点で到底感情移入できませんので、読者はまさしくカメラアイのごとくにラルフの目を通して事件を見守ることになります。
これ、ひょっとして作者の技巧だったのでしょうか?

その後も狂騒が続いて、あまりハードボイルドらしくない展開。
被害者(殺人かどうかもわからないのですが)が神父なだけに教会が絡み、あやしげな教会の使者が出てきて(巻頭にある登場人物表は見ないほうがよいですね)、(だいぶ先まで話を明かしてしまいますが)政府機関とのつながりまで......

ハードボイルドらしくない展開ながら、ハードボイルド風のストーリーに収斂していくところがポイントなのだと思いました。
探偵が卑しき街を行くのではなく、卑しい探偵が街を行くのではありますが。
ミステリとしてみた場合には、ハードボイルド風のストーリーにしたことが長所でもあり、短所でもあり。

ハードボイルドをお好きな方の感想を聞いてみたいです。




<蛇足1>
「亡くなったご亭主のことやピクルズのすごい効能について熱弁をふるいながらな」(72ぺージ)
ピクルス、というほうが一般的ですね。英語の発音的にはピクルズの方が近いと思いますが。

<蛇足2>
「あんた、本当に私立探偵なの? あのスペンサーのような?」
「スペンサーは実在の人物じゃない」(164ページ)
「デイン家の連中には淫蕩な血が流れているんじゃなかろうか? そう、”デイン家の呪い”だ。」(194ページ)
「デイン家の呪い」(ハヤカワミステリ文庫)のタイトルを出すために、登場人物の名前をデインにしたのでしょうか?(笑)

<蛇足3>
「《キャリー》だ。そういえば、スティーブン・キングのホラー小説のタイトルはCで始まることが多いことにいまはじめて気づいた。」(336ページ)
あれ? そうかな、と思いましたが、本書が刊行された1989年当時では、
「キャリー」 (新潮文庫)
「クージョ」 (新潮文庫)
「クリスティーン」〈上巻〉〈下巻〉 (新潮文庫)
の3作でしょうか。
同時期だと、
「呪われた町」 上 下 (文春文庫)(Salem's Lot)
「シャイニング」 (上) (下) (文春文庫)
「ザ・スタンド」 1 2 3 4 5 (文春文庫)
と S も同じだけ出ていますが、”The” の捉え方が微妙ですね。


原題:Peeper
著者:Loren D. Estleman
刊行:1989年 
訳者:宇野輝雄



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クロフツ短編集 1 [海外の作家 F・W・クロフツ]


クロフツ短編集 1 (創元推理文庫)

クロフツ短編集 1 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2023/09/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
英国本格派の雄クロフツが満を持して発表した、アリバイ破りの名手フレンチ警部のめざましい業績を綴る21の短編を収めた作品集。「いずれも殺人事件であって、しかも、犯人は必ずまちがいをして、そのためにつかまっている。そのまちがいに、読者が事前に気がつけば読者の勝ち、気がつかなかったら、筆者の勝ちというわけである」(まえがきより)と、読者に挑戦状を叩きつける。


2023年9月に読んだ3作目の本です。
「クロフツ短編集 1」 (創元推理文庫)
創元推理文庫2019年の復刊フェアの1冊で、「クロフツ短編集 2」 (創元推理文庫)と同時に復刊されました。

床板上の殺人
上げ潮
自署
シャンピニオン・パイ
スーツケース
薬壜
写真
ウォータールー、八時十二分発
冷たい急流
人道橋
四時のお茶
新式セメント
最上階
フロントガラスこわし
山上の岩棚
かくれた目撃者
ブーメラン
アスピリン
ビング兄弟
かもめ岩
無人塔

ざっと300ページほどの本に上記21編が収録されています。21編! 1編の長さは20ページに満たないものばかり。
巻頭辞によればすべて「イブニング・スタンダード」に掲載されたものということで、読者との勝負を意識していたよう。

いずれも倒叙形式で語られていて、前半が犯人の視点で犯行を、後半はその事件の犯人をクロフツ警部(あるいは作品によっては警視)が突き止める、追いつめる、という話になっています。
読んでみるとなんだかクイズみたい。味気ないなぁ、これは、これは好みに合わないな、と思っていました。

たしか鮎川哲也だったかと思うのですが、倒叙ミステリの犯行露見、犯人発覚についての手がかり、ポイントは、偶然や不可抗力によるものではなく、完璧にやってのけたと思われるところが思わぬ犯人のミス、というのがよい(望ましい、だったかもしれません)と言っていて、なるほど、と思ったことがあります。
この「クロフツ短編集 1」に収められた21編の手がかりについては、この要件を満たすものもあり、満たさないものもあり、さまざまなバリエーションが提示されます。
その意味では、このバリエーションを素直に楽しめばよいのですが、どうしても単調ですし、各編が短いのでそっけなく、パズルみたい、という感想になってしまったわけです。

ところが、です。
21編もあるからか、読み進んでいくうちに、この短編集のリズムにこちらが合ってきたのでしょうか、読むのが楽しくなっていったのです。
たしかに、一つ一つは大したことない(と言っては失礼ながら)ですし、犯人発覚の決め手となっているポイントもそれは決定打にはなっていないのでは?と思えるものもありますが、それでもこの短編集を読むのが楽しいと感じました。
ダメな点も含めて、読むのが楽しい、と思えたのです。
不思議。

ポイントとなる点以外でも、割とアラはあるんですよ。
(たとえば「かくれた目撃者」で、死体は見つかったのでしょうか?? 気になっています(笑))
でも、楽しい。
理由はよくわからないのですが、楽しい。本当に不思議です。
「クロフツ短編集 2」を読むのが以前より楽しみになってきました。




<蛇足1>
「彼はきわめてドライな性格な男で、彼にとっては殺人行為でさえ、十分な準備と冷静な態度で実行する、ひとつの企業にすぎなかったのだ。」(82ページ)
企業? ”事業” でも違和感がありますが、あえていうなら "事業" でしょうね、ここは。
あるいは本書刊行当時(奥付をみると初版は1965年12月)は、企業という語についてこういう使い方をしたんでしょうか?

<蛇足2>
「殺人を行おうとするほどの者は、その選ぶ手段についてはできるだけの知識をえておくことが必要であって、これは常識なのである。」(126ページ)
常識......こういうケースではあまり使わない用法ですね.....殺人者にとっての常識......
そもそも殺人という行為自体が、”常識”. という語が使われるほど一般的ではないはず(笑)。

<蛇足3>
「ロンドンにいったときに、彼の車につけるために、ちがった番号のついた新しいナンバー・プレートを買ってきた。」(158ページ)
イギリスの制度はわからないのですが(車を購入した際も中古の状態で買いましたので、ナンバー取得の部分にはまったく関与しませんでした)、ナンバー・プレートって簡単に買えるものなのでしょうか?
また変えたとしても、簡単に足がつくような気がします。
ちなみにイギリスでは車のナンバー・プレートは、車の前後で色が異なります。前側が白で、後は黄色のプレートがついています。

<蛇足4>
「資格のある看護婦を求む。アンギーナを病む老人の看護と、そのコッツウォルズの小さな家の管理をしていただきたし。」(256ページ)
アンギーナがわからなくて調べたのですが、狭心症と急性扁桃炎の二通りが出てきて迷ってしまいました。
作品での使われ方からすると狭心症のようでしたが......


原題:Many A Slip
作者:Freeman Wills Crofts
刊行:1955年
訳者:向後英一







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