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The Gifted EP1 [The Gifted [タイ・ドラマ]]

タイのドラマ「The Gifted」の感想です。



2gether」(感想ページへのリンクはこちら)から、タイのドラマをボーイズラブもの中心に観てきました。
放映とリアルタイム、あるいはリアルタイムに近い感じで観たものを除くと、感想を観た順に書いてきました。
この順に従うとまだまだ感想を書くのは先になるドラマなのですが、シーズン2の放送が始まっていることから、この「The Gifted」の感想をこれより先に観た他のドラマより早く書くことにします。シーズン2の予習も兼ねて、「The Gifted」を見返しております。

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2018年8月から11月にかけて、もうすっかりお馴染みになった GMM One で放映されたようです。
(これまたいつものように、MyDramaListの情報です。)
YouTube に、GMM TV によりアップされています。
EP1 から EP13 まで、各エピソード50分くらいです。
YouTube では、各エピソード4分割されていまして、合計52本ですね。すべて日本語の字幕がついています。
YouTube ↑ のリンクは、GMM TVのThe Gifted のリストのページですので、順を追って御覧いただけます。画面右下のセッティングのところから字幕を選択してぜひ、ぜひ御覧ください。

最初に書いてしまうと、このドラマ、いままで観たタイ・ドラマのなかでベスト1 です。
これがいちばんおもしろかった。
ちなみに、ボーイズラブではありません。
予告編を観てもらうとわかりますが、学園ものです。
しかも、サスペンス調! 



学生の選抜・選別が厳しい学校に、なかでも特別なクラス "The Gifted" があって、そこになぜか最下級クラスから選ばれた落ちこぼれ生徒が入ることになり、"The Gifted" に潜む謎を探っていく。
というストーリーになっています。
"The Gifted" すなわち 天賦の才あるもの、ということですから、特等生。
"The Gifted" にはどんな秘密が隠されているのか?

オープニングの音楽も不安をかきたてるような感じになっています。




今日はEP1 を詳しく紹介します。

オープニングは、主人公パン(Pang。上の告知の最上段左端)の独白、いや、語り掛けですね。
「どうして勉強を頑張らないといけないのか考えたことはある?
先生が理解してくれないと感じたことはある?
望んでもいない学校のバカげた制度に不満を持ったことはある?
どうして学校が才能のある生徒に熱心なのか不思議に思ったことは?
僕らの苦しみも知らないのに…
いつまで我慢すればいいんだろう
これは僕たちの学校の話、リッター ウィッタヤーコム(Ritdha Wittayakom)と言う学校のあるクラス…
THE GIFTED」

場面かわって、いかにも落ちこぼれ然としたパンの活動ぶりと、リッター ウィッタヤーコムにおける階級制度が知らされます。
すべてにおいて差別待遇が制度として整えられているのは、怒りを通り越して笑えるくらいですが、当事者だと堪らないでしょうね。
8クラス(最下位クラス)のパンには、1クラス(最上位クラス)の友人ナック(Nac。告知には出てきませんね。下の画像の左側です)がいます。
ナックは、クラスの違いにも関わらず親切です。1クラスの特権を活かして、寮の相部屋パートナーとしてパンを選んでくれるくらい。

[Eng Sub] THE GIFTED นักเรียนพลังกิฟต์ _ EP_1 [2_4]_Moment.jpg

1クラスの数学とコンピューターの天才ウェーブ(Wave。上の告知で最上段左から二人目。パンの隣)とパンが衝突したときも、ナックはパンをかばいます。ウェーブと言い合いになったナックは、次のクラス選別テストで、パンとともに最上位となる The Gifted に入ってやると見栄を切ってしまいます。
パンに勉強を教えてやるつもりだったナックは、あまりの出来の悪さに教えることはあきらめ、試験問題を盗み出すことに。危機一髪盗むことに成功したけれど、問題は The Gifted 選抜試験にしては易しいもの。ナックはカンニングペーパーを作ってパンに渡します。
そして迎えた試験当日。
マークシート式の試験を解き進めている途中にハウリングのような音が響き、耳を抑えるパンたち。
そして「最終問題は自由記述形式です」というアナウンスが。続いて答えを解答用紙の裏面に記入するよう促される。

結果発表されると、なんと、パンは The Gifted に。ナックは残念ながら選ばれず。
ナックはパンに対しては気丈に、気にするな、 The Gifted でやることを教えてくれと言ってくれる。
訪れた The Gifted には、パンを含めて10人の生徒が。その中には当然のようにウェーブも。

[Eng Sub] THE GIFTED นักเรียนพลังกิฟต์ _ EP_1 [3_4]_Moment.jpg

The Gifted の ポム(Pom)先生(上の告知の最下段左端)から、
プログラムは補足的なクラスで、通常のクラスのあと、The Gifted のプログラムに参加することになる、
ここで どんな状況で 何をしているかを他の人に言うことは厳禁というルールを告げられます。
また、最も優秀な生徒たちであり、特別な潜在能力を秘めている、と言われ、1週間で自分の潜在能力がなにかを見つけるように、と。

ところが、パンには、自分の潜在能力がさっぱりわからない。
選抜の結果が間違っているのでは、とPom 先生に相談しても、課題に集中するようにと言われるだけ。
魔法や霊能力を学んでいるような気がすると、ナックに告げても理解してもらえず、隠している、嘘をつくな、失望したと非難される。
The Gifted の図書室でのトラブルのあと、そこでもThe Gifted の特権ぶりを見せつけられつつ、パンはナックと決定的な仲たがいをしてしまいます。

The Gifted のクラスで「The Gifted の特権はすごくて、ありがたいけれど、大切なものを失いたくない。もう The Gifted にはいたくない」とパンがポム先生に訴えたところに、ウェーブがやってきて、
ぼくたちはもう戻れない。ぼくたちは普通じゃなくなった、という。
そして ポム先生に「ぼくたちに何をしたんですか?」と問う。するとポム先生は謎の笑みを浮かべる。

ここまでがEP1 です。
長々と書いてしまいましたが、ここまでに大量に伏線が張り巡らされています。
どんどん面白くなっていくので、おすすめです。
若い人向けということもあってか、甘いところもあちこちにありますが、ミステリファンにも楽しんでいただける作品だと思います。
ぜひ、ぜひ。



タグ:The Gifted
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ホワイトコテージの殺人 [海外の作家 あ行]


ホワイトコテージの殺人 (創元推理文庫)

ホワイトコテージの殺人 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/06/29
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
1920年代初頭の秋の夕方。ケント州の小さな村をドライブしていたジェリーは、美しい娘に出会った。彼女は住居の〈白亜荘(ホワイトコテージ)〉まで送ったとき、メイドが駆け寄ってくる。「殺人よ!」ジェリーは、スコットランドヤードの敏腕警部である父親のW・Tと捜査をするが……。英国本格の巨匠の初長編ミステリにして、本邦初訳作、ユーモア・推理・結末の意外性――そのすべてが第一級!


マージェリー・アリンガムの作品は、「屍衣の流行」(世界探偵小説全集 (40))を読んでいますが、まったく覚えていません......

あらすじからかなり典型的なお屋敷もののように思えるのですが、読んでみるとあれこれ型破りです。
1) 偶然行き当たったジェリーが父親(スコットランドヤードの警部)を捜査に引き込む。
2) お屋敷に人が集まって、そこで連続殺人、という展開にならない。
3) 警部が捜査に息子を連れまわす。
4) 怪しい人物を追うためとはいえ、早々に海外(パリ)まで行ってしまう。(93ページ)
5) しかも、その足で、南海岸のマントン(コートダジュール)まで!(155ページ)
6) そのくせ手がかりを見つけたとロンドンに急いで戻ったのに、警部は捜査を途中で投げ出してしまう。(256ページ)
そのあと話は飛んで真相が明かされるのですが、これまたびっくり。
手がかりなく、いきなりの真相ですから。
森英俊が解説で「とりわけ残念なのは、W・Tが真相に思い当たるうえでの最終的な決め手となるべきものの内容が読者に事前に知らされていない点で、これではアンフェアのそしりを免れない(犯人の正体に直結するので、やむをえないとはいえ)。」と書いている通りです。

とはいえ、ミステリ的にはやはりその真相がポイントでしょうねぇ。
この作品、あれ(ネタバレになるので書名は書きませんが、Amazonへのリンクをはっています。ネタバレを気にしない方はご確認ください)よりも発表年が早いですね。
問題は後か先かではなく出来栄えがどうかだと思うので、発表年が早いから何だということはありませんが。

ミステリ的にはがっかりな点もありましたが、発想とか物語の進み方は楽しめましたので、またアリンガムの他の作品も読んでみたいですね。
特に、「葬儀屋の次の仕事」 (論創海外ミステリ)はタイトルがとても気になっています。


原題:The White Cottage Mystery
著者:Margery Allingham
刊行:1928年
訳者:猪俣美江子







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雪と毒杯 [海外の作家 は行]


雪と毒杯 (創元推理文庫)

雪と毒杯 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/09/29
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
クリスマス直前のウィーンで、オペラの歌姫の最期を看取った人々。帰途にチャーター機が悪天候で北チロルの雪山に不時着してしまう。彼ら八人がたどり着いたのは、雪で外部と隔絶された小さな村のホテル。歌姫の遺産をめぐり緊張が増すなか、弁護士によって衝撃的な遺言書が読みあげられる。そしてついに事件が――。修道士カドフェル・シリーズの巨匠による、本邦初訳の傑作本格。


「2018本格ミステリ・ベスト10」第2位です。
エリス・ピーターズの作品の感想をブログで書くのは初めてですね。
「聖女の遺骨求む」 (光文社文庫) から始まる修道士カドフェルシリーズは、ブログを始める前に全作読んでいます。

この「雪と毒杯」 (創元推理文庫)あらすじからはいわゆる「嵐の山荘」もののように思えますが、微妙に枠を外れているように思えます。
とはいえ、ほとんど限定された登場人物のみで成立していますので、「嵐の山荘」ものと見做してよいのかもしれません。
三橋曉の解説でも ”クローズドサークル” として扱われています。

途中まで普通の、よくある、パターン通りの本格ミステリだなぁ、と思いつつ読んでいました。
死んだ歌姫ミランダと彼女の親族、親しかった人物、ほぼそれだけで物語が進んでいくからです。
そして不時着の末たどり着いたホテルで、ミランダの遺言書が明かされ、それをめぐって殺人が発生。遺贈人が殺されてしまいます。
名探偵、という感じの人が登場せず、はっきりした探偵役が誰かわからないまま進むのですが、それでも、ミランダの姪の息子ローレンスと、ミランダの秘書スーザンがなんとなくいい感じっぽく描かれていて、ああ、この二人がメインキャラクターなんだな、と思っていたら、第六章(101ページ~)でびっくり。
被害者のグラスに指紋がみつかったローレンスが責め立てられていると、ローレンスの無実を証言してくれるはずのスーザンがあっさり裏切るような発言をするのです!
えーっ!? そういう展開?
ローレンスは激しく責め立てられ、幽閉されてしまいます。

面白い!
この段階ですっかり作者の術中にはまってしまったのでしょうね。
とても楽しく読めました。

スーザンがなぜローレンスを陥れるような証言をしたのか、は本人の口から明かされるのですが(162ページ)、正直、あまり説得力ない(笑)。
そんな理由で嵌められて、ローレンスがあまりにもかわいそう。
でもいいです。おもしろかったから。

そのあとスーザンが活躍し、ローレンスの疑いも無事晴れるのですが、しかしなぁ、ある意味スーザンの自作自演だからなあ(笑)。
それでもローレンスはすっかりスーザンに感謝するし、甘ちゃんだなぁ(238ページ)。
と、第三者からみたら、ある意味バカバカしいロマンスも盛り込まれていまして、満足です。

タイトルと各章のエピグラフはコメディタッチのオペラ「薔薇の騎士」からとられているとのことですが、ラブコメってことですね。

数の限られた、しかしかなり癖のある登場人物たち、変な遺言書と典型的な本格ミステリの枠組みにのった物語なので、それをどう展開してみせるか、あるいは、ひねってみせるか、というのが作者の腕の見せどころとなってくるわけですが、エリス・ピーターズ、堂々としていますね。
翌年「死と陽気な女」 (Hayakawa pocket mystery books)でエドガー賞を受賞したくらい好調だったということですね。

面白かったです。
またエリス・ピーターズの作品、読んでみたいですね。


<蛇足1>
「やがて、一本の長い腕がガラス戸を押し開くのが見えたかと思うと、星空の下に踏み出したマクヒューがごく静かに、そろそろと背後の窓を閉めた。掛け金が音もなく金具の中にすべり込む。」(187ページ)
閉めるだけで掛け金がかかってしまうのでしょうか? 情景がわかりませんでした。

<蛇足2>
「彼女が目覚めたらすぐに合わせると約束するが、」(239ページ)
合わせるではなく、会わせるですね。
よくやってしまいがちな変換ミスですが、こういう出版物でもやっちゃうんですね。



原題:The Will and The Deed
著者:Ellis Peters
刊行:1960年
訳者:猪俣美江子






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死のチェックメイト [海外の作家 E・C・R・ロラック]

死のチェックメイト (海外ミステリGem Collection)

死のチェックメイト (海外ミステリGem Collection)

  • 出版社/メーカー: 長崎出版
  • 発売日: 2007/01/11
  • メディア: 単行本

<帯あらすじ>
英国本格派ロラックが奏でる〈謎解き〉ミステリ
灯火管制が敷かれている大戦下のロンドン。守銭奴と噂される老人に死が訪れる。自殺か他殺か、怨恨か強奪か―マクドナルド警部たちの丹念な捜査に導かれる、真相とは。


単行本です。
この作品から9月に読んだ本の感想です。
「悪魔と警視庁」 (創元推理文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「鐘楼の蝙蝠」(創元推理文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「曲がり角の死体 」(創元推理文庫)(感想ページへのリンクはこちら
と読んできたE・C・R・ロラックの作品です。

実はこの作品、Amazon で検索するとき、間違えて日本の Amazon ではなく、イギリスの Amazon で検索してしまったんです。
検索ボタンを押してから気づきましたが、もう遅し。日本語で入力しましたし、出てこないだろうな。そう思っていたら、なんと出てきました。
日本の古書店さんが海外の Amazon にも出品されているのですね。
通常だと古本は買わないのですが、ちょっと興味深かったので購入してみました。
わざわざ日本から運ばれてきました! とてもきれいな本でしたね。

さておき、内容です。
戦時中の灯火管制下のロンドンで起こった殺人事件を扱っています。
画家のアトリエで、ポーズをとる役者、絵を描く画家。
アトリエの反対側では、二人の男がチェスで対決中。アトリエの隣の台所では画家の姉が料理を作っていた。
そこへ特別警察官が若い兵隊を、隣家で起きた殺人の犯人だとして逮捕したと連れてきた。応援を要請する間兵隊を閉じ込めておいてほしい、と。
(知らなかったのですが、非常時などに、任務につくボランティアの警察官、と特別警察官に説明が付されています。そういう制度があったんですね、イギリスには。)
マクドナルド警部の丁寧な捜査が描かれていきます。
これだけ、です。

地味といえば地味なのですが、退屈はまったくしませんでした。
それぞれの登場人物のキャラクターがしっかり際立っているからだと思います。

難点は、この犯行は無理じゃないかなぁ、と思える点。
そういうことが起こりえることは認めますし、実は似たような経験は何度もしています。みなさんも似た経験はあるのでは、と思います。
しかし、犯人の側に立ってみると、その可能性に賭けた犯行というのはちょっと立てづらいと思います。だって、ほんの一瞬でおじゃんになってしまうんですよ、犯行計画が。
もちろん、そのことは作者も十分承知の上。
「ああいう特殊な状況下では、十分可能だったということがこれでおわかりですね。」(252ページ)
とマクドナルド警部に言わせていますが、無理だなぁ、という印象はぬぐえませんでした。

とはいえ、ミステリとしてはこの程度の無理は十分許容範囲かと思われます。
本格ミステリとしてすっきりしたいい作品だと思いました。

E・C・R・ロラックの作品、また訳してもらいたいです!


<蛇足1>
「近ごろの腕時計がどんなものかご存知でしょう。買ってきて半年以内では修理に出せませんし、新しいのを買うわけにもいきません。」(79ページ)
意味がわかりませんでした。
買って半年以内だと修理に出せない? 当時イギリスにはそういう制限があったのでしょうか?

<蛇足2>
「リーヴズ警部補はフォリナー事件がらみで細々とした仕事をごっそり与えられ、彼を犯罪捜査部の貴重な一員たらしめている熱意をもってその任に当たった。」(110ページ)
なんとも言い難い表現で、思わず笑ってしまいました。
もうちょっとまともな日本語に訳せなかったものか??

<蛇足3>
「文学的スタイルを好むゆえにマイケル・イネスを読み、博学さを賞賛するがゆえにドロシー・セイヤーズを読むのかい?」(180ページ)
マイケル・イネスとドロシー・セイヤーズが当時本国イギリスでどう受け止められていたのか端的に示すセリフですね。

<蛇足4>
勘の良い方だとネタバレになってしまうので、以下は飛ばしてください。
「ぼくらがカモだったことは認めてるんですよ--ただのぼんくらのカモです。信用詐欺にしてやられたわけです。」(248ページ)
原語がどうなっているかわからないのでなんともいえませんが、この状況は「信用詐欺」ではないと思います。


原題:Checkmate to Murder
作者:E.C.R. Lorac
刊行:1944年
翻訳:中島あすか




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いもうと [日本の作家 赤川次郎]

いもうと

いもうと

  • 作者: 次郎, 赤川
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

<カバー裏側帯あらすじ>
北尾実加、27歳。公私ともに超多忙!
大好きな姉に続いて母も亡くし、父は別の家庭へ。
それでも強く歩んできた実加が直面する、危険な恋、会社の一大プロジェクト、そして初めて会う〈妹〉。
懐かしい声が、悩み多き実加に語りかける――大切な毎日に気づかせてくれる愛しい物語。


単行本です。
「永遠の名作『ふたり』 あのラストから11年後を描く感動の続編!」
と帯に書かれています。
「ふたり」 (新潮文庫)が最初に出版されたのが1989年。この「いもうと」(新潮社)が出たのが2019年ですから、実に30年ぶりの続編です。

さすがに30年も前の作品ですと、内容を覚えていない......
覚えていなくても「いもうと」の世界に入り込むのに支障は全くありません。

「ふたり」から11年後という設定もよかったのでしょう。
当然影響は残っているものの、11年経てばある程度過去の話に昇華されていますから、直接的に「ふたり」のエピソードに触れる必要がなくなっていると思われます。

主人公である実加に、よくもまあ、というくらい次から次へと難題が降りかかってきます。
それに対し、けなげに、真摯に、しっかり取り組んでいく実加。
このパターンだと、杉原爽香シリーズを思い起こしたりしますが、杉原爽香のように嫌味にならず、自然に読めたのは、やはり実加の性格設定がよかったから、でしょうね。

面白く読みましたが、「ふたり」の続編でなければならない理由というのは思いつきませんでした。
この辺りを確認するためにも、「ふたり」を読み返さないといけませんね。

いつもながらの赤川次郎節を堪能できる作品です。



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魔術師を探せ! [海外の作家 か行]


魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/09/08
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
英仏帝国による統治が長く続き、科学的魔術が発達した世界。たぐいまれな推理力をもつ捜査官ダーシー卿と上級魔術師のショーンは、彼らでないと解決できない特殊な事件の捜査にあたっていた。隣国の工作員を追っていた国王直属エージェントが失踪した事件、棺の中から青く染められた死体が発見され、秘密結社の暗躍が疑われる事件――架空の欧州を舞台にした名作本格ミステリの新訳版。3篇収録の中篇集。


早川書房創立70周年のハヤカワ文庫補完計画で、2015年に新訳復刊された作品です。
魔術が普通に存在するパラレルワールドを舞台にした本格ミステリ。
「その眼は見た」
「シェルブールの呪い」
「青い死体」
の3編を収録した短編集です。

舞台設定については、解説で山口雅也が要領よくまとめておられますが、さらにはしょって紹介すると......
舞台となるのは、架空の英仏(アングロ・フレンチ)帝国--イングランド、フランス、スコットランド、アイルランド、ニュー・イングランドおよびニュー・フランス帝国。
時代の設定は、作品発表当時の「現代」である一九六〇~七〇年代。
しかし、産業革命は起こっていないようで、照明は燭台かランプかガス灯、自動車も飛行機もなく、移動手段は馬車や汽車、電話もない模様で、代わりにテレソンなる詳細不明の遠隔通信の手段がある。
シャーロック・ホームズが活躍したヴィクトリア朝に世界の雰囲気は似ているが、科学の発達度合いはそれ以前といった有様。
ギャレットが描くパラレル世界の「現代」には、産業革命以降の科学技術に代わって、何と古(いにしえ)の《魔術》が科学的に理論体系づけられ、堂々と社会の中に根付いている。

作品においては、くどくどした説明はないのですが、探偵役である捜査官ダーシー卿と上級魔術師のショーンの捜査の過程において、魔術の効用、限界がきっちり伝わってくるので、本格ミステリとして謎を解こうとしたときに問題はありません。
また、魔術が出てくるからなんでもあり、という展開もきちんと封じられています。
すごいなぁ。
今でこそ、こういう架空世界を舞台にしたミステリは珍しくないですが、当時は斬新でしたでしょうね。

「その眼は見た」は、慎みがなかった伯爵、つまり猟色家だった伯爵が殺されるという事件です。
面白いのは、眼球検査(アイ・テスト)をすることでしょう。
「死の間際--とりわけ激烈な死の間際に、たまに生じる心霊現象を調べるものでして。激情のストレスは、この意味がおわかりかどうかわかりませんが、ある種の逆流を心に引き起こす。その結果、死にゆく人間の心にあるイメージが網膜に反映される。しかるべき魔術を使うことによって、そのイメージを浮かびあがらせ、死者が最後に見たものを引き出すことができるというわけです」(72ページ)
と説されますが、これ、清水玲子の「秘密 トップ・シークレット」と相似形ではありませんか。
特に第一話(感想ページへのリンクはこちら)を思い出させました。

第二話「シェルブールの呪い」は、英仏帝国と敵対するポーランドの工作員が暗躍するシェルブールで、侯爵が姿を消した事件を追います。
侯爵の側近であったシーガー卿が印象に残りました。

最後の「青い死体」は、時代がかった登場人物たちの言動が趣深いですが、ミステリ的には、魔術そのものではなく、魔術が存在するという事実がうまく物語に組み込まれているな、と思いました。

いずれの話も、魔術が存在する世界で、魔術を使えないダーシー卿が、それぞれの家族に救いをもたらすことになっており、そこが意外とポイントなのじゃないかなという気がしました。

ずっと読んでみたかった作品なので読めて幸せです。
解説にもありますが、長編「魔術師が多すぎる」(ハヤカワ・ミステリ文庫)復刊と、本書に続く第二集を期待します。
よろしくお願いします、早川書房さん。



<蛇足1>
「受割礼日--一月一日--の前夜祭のときは、街路がひとの海になったが」(96ページ)
受割礼日? なんじゃそりゃ? と思って調べてしまいました。
「イエス様が誕生から8日目に旧約の律法にしたがって割礼を受け、天使から示されたとおり「イエス」と名付けられたという聖書の記述(ルカ2:21)に基づき、1月1日を「受割礼日」という名称で古くから守ってきました。」(市川聖マリア教会さんのHPから。例によって勝手リンクです、すみません)
イエス・キリストはユダヤ人ですから、割礼しているんですね。
そしてそれが記念日になっている...... ちょっとすごいな、と思ってしまいました。


<蛇足2>
「南へのびる河岸道路(ケとルビが振ってあります)、サント・マリに入った。」(99ページ)
「サント・マリ海岸道路を、ひとりの男がやってくる。」(100ページ)
わずか数行の間で、河岸道路、海岸道路が入り乱れています。
校正をすり抜けたミスですね。
さて、どちらが正しいのでしょうね?

<蛇足3>
「わたしが戸締りをしたのは八時半でございます、卿。まだ外は明るかったですね。」(249ページ)
5月18日のことです。
たしかにイギリスの夏は日が長いですが、5月後半の段階で8時半はまだ明るいだろうか? と思ってしまいました。
舞台となっているカンタベリーの日没を調べると(カンタベリー大聖堂の地点で調べました)、
          日の出    日の入    日長
2020年05月01日 05:26:02 AM 08:19:17 PM 14h 53m 15s
2020年06月01日 04:44:20 AM 09:02:59 PM 16h 18m 39s
となっていまして、8時半だとまだ明るいのも納得です。
そうか...10月に入ってかなり日が短くなってきたので忘れてしまっていました。
(ただし、イギリスは夏時間を採用していますので、午後八時半といっても通常だと7時半です)


<蛇足4>
第一話「その眼は見た」の原題「The Eyes Have It」を見て、ちょっと笑ってしまいました。
イギリスの議会で採決されたあと、賛成多数の場合「The “ayes” have it」と議長が宣言するのを思い出したからです。
ブレグジットをめぐる議会でのやり取りの中ですっかりお馴染みになってしまいました。
ちなみに、反対多数の場合は「The “noes” have it」


原題:The Eyes Have It
作者:Randall Garett
刊行:1964, 1965年
翻訳:公手成幸






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He is coming to me その2 [タイ・ドラマ]

タイのボーイズラブ・ドラマ「He is coming to me」の感想の続きです。

昨日貼ったのとは別にもう1バージョン告知はありまして、それがこちら。

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ちょっとかっこいいですね。
このバージョンで、Thun(タン)が抱きついているのはお母さん。下でも触れますが、カミングアウトのシーンですね。
演じているのは Sine Jaroenpura という女優さんで、ベテランのようですね。結構難しい役じゃないかな、と思いました。
こちらでも Plai(プライ)はかわいいですねぇ。


冒頭は Mes(メース)の死ぬシーン。苦しそうです。心臓が弱かったという設定になっています。
切り替わって......Mes(メース)は転生できずにこの世に幽霊としてとどまっている状態。
転生できないのは次の3つの場合。
1. 天命を全うしていない
2. 誰も弔う人がいない
3. 死んだ理由がわからない
無縁墓みたいになって荒れている Mes(メース)の墓のところへ Thun(タン)がやってきて供え物をする。
誰も来てくれなくて退屈しきっていた Mes(メース)にとって Thun(タン)は希望だったわけですね。
しかも、どうも Thun(タン)には Mes(メース)のことが見えていて、言っていることも聞こえているようだ......
Mes(メース)は Thun(タン)が来るのを毎年待ち焦がれるようになる。
2008年から2011年まで続けて来ていたのが、その後来なくなり、2014年成長した Thun(タン)がやってきて再会。
ところが2018年になって、もうお墓に来れなくなると Thun(タン)が告げ、お別れかと思われたのだが、その後考えた Thun(タン)は、Mes(メース)を自分の家に連れていくことにする!!
そして Thun(タン)の能力から、Mes(メース)が死んだのはMes(メース)が自分で考えていたような心臓発作ではなかったことが示される......

ここまでがテンポよくエピソード1で語られます。
余談ですが Thun(タン)の幼少期を演じる子役がかわいいんですよ。
2014年分からはオームが演じています。
お墓の地所の外だと線香の焚かれている場所にしかいられない Mes(メース)をどうやって(安定して)連れ出すか、部屋にいさせるか、とか、細かいディテールが凝っています。そしてそれが将来の伏線にしっかりなっています。
また、幽霊なだけに、普通に触ったりできないのですが、あるとき、お父さんが死んでしまって泣きじゃくるThun(タン)を抱きしめることができてしまいます。さて、どういう条件なら人と触れ合うことができるのか......これも割と納得の解釈が示されます。

EP2からは、Thun(タン)と Mes(メース)の不思議な共同生活が始まります。
コメディタッチの部分があちこちにあって、とても楽しい。
誰もいないのに誰かと話をしているようなThun(タン)のことを心配する仲間たち。ひょっとして麻薬でもやっているんじゃないか、と疑いだすところも笑えます。
一方で、Mes(メース)は少しずつ過去を思い出していきます。Thun(タン)の大学が見覚えのある場所だったような......
Thun(タン)と Mes(メース)は、Mes(メース)が何者で、彼に何が起こったのか、を探り始めます。
ミステリー、というほどのものではないと思いますが、心臓発作だと思っていた死因が心臓発作ではなかった、というだけで何か事件的なものの匂いがしますよね。
(なのでこのあと、人間関係とかがわかってしまわないよう、ネタバレに注意して紹介します。)

同時に、Thun(タン)と Mes(メース)はお互い、相手に対する自分の気持ちが......
Mes(メース)は幽霊なので、人間のように触れないのに、要所要所で触れてしまうところが感動的に扱われています(最後のほうで、どういう場合に触れるのか、というのが説明されたとき、なるほどなー、と思えました)。

プロットがとてもよくできているなぁ、と思える作品で、丁寧にひかれたわかりやすい伏線とあいまって、とても楽しめます。
(ミステリ好きの悪い癖で、あげ足取り的な点はいくつか見つけてしまいましたが......)

印象的なシーンも数多くあって、挙げきれないくらい。
後半は、伏線回収も手伝って、そういうシーンが目白押しです。
マンションの屋上で、見えなくなった(見えにくくなった)Mes(メース)に Thun(タン)が思いのたけをぶつけるシーン(EP5)、
Thun(タン)と Mes(メース)が初めてキスするシーン(EP6)、
Prince(プリンス)が Plai(プライ)のことをめぐって Thun(タン)と対決しようとするシーン(EP6)、
Thun(タン)が母親にカミングアウトするシーン(EP6)、
Mes(メース)が Thun(タン)のところから姿を消すエピソード(EP6)、
Thun(タン)が Mes(メース)を探し当てるエピソード(EP7)
なんだかもう全体が印象的なシーン、といってもいいくらい。

そしていよいよ、Mes(メース)のことを Thun(タン)が Khem と Prince に打ち明け、協力を要請、Mes(メース)の死を解明(EP11~12)。
すっきりして(?)、なにげない毎日を楽しむ Mes(メース)と Thun(タン)。
これで転生する条件が整ったので、Mes(メース)のための清明節の祭儀を行って最後のお別れ......

そしてそのあと、ちょっとした(ちょっとどころではない?)サプライズが待っています。
ご都合主義といわれてもいいです。最後まで楽しく観せてくれました。

恒例となりつつありますが、タイ・ドラマでよく見かける俳優さんがたくさん出てきますので、気づいた範囲で。
2gether」のDim先輩役の俳優さんが、Plai(プライ)の恋人役、というか恋人志望の人役で出ています。
同じく「2gether」に出てくる、Tineの友人の一人も、双子の兄弟と一緒に、Thun(タン)のバスケットのチームメイトとして出てきます。

2gether」のSarawat の友人Boss 役=「SOTUS 」のアーティットの仲間役だった俳優は、「SOTUS S」 でアーティットの同僚役だった女優と一緒に、Mes(メース)の幽霊仲間として登場。
2gether」のPear役の女優さんが、生前のMes(メース)の恋人役。
見落としもあるのでしょうね......


最後にこのドラマの主題歌も素敵です。
それをSingto(シントー)が歌っているバージョンがYouTubeにアップされています。
歌詞には日本語字幕がなく、英語字幕しかありませんが、ドラマの内容に寄り添ったものになっているようです。


感想を書いていないものも含め、かなりタイ・ドラマを観ましたが、この「He is coming to me」はかなり上位に入る好きな作品です。TOP3に入れてもいいかも、です。


<蛇足1>
EP8で Thun(タン)と Mes(メース)が踊っているのって、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」ではないかと思うのですが......(昨日アップした2つ目の予告編でもちらっと出てきます)

<蛇足2>
日本語字幕:とな墓EP8(2_4)_Moment.jpg
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、 Thun(タン)の来ている服、おもしろいですよね。
左右で長さが違います。
服の着方でそう見えているだけなのか、そもそもデザインとして長さが違うのか......




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He is coming to me その1 [タイ・ドラマ]

タイのボーイズラブ・ドラマ「He is coming to me」の感想です。



いきなり予告編から貼りましたが、
タイのボーイズラブ・ドラマを
2gether」(感想ページへのリンクはこちら
Love by chance / ラブ・バイ・チャンス」(感想ページへのリンクはこちら
SOTUS 」(感想ページへのリンクはこちら
「Until We Meet Again ~運命の赤い糸~」(感想ページへのリンクはこちら
「REMINDERS」(感想ページへのリンクはこちら
「2 Wish」(感想ページへのリンクはこちら
「TharnType」(感想ページへのリンクはこちら
「SOTUS S」 (ブログの感想ページへのリンクはこちら
と観てきて(すでに十分観てきたような感じがしますが......)、さて、次は何を観ようかな、といろいろ考えた結果、
SOTUS」、「SOTUS S」 主演の Singto(シントー)が出てくる「He is coming to me」を観ることに。

この「He is coming to me」、日本語タイトルが「彼は清明節に僕の隣のお墓参りにやってきた」。
長いよ。英語と全然違うし、冴えないなーと思っていたのですが、英語タイトルもいろいろなパターンがあって、GMM TV が YouTube にアップしているこのドラマ関連の動画で、「He comes to Ching Ming next to my grave」という英語訳が使われていまして、これだと日本語タイトルのほぼそのまんまですね。
日本語タイトル、「とな墓」と略し称されているようです。
ぼくは英語字幕バージョンで見ましたが、日本語字幕を付けたものをDailymotionにアップされている方がいらっしゃいます。「とな墓」で検索すると出てきますね。
YouTubeにアップされている動画は公式ではなさそうですし、かつあまり画質もよくないです......

2019年2月末から4月末まで Line TV で放送されたようで、全8話。(例によって、MyDramaListからの情報です)

Wikipedia に日本語のページがあります。
そこからあらすじを引用します。
メース(プラチャヤー・レァーンロード)は20年以上前に死に、墓に埋葬されたが、誰も彼の墓を訪ねてくる者はいなかった。メースは幽霊として墓に住みつき、1年に1回だけ行われる清明節の間、自分の墓に座って誰かが訪ねてくるのを待っていた。ある日、父親と一緒にタン(Nattapat Nimjirawat)という少年が墓地を訪れる。彼は誰にも手入れされていないメースの墓を見つけると、それを可哀そうに思いバッグに入っていたキャンディをお供えし、毎年来ることを約束した。その後成長したタン(パワット・チットサワンディ)は、メースと特別な関係を築いていく。

ここでいうメースが Singto(シントー)です。シントーと愛称で呼んでもらわないとわかりませんね。プラチャヤー・レァーンロードという名前のほうは憶えていません......


予告編、こちらのバージョンのほうがいいな、と思います。



ただ、残念なことに日本語の字幕がないんですよね。

いつものように告知にしたがって役者さんを。

kYJOdf.jpg

主演は、そのシントー。1994年生まれ。ベンチに座っている向かって左側。影が薄いように加工されていますね。幽霊だから、です。あっ、でも、ドラマの中ではこういう薄くなっているシーンはほとんどありません。役名は Mes あるいは Mase(メース)。聞いていると「ス」の音はほとんど聞こえませんね。メーって感じです。
相手役が、その隣に座っているパワット・チットサワンディ、愛称、オーム。「The Shipper」 (感想ページへのリンクはこちら)で キムの弟 Khett 役をやっていた俳優さんです。法学部の大学生 Thun(タン)役です。タンのスペルは、Than, Tan とかいろいろあるようです。2000年生まれ。
シントーが出ている作品はたくさんあるのですが、そのなかでこの「He is coming to me」を選んだのは、共演がオームだったから、というのも理由の一つです。

後ろに並んでいる3人は Thun(タン)のお友だち。
3人ともほかの作品でこの後よく見ることになります。
左から。
まず Sarocha Burin、ニックネームが Gigie。きれいですね。オーム演じるThun(タン)のことが好きな Plai(プライ)役です。
次が Harit Cheewagaroon、ニックネームが Sing。役名は、Khem か Khiew か.....この作品のコメディ部分担当です。
そして右端が Wachirawit Ruangwiwat、ニックネームが Chimon。Plai(プライ)のことが好きな Prince(プリンス)役。
この3人とタンを入れた4人の掛け合いがとてもおもしろいです。

ちょっと中途半端ですが、続きは明日。






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花窗玻璃 天使たちの殺意 [日本の作家 深水黎一郎]


花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

花窗玻璃 天使たちの殺意 (河出文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/10/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
仏・ランス大聖堂の南塔から男が転落、地上八十一・五メートルにある塔は密室状態で、警察は自死と断定した。だが半年後、再び死者が。被害者の共通点は死の直前、シャガールの花窗玻璃(ステンドグラス)を見ていたこと。ここは…呪われている? 壮麗な建築と歴史に隠された、事件の意外な結末。これぞミステリー! 『最後のトリック』著者による異形の傑作。


「エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ」 (講談社文庫) (ブログの感想ページへのリンクはこちら
「トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ」 (講談社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾。

タイトルは「はなまどはり」とふりがながついています。
同時に、本文中には「ステンドグラス」とルビがついています。

今度の題材は、フランスのランス大聖堂。この作品の表記に従えば蘭斯大聖堂。
行ったことあるはずなんですが、記憶にありません......とほほ。
シャガールの手によるステンドグラスがあることで有名、とのことです。見たはず......だよなぁ。
そのシャガールのステンドグラスを、登場人物の口を通してくさしているのがポイントですね(笑)。
とてもおもしろい。

神泉寺瞬一郎による手記が大部分を占めています。
その手記、タイトルも「花窗玻璃」でステンドグラスを難しい漢字で表記されていますが、本文も漢字のオンパレードで、カタカナは読者の便宜を図るためと思われるルビ以外は使われていません。
すごい。
また旧字体を使っているところがあちこちに。
これが不思議と読みにくいと思いませんでしたね。むしろワクワクしました。
なぜ現代の人物である神泉寺瞬一郎がこんな表記を手記に採用したのか、という理由がふるっています。
「舞台であるランス大聖堂、その壮麗極まりない威容を日本語の文章で表現するのには、この文体、この表記しかないと思ったんです。この表記でなければ、絶対に負けると思ったんです。」(186ページ)
結構、このあたりの日本語論、神泉寺瞬一郎のセリフに力が入っていまして、作者の主張でもあるのかな、と思えてとても楽しかったですね。
「ルビこそは、日本語最大の発明の一つなんですよ!」
「日本語は、外来語の意味を漢字という表意文字で示しながら、読み方はルビによって、言語にかなり忠実に読ませることができるという、表意文字と表音文字の両方の良いところ取りをするのに成功した、正に奇跡のような言語なんですよ。」(193ページ)
なんだか楽しくなってきませんか? (もっとも、個人的には「最大の~一つ」という言い回しが気になりますが)

こういう文章で綴られる、大聖堂そのもの、ステンドグラス、その他に対する蘊蓄がとても楽しい作品です。
たとえば......

「哥徳(ゴシック)式の大伽藍の場合、一つの聖堂の建設に一〇〇年かかるなんてのはざらで、何度も中断を挟んで三〇〇年四〇〇年なんてこともある」
「巴塞隆納(バルセロナ)の聖家族贖罪教堂(サグラダ・ファミリア)が、高第(ガウディ)の死後現在でも建設されていることがよく喧伝されるが、このままの調子で完成したら、教会建築の工事期間としては、むしろ短い方になるだろう。」(ともに144ページ)
へえ。すごい。
サグラダ・ファミリアのことをうけて、だからスペイン人は......なんていう物言いもありますが、スペイン人だからとは言えないのですね。おもしろい。

あるいは......

「この巨大な建築物に塔はこの西正面の二本だけ、しかもその上に尖塔(フレッシュ)は載っていない。フランス(仏蘭西)の哥徳(ゴシック)建築は、あくまでも調和と均衡(バランス)重視なのであり、南北の正立面にも双塔を建て、さらにその上に尖塔、また交差部(クロワゼ)には大尖塔と、やたらめったら天を窄めたがる英吉利(イギリス)や独逸(ドイツ)の哥徳(ゴシック)建築とは、一線を画しているのだ。高い塔は建てないものの、その代わり親の仇のように矢鱈に小尖塔(ピナクル)を建てたがる北伊太利亜(イタリア)の哥徳(ゴシック)ともまた違っている(米蘭(ミラノ)の大聖堂(ドゥオーモ)など、実に一三五基もの小尖塔(ピナクル)があって、まるで巨大な蝟(はりねずみ)のようだ)。現在巴里(パリ)の聖母院(ノートル・ダム)の交差部(クロワゼ)には大尖塔(グランド・フレッシュ)が聳えていて、華美好きな観光客たちの目を楽しませているが、あれは十九世紀の著名な建築家兼修復家、維歐勒・勒・杜克(ヴィオレ・ル・デュック)によるものである。」(138~139ページ)......これPCで打つの大変でした(笑) ルビを括弧書きで書くしかないのでちょっと見た目がうるさいですね。ルビだとさほど見苦しくないのですが。

事件のほうは、大聖堂からの墜死と天使の幻覚を見た後に死んだ浮浪者の2つです。
墜死事件は、情景を思い浮かべるとかなり絵になるトリックで好印象なのですが、個人的にはこのトリックその場にいる人たちにはわかっちゃうんじゃないかなあ、と心配になりました。上手に処理されてはいるんですが、それにしても。大丈夫なのかな?
死んだ浮浪者のほうのトリックも、なかなか乙です。(人が死ぬのに乙とはひどい表現ですが)
伏線が効果的にひかれていていいなと思いました。

それにしても、ぼくが買ったバージョンの帯はいただけないですね。
「あなたはまた巻き込まれる
 『最後のトリック』の次の挑戦状--
 被害者は読者全員!?」
そういう狙いの作品ではないと思います。

帯に対する不平は、作者の責任ではないので抑えておくとして、このシリーズ、とても楽しいですね。
快調です。ずっと続けてほしい。

この作品、もともとは「花窗玻璃 シャガールの黙示」というタイトルで講談社ノベルスから出版されたものです。文庫化は河出文庫になりましたね。文庫化にあたってサブタイトルが変更になっています。
シリーズ第3作であるこの「花窗玻璃 天使たちの殺意」より先に第4作「ジークフリートの剣」 が講談社文庫で文庫化されていましたが、とても楽しみです。
できる限り順番に読もうと積読にしてありました。
でも日本に置いて来てしまったので、読めるのはいつになることやら......


<蛇足1>
フェルメール(維梅爾)の「真珠の耳飾りの少女」の原画ではないかという美術史家がいるという、グイド・レーニの絵について触れられていますが、タイトルが書かれていませんね。(86ページ~)
ローマの国立古典絵画館に所蔵されているそうです。
まったく知りませんでした。興味がわきました。見に行きたいですね。

<蛇足2>
若き日の神泉寺瞬一郎(といっても手記の段階でもまだ十分若いような気がしますが)を打ちのめした画家として、デューラー(杜勒)が出てきます。ランスの市立美術館にも作品が収められているようです(127ページ)。

<蛇足3>
作者肝いりの漢字・ルビ表記ですが、ダイイング・メッセージは、垂死伝言、となっています(201ページ)。
「死に際の伝言」という表記にダイイング・メッセージとルビを振るのはよく見ますが.....新しい表記ですね。

<蛇足4>
「全くここにこんな良い女が、彼氏いない歴年齢で一生懸命頑張って生きているのに!」(249ページ)
結構日本語に自覚的な設定の神泉寺瞬一郎ですが、「一生懸命」はOKなんですね。
もっとも
「標準の日本語が存在することは一向に構いませんが、それが唯一正しい日本語で、それ以外の日本語は間違いだとする言語ファシズムには、僕は断固として反対します」(191ページ)
という彼のことだから、こんなことをいうと言語ファシズムと指弾されるかも。





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