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ブルーローズは眠らない [日本の作家 あ行]


ブルーローズは眠らない (創元推理文庫)

ブルーローズは眠らない (創元推理文庫)

  • 作者: 市川 憂人
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/03/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
ジェリーフィッシュ事件後、閑職に回されたフラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣。ふたりは不可能と言われた青いバラを同時期に作出したという、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することに。ところが両者と面談したのち、施錠されバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で、切断された首が見つかり……。『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!


2022年10月に読んだ4冊目の本です。
市川憂人「ブルーローズは眠らない」 (創元推理文庫)
「2018 本格ミステリ・ベスト10」第5位

「ジェリーフィッシュは凍らない」(創元推理文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズということで、警戒して読みますよね。
2つの視点から綴られるストーリーということである程度想像がつくのですが、作者は一段上手でした。
記憶力が悪くて覚えていないだけかもしれないのですが、これ世界初の試みではなかろうかと思うのです。
ここまで周到に組み立てるのは大変だっただろうな、と驚嘆。
ネタばれになるので、詳細を書けないのが残念なほどです。


ただ、ちょっとズルくないですか?←負け惜しみ
アンフェアとまでは言えないとは思うのですが、ズルいです←負け惜しみ。

負け惜しみついでに。
舞台は80年代のパラレルワールド的世界で、U国(地名などからしてアメリカ合衆国ですね)。探偵役がアリスと漣で、漣の出身はJ国(アサガオの話も出てきますが、明らかに日本)。
実は前作「ジェリーフィッシュは凍らない」を読んだ時も感じていたのですが、この設定だと会話は英語ですよね。
こうやって我々日本の読者に向けて出版されていますから、当然日本語で綴られているわけで、英語で会話や記録が行われていることを前提に考えると、(ミステリとしての本筋を離れたところが多いですが)突っ込みどころがあちこちにあるのです。それはある程度やむを得ない。
なので、それを逆手に取ってあると、ズルいと感じてしまうんですよね。

と、さんざんズルい、ズルいと騒いでおきながら、ですが、それでもこういう方向性の作品は大好きです。
快調に作品を発表されているようなので、追いかけていきます。

ところで、福井健太の解説によると、前作「ジェリーフィッシュは凍らない」の感想で伏せておいた日本の某有名作の名前が、同書の文庫本の帯には書かれているそうですね。
無駄なことをしていたな、と我ながら笑ってしまいました。





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暗い越流 [日本の作家 若竹七海]


暗い越流 (光文社文庫)

暗い越流 (光文社文庫)

  • 作者: 七海, 若竹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/10/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏表紙あらすじ>
凶悪な死刑囚に届いたファンレター。差出人は何者かを調べ始めた「私」だが、その女性は五年前に失踪していた! (表題作) 女探偵の葉村晶は、母親の遺骨を運んでほしいという奇妙な依頼を受ける。悪い予感は当たり……。(「蝿男」) 先の読めない展開と思いがけない結末──短編ミステリの精華を味わえる全五編を収録。表題作で第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞。


読了本落穂拾いです。
2016年12月に読んでいます。

「蠅男」
「暗い越流」
「幸せの家」
「狂酔」
「道楽者の金庫」
の5話収録の短編集で、表題作である「暗い越流」は日本推理作家協会賞の短編部門を受賞しています。
最初の「蠅男」と最後の「道楽者の金庫」は葉村晶もので、間の3編はノンシリーズ。

「蠅男」のオープニングは、葉村晶が蠅男に階段から突き落とされるシーン。
悪霊が出るという噂の僻地にある洋館に遺骨を取りに行く、という依頼なのですが、相変わらずひどい目にあっています(笑)。
悪霊と蠅男をこうやって結びつけるのですね。

「暗い越流」は死刑囚へのファンレター、しかも死者から届いたものという魅力的な謎です。
ミステリとしてもかっちり作られているのですが、主人公である編集者が事件の真相をつきとめた後に訪れる悪意(と言ってはいけないのかもしれませんが)がポイントだと思いました──故に、葉村晶シリーズにしてはいけないものですね。
個人的に、この作品には作者の意図を読み切れていない箇所があるので(協会賞の選評で北村薫が指摘していることと同じなのではないかと思います)、いつか読み返さねばと思っています。
ひょっとしたら、日本推理作家協会賞の受賞の言葉で
「わたしの思い描く理想のミステリ短編には、三つの必須条件があります。五十枚から七十枚ほどの長さに最低でも二回のツイスト&ターン、読者にはそれと気づかれないけれども印象的な伏線、そして、世界がひっくり返るほどの強烈なフィニッシング・ストローク。」
と述べられているので、ツイストというだけのことなのかもしれませんが。

「幸せの家」は、女性編集長が消えた謎を編集者が追うという話で、ここに出てくるライターの南治彦は「暗い越流」にも出てきます。
こちらも「暗い越流」同様、事件を解いた後に大きなポイントが待ち受けています。

「狂酔」 は、教会で開かれている集会での独白という形式をとっています。教会が運営している児童養護施設<聖母の庭>にまつわる思い出話という風情が、次第に変わっていき......
ミステリのある古典的なテーマがすっと立ち上がってくるところがポイントですね。

「道楽者の金庫」はふたたび葉村晶もの。
バイト先の書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>に遺品整理人から持ち込まれた蔵書査定のお仕事、だったはずが、やはり面倒ごとに巻き込まれる、怪我もする(笑)。
謎めいた金庫に、その鍵となるこけし、という意匠がありそうな、なさそうなというラインを攻めてきていて楽しい。
最後に金庫の中身が明かされて(そしてそれはおそらく大抵の読者の想定通り)終わるのですが、その結果葉村晶がつきとめることにゾクリとします。


「暗い越流」、「幸せの家」 、「道楽者の金庫」といった、物語が一応の決着を見せた後にもう一コマつけ足されている作品群が印象に強く残りました。
いわばつけ足し部分が全体を飲み込んでしまうような、そんな居心地の悪さが味わい深いです。



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眠れる森の惨劇 [海外の作家 ら行]


眠れる森の惨劇―ウェクスフォード警部シリーズ (角川文庫)

眠れる森の惨劇―ウェクスフォード警部シリーズ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2022/11/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
五月十三日の月曜日はその年、もっとも不吉な日だった。ウェクスフォード警部の部下マーティンが、銀行強盗に殺されたのだ。そして同じ日の夜、高名な社会学者が住む森の奥の豪奢な館から緊急通報が入った。「助けて、早く来て、早くしないとみんな殺されてしまう」
強盗殺人と森の奥での一家惨殺。二つの事件に何らかのつながりがあることを確信したウェクスフォードは鬱蒼たる森に潜む狂気に近づいていく。が、不可解な出来事の連続で、謎はどんどん深まりゆくばかりだった……。待望のウェクスフォード警部シリーズ。本格サスペンス。


2022年5月に読んだ6冊目の本です。
「ジェノサイド」(上) (下) (角川文庫)(感想ページはこちら)と
「空白の叫び」(上)(中)(下) (文春文庫)(感想ページはこちら
の間に読んでいたのですが、感想を飛ばしていました。

ルース・レンデルの作品を読むのはすごく久しぶりです。
手元の記録によると2009年にバーバラ・ヴァイン名義の「哀しきギャロウグラス」 (角川文庫)を読んで以来で、12年ぶりですか。
ルース・レンデルは、一時期恐ろしい勢いで翻訳が進みましたが、ばったり訳されなくなりましたね。
訳されなくなったどころか、訳書のほとんどが今や入手困難ですから、時代の移り変わりを感じます。

さて、この「眠れる森の惨劇」 (角川文庫)はウェクスフォード警部シリーズの一作です。
じっくり楽しめましたね。
ウェクスフォードの私生活に筆が費やされ、特に娘であるシーラが変な男にひっかかってしまって、ウェクスフォードが振り回される状況が可笑しかったです。
そのせいか? ウェクスフォードは一家惨殺事件の生き残りである娘デイジーに親身な姿勢。


事件の方は銀行強盗と一家惨殺事件という、豪華二本立て?で、派手なところはないものの、レンデルには珍しく意外性も狙った作品のように感じられました。


原題は、”Kissing The Gunner’s Daughter”。
直訳すると、砲手(ガンナー)の娘にキスをする。
このままの表現が二度ほど出てきます。
「ガンナーの娘にキスをするというあの言い回しをご存じですか、警部?」
「なにかが全然ちがうという意味のフレーズなんですが、ただ、それがなんだったのか思い出せなくて」(345ページ)
バーデンが部下?同僚?のバリー・ヴァイン部長刑事に言われるセリフですが、このバリーの説明は間違っていますね。
後にウェクスフォードが
「どういう意味かって? 鞭でうたれるって意味だ。英国海軍では水兵を鞭うつとき、まず甲板の大砲にそいつをしばりつけてからやる。だから ”ガンナーの娘にキスをする” のは危険なくわだてだったわけだ。」(514ページ)
と解説します。

プレミアリーグのアーセナルの別名がガンナーであることも出てきますし、主要登場人物の一人であるデイジーの実の父親がアーセナルでプレイしていたこともあってガンナーと呼ばれているということも関係していますね。
ひょっとしてレンデル、語呂合わせでこのストーリーを思いついて作品に仕立て上げた?

久しぶりのレンデル、おもしろかったですね。
積読本がまだまだあるので、ゆっくりではありますが、読んでいこうかと思います。


<蛇足1>
「どこかに暗証番号を書き留めたのは確かだ。彼は記憶の糸をたぐった──50503? 50305?」
キャッシュカードの暗証番号が5桁ということはないと思うのですが(イギリスも同様です)。

<蛇足2>
「小切手の確認のためにクレジットカードの提示を求められることはなかった。」(8ページ)
小切手の確認のために提示を求められることがあるのは、クレジットカードではなくキャッシュカードかと思います。

<蛇足3>
「ドアマットの上の郵便受けに、シーラからの絵はがきがはいっていた。四日前にヴェニスで投函されたもので、彼女はあの男とそこへ行っていたのだ。」(66ページ)
ヴェニスからイギリスまで5日で到着するとは、イタリアとイギリスの郵便事情はよいのですね。
今や日本では到底望めない迅速な配達ぶりです。
(考えてみれば、何もかもスローなイギリスでも郵便だけは──だけと言っては失礼ですが──しっかりしていたなと思えます)

<蛇足4>
「ダヴィナはそこのメンバーだか友達だかなんだかで、年に三回はでかけているの──いたの」(132ページ)
ここの友達は「friend」の訳だと思いますが、ここは友達ではなく、会員のことを指すのだと思われます。メンバーと同じ意味ですね。

<蛇足5>
「したがって、<ナメクジとレタス>というミリンガムのパブにはいり」(214ページ)
<ナメクジとレタス>で思い出しましたが、”Slug and Lettuce” というバーのチェーンがロンドンにありました。
一般的なパブのイメージよりは明るい内装でした。
ここに出てくる<ナメクジとレタス>は、チェーンの ”Slug and Lettuce” ではなさそうですが。

<蛇足6>
「ウェクスフォードはイギリス中のすべての銀行のすべての支店で現金が引き出せるトランセンド・カードをもっていた。」(418ページ)
イギリスでは、自行他行関わらず、どこのATMでも銀行のキャッシュカードで現金が引き出せ、かつ手数料も無料ですが、ここを読むと以前はそうではなかったようですね......
トランセンド・カードというものを見たこと、聞いたことはありません。



原題:Kissing The Gunner’s Daughter
著者:Ruth Rendell
刊行:1992年
訳者:宇佐川晶子




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この世にひとつの本 [日本の作家 門井慶喜]


この世にひとつの本 (創元推理文庫)

この世にひとつの本 (創元推理文庫)

  • 作者: 門井 慶喜
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/12/12
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
高名な書家・幽嶺が、山奥の庵から忽然と消えた。後援する大塔印刷では、御曹司の三郎へと捜索の命を下す。だが、工場でも病死者が相次ぐ異常事態が。これは会社の存亡の危機だ! いささか頼りない三郎が、社長秘書・南知子と、史上最速の窓際族・建彦と両方の事件を探りはじめると、一見無関係なふたつが、ある貴重な書物へとつながっていき──。文字と稀覯書をめぐるミステリ。


このところ流行のよくあるビブリオ・ミステリ──かと思いきや、違います。
書家が出てくることからお分かりかもしれませんが、われわれが通常慣れ親しんでいる本ではなく、
「朱色の軸に濃紺の神を幾重にも巻きつけ、褾帯(ひょうたい)と呼ばれる幅の広いひもで締めた、いわゆる巻物の仕立てだ。円筒状のかたちの巻物の中央上部には小さな題簽(だいせん)が貼られ、
  源氏物語 巻四十二 幽嶺寫
 と楷書に近い字体で筆書されている。」(142ページ)
というところもあるように、巻子本の方に焦点があります。

書には親しんでいないので、まったく未知の世界。
(海外の)美術館に展示してあることがあっても、さっと眺めておしまい。
「そもそも近代の散文というのは、情報を伝達するとか、論理を繰り広げるとか、鮮烈なイメージを呈示するとか、読者の同情を買うとか、いろいろ目的があるものなのでしょうけど、いずれも字そのものが読者の理解をさまたげることはないという信頼のもとに書かれている点では共通しています。当たり前の話です。けれども書という芸術はそんな信頼には応じられない。いっぽうに字の意味があり、もういっぽうに読者の理解があるとしたら、そのあいだに進んで割りこみ、字そのものの姿かたちの鑑賞を激しく主張するのが書なんだから」(158ページ)
というところで蒙を啓かれた思い──といいつつ、書を見に行ったりはしていないのですが。ただ、もし見に行くことがあれば、おそらく今までとは違う見方をするのでしょう。何を感じ取れるのか、自信はないですが。

この本、というか書の世界ともう一つ、物語を牽引するのは工場での異常な事態。
こちらはさほど意外ということでもないのですが、全く隠されていない堂々とあからさまなパーツから予想外のところへ進んでいく物語にビックリ。
両者が絡み合って、そんなことを企んでいたとは。

とても楽しく読めました。
今やすっかり時代小説の作家さんになった感があるのですが、ときどきはミステリもお願いします。



タグ:門井慶喜
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完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 [日本の作家 は行]


完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

  • 作者: 半村 良
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 1998/09/01
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
神道とともに発生し、超常能力をもってつねに歴史の闇に潜み暗躍してきた異端の集団──鬼道衆。彼らの出没する処、必ず戦乱と流血、姦と淫が交錯する。彼らを最も忌み嫌った徳川政権は徹底的な弾圧を繰り返した。が、八代将軍吉宗が退いた今、鬼道衆の跳梁が再び開始された! 民族や宗教を超え、人類の破壊と再生を壮大なスケールで描く、大河伝奇巨編。


2022年10月に読んだ2冊目の本です。
もともと全7巻の妖星伝を3巻に編集しなおして文庫化されたものです。
まさに大伝奇。
半村良の伝奇小説、大好きです。
「産霊山秘録」 (ハヤカワ文庫JA)
「石の血脈」 (ハルキ文庫)など、とても面白かったですね。夢中になりました。
それでも、妖星伝はさすがに全7巻ということで、ためらっていたのですが、ついに読み出しました。
本当は全部を一気に読もうと思っていたのですが、逆に読んでしまうのがもったいないような気がして、1巻だけで一旦止めることにしました。

いやあ、もう楽しい、楽しい。
時代背景といい、扱われている内容といい、決してとっつきやすいものではないのに、読み始めたらやめられない。
鬼道と命名されていますが、裏の勢力というのか闇の勢力というのか、歴史の流れに組み込まれている点が伝奇の醍醐味ですよね。
「たとえば、伊賀、甲賀など、細作、游偵を業とする者は大伴細人(しのび)を祖と称している。大伴細人は伊賀の人とされ、紀州の昔に大伴氏が在ったことにやや符合する。そのうえ、細作、游偵は孫氏の兵法第十三篇に用閒(ようかん)として明記されている。孫氏とは呉の人。孫氏の書がこの国にもたらされたのは、どうやら紀州に帰化人が増えた頃と一致するらしい」
「なるほど、すると忍びが用いる九字の印や密呪とも重なるわけだな」
「そうなのだ。密呪とはすなわち真言だ。」(228ページ)
あるいは
「四諦三法印」
「苦、集、滅、道で四諦。諸行無常、諸法無我、涅槃寂静で三法印だ。」(238ページ)
「さっきいった四諦三法印は修験道の根本だが、山伏たちの実際の用には、むしろ六神通の方が親しまれている。」
「第一の神通は天眼通」「二番目は天耳通」「三が神足通」「四番は他心痛でこれは読心の術という奴だろう」「第五が今お幾のいった昇月法にあたる宿命通だ。過去未来を見通す力さ」「第六の神通力は」「漏尽通。人間界はいうに及ばず、地獄、極楽、天上界……どこでも木戸ご免さ。」(242ページ)
なんか、わくわくしますよね。

その鬼道たちの話から、さらに大きく拡がっていきます。
なにしろ空を飛ぶ円い船、すなわち宇宙人(補陀洛[ポータラカ]人と呼んでいます)まで絡んできます。
「宇宙のどこに、これほど生命に満ち溢れた、血みどろの星があるのでしょう。あり得ません。ここは極端なまでに生命に満たされているのです。この星の春の醜怪さをご承知のはずです。草花も樹々も、鳥もけものも人も、他の命を奪い合っているのです。そうした殺し合う世界に何がもたらされるか、お気付きでしょうか」
「進化の加速」(595ページ)

物語がどう展開し、どう収束していくのか、この第1巻だけではまったくわかりませんが、日本の江戸時代という背景をはるかに超えて展開してくことは確実で、とても楽しみです。



<蛇足1>
「三人は途中菊川の立て場で軽く腹ごしらえをし、さらに登って子育観音の辺りへさしかかった。」(208ページ)
「立て場」がわかりませんでした。宿場と宿場の間にあって、旅人や人足、駕籠かきなどが休息した場所のことらしいです。

<蛇足2>
「歩度をまったく乱さず、次に踏み出した足の爪先を軸にして、独楽のように体をまわしたのである。」(209ページ)
「歩度」も知らない単語でした。歩く速度や歩幅をまとめて言うことができる便利な単語ですね。

<蛇足3>
「あれが有名な四日市の諏訪明神か」
―略―
「七月のおわりに京の祇園祭り、近江の長浜祭りと並べられるたいそうな祭りをする」(224ページ)
諏訪大社のことかと思ったら場所が違いますね。四日市にも行ってみたいかも。





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チョコレートコスモス [日本の作家 恩田陸]


チョコレートコスモス (角川文庫)

チョコレートコスモス (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
芝居の面白さには果てがない。一生かけても味わい尽くせない。華やかなオーラを身にまとい、天才の名をほしいままにする響子。大学で芝居を始めたばかりの華奢で地味な少女、飛鳥。二人の女優が挑んだのは、伝説の映画プロデューサー・芹澤が開く異色のオーディションだった。これは戦いなのだ。知りたい、あの舞台の暗がりの向こうに何があるのかを──。少女たちの才能が、熱となってぶつかりあう! 興奮と感動の演劇ロマン。


2022年10月に最初に読んだ本です。
追うように、というのか、追われるようにというのか、とにかく夢中になって読む本というのがあります。
この「チョコレートコスモス」 (角川文庫)は、まさにそういう本でした。

だいたいあらすじは読まずに読み始めるのですが、感想を書こうとして上のあらすじを引用して、ちっともこの作品の紹介としてふさわしくないあらすじだな、と思いました。
引用しておいて言うのもなんですが、あらすじは読まずに取り掛かった方がいいです。

主人公は、大学で芝居を始めたばかりの飛鳥。
なのですが、彼女の視点から物語られることはほとんどありません。
もう一人の主人公は、芸能一家に生まれ幼いころから芸能人として活躍してきたスター、響子。
こちらは最初から視点人物(の一人)として登場します。
この響子の物語るところから、飛鳥の特異性が浮かび上がってきます。

かなり後半の方になりますが、
「子供のころから周囲にプロと芸能人ばかりいたので、天才と呼ばれる役者は数多く見てきた。その芸と華には幼い頃から感動してきたし、その凄さも分かっているつもりだ。
 しかし、あの少女は、全く違う方向から出てきたとしか思えないのだった。
 こうしてみると、響子の知っている天才たちは、環境のもたらした華でありポジションであり、彼らの芸が昔から連綿と続く『芸能界』で耕され、受け継がれてきたものだということがはっきりする。端的に言うと、広い意味での『仲間うち』での型というものが知らず知らずのうちにできてしまっていて、その中での『うまさ』や『天性』が評価の基準になってしまっているのである。『芸能界』にもいろいろあるが、そのすべてをひっくるめて、『芸能界を生きる』こと自体が一つの型に嵌まってしまっているのだ。
 だが、あの子の自然さはどうだろう。」(410ページ)
というくだりなどはその象徴です。

この物語は、役者だったり、脚本家だったり、視点人物が芸能関係者です。
そのおかげで、芸能に縁遠いこちらにも、飛鳥の像がいっそうくっきり浮かび上がってきます。

「そうか、あの子には『自意識』が感じられないのだ。」
「役者になろうなんていう人間は、多かれ少なかれ自意識過剰なものだ。温厚だ、欲がないと言われる役者でも、その内側に秘めた自意識は強烈である。時に本人すら持て余し、どうにもコントロール不能の自意識。その厄介さが役者という人種の複雑さであり、同時に魅力でもある。あおいにしろ、葉月にしろ、強烈な自意識の持ち主であることは明らかだ。響子自身、優等生的ではあるが、誰にも見せないところに複雑な自意識が存在することを自覚している。
 しかし、そういった強烈な自意識のない人間が役者をやるというのは──」(411ページ)
なんだか、読んでいてぞくぞくしませんか?

物語の前半は、飛鳥が初めて出た芝居の話が中心で、ここもかなり強烈な印象を受けます。
芝居というものは観たことがないに等しい状態なのですが、この本で芝居の見方を教えてもらっているような気がしました。
作者恩田陸が、文庫版あとがきに「オーディションの話を書きたい。」「よし、ほとんどがオーディションの場面、みたいな小説を書こう。」と書いているように、物語の中盤以降はオーディションの場面です。
これがもう、スリリングでスリリングで。
本当に息を詰めるように読みました。
とても、とてもおもしろかったです。



タグ:恩田陸
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たそがれの侵入者 [日本の作家 赤川次郎]


たそがれの侵入者 (フタバノベルズ)

たそがれの侵入者 (フタバノベルズ)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2022/05/19
  • メディア: 新書

<カバー袖あらすじ>
ふたりの「あすか」の奇妙な出会いは人々の運命を少しずつ変えていく
裕福な暮らしをする野々山あすかと、窃盗をくりかえし裏社会で生きる久米明日香。あすかが友人と話している場所に偶然居合わせた久米は、高級老人ホーム「いこいの園」の存在を知る。侵入を企む久米だsったが、昔の仲間の不穏な動きや事件により、事態は思わぬ方向へ──
事件に次ぐ事件の裏で、家族愛や恋愛が絡み合う長編サスペンス。



9月に読んだ最後の本です。
赤川次郎のノンシリーズ長編です。
出る新刊がほぼシリーズものばかりという最近の赤川次郎には珍しいノンシリーズもの。
2020年2月に出た「恋ひとすじに」 (フタバノベルズ)(感想ページはこちら)以来ですね。

主人公格の二人の名前が同じ「あすか」。
富豪と泥棒という取り合わせ。
いかにも赤川次郎、という設定で、出だしからいかにも赤川次郎だなと思いながら読み進んでいったのですが、最近の赤川作品にはない、初期作を思わせる登場人物、展開に少々ぞくりとしました。

以前にも書いたことですが、最近の(といってももう20年近くになります)赤川次郎は、道徳的な主張が全面に出てくるようになっていて、ストーリー展開も似たり寄ったりで予想がつきやすく、喰い足りないものが多くなってきていました。
あまりにも広範に読者を獲得し、しかも若年層が多いということから、自らの作品の持つ影響力を考えて意識的にそういう選択をされているのだ、と思いますが、残念に思っていたところです。

ところがこの作品は、その殻が破られています。
いいではないですか。
初期の赤川次郎はこういうのもあったよな、とうれしくなってしまいました。
作中で描かれるのは、人として到底許されない、まさに唾棄すべき人物であり、行為なのですが、こういう赤川次郎ひさしぶりです。
この路線、支持したいですね。
シリーズものだとこういうのは難しくなってしまっているなら、どんどんノンシリーズを書いて欲しいです。
なにしろこちら、「招かれた女」 (中公文庫)推しの赤川次郎ファンですから。



タグ:赤川次郎
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ぼくを忘れたスパイ [海外の作家 た行]


ぼくを忘れたスパイ〈上〉 (新潮文庫)ぼくを忘れたスパイ〈下〉 (新潮文庫)ぼくを忘れたスパイ〈下〉 (新潮文庫)
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/09/29
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
父がスパイだった? それも辣腕? 競馬狂いで借金まみれのチャーリーは、金目当てで認知症の父を引き取ってから次々と奇怪な出来事に見舞われる。尾行、誘拐未遂、自宅爆破に謎の殺し屋の出現。あげく殺人犯に仕立てられ逃げ回る羽目に……。父は普通の営業マンではなかった? 疑念は募る。普段のアルツハイマーの気配も見せず、鮮やかに危機を切り抜ける父の姿を見るたびに――。<上巻>
何が真実で、何が真実でないのか? チャーリーは混乱するばかりだった。父はCIAに所属していて、なんらかの秘密作戦に従事していた。二人を追うのはCIAなのか? 何を聞いても返事が意味不明な父の病。時折訪れる明晰な瞬間にはスーパーヒーローに化けるが、普段は過去も現在もわからない彼が重大な国家機密を握っていたとしたら。独創的な主人公像が絶賛を浴びた痛快スリラー。<下巻>


9月に読んだ13作目の本です。
キース・トムスンの「ぼくを忘れたスパイ」〈上〉 〈下〉 (新潮文庫)

颯爽と敵の目をかいくぐり、危機を切り抜け、情報を手に入れるスパイ。
そんな勝手なイメージを持っているスパイですが、痴呆症になったら大変でしょうねぇ。国家機密すら知っていたりするのですから。
主人公チャーリーは、そんな父を持つダメ男。
理不尽にも狙われて父親と一緒に逃げ惑う羽目に。

と言ってしまえばこれだけの話ですが、おもしろいですねぇ。
いつもはボケていける父親が、ふっと正気を取り戻しスーパーヒーローの活躍を見せる、という痛快さ。
相次ぐ危機を乗り越えていきます。
痴呆症の父親を守る息子、という構図が、痴呆症の父親に守られる息子、に転じるおかしさもあります。

痴呆症となると、いつ正気を取り戻すかという点どうしてもご都合主義というか、都合のいいときに正気を取り戻すようになってしまいがちで、この作品もその弊からは逃れられていないのですが、ありふれていても「息子が危ない」ときに正気を取り戻す、というのはなかなか手堅いですね。

一方で
「馬体の血液量は一般的に体重の十八分の一だということはわかるぞ」(67ページ)
なんて、スパイにどう役に立つのかわからない知識が披露されたりもします。

というわけで、読み終わって、あー面白かった、といっておしまいにすればよいのですが、振り返ってみると、消化不良というか、この題材ならもっと面白くなったんじゃないかな、と思えてなりませんでした。
息子チャーリーに視点を置いていることからくるユーモアも、一転ハバナで繰り広げられるスパイ戦も、逃避行の間繰り広げられる戦闘シーンも、どれもこう今一歩感が漂うんですよね。

まさにないものねだりなのですが、ちょっと残念です。



原題:Once A Spy
作者:Keith Thomson
刊行:2010年
訳者:熊谷千寿


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風よ僕らの前髪を [日本の作家 や行]


風よ僕らの前髪を

風よ僕らの前髪を

  • 作者: 弥生小夜子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: 単行本

<カバー袖あらすじ>
早朝、犬の散歩に出かけた公園で、元弁護士の伯父が何者かに首を絞められて殺害された。犯人逮捕の手がかりすら浮かばない中、甥であり探偵事務所勤務の経験を持つ若林悠紀は、養子の志史を疑う伯母の高子から、事件について調べてほしいと懇願される。悠紀にとって志史は親戚というだけでなく、家庭教師の教え子でもあった。中学生の頃から他人を決して近づけず、完璧な優等生としてふるまい続けた志史の周辺を調べるうちに、悠紀は愛憎が渦巻く異様な人間関係の深淵を除くことになる。圧倒的な筆力で選考委員を感嘆させた第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。


2022年9月に読んだ12冊目の本。単行本です。
第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。
このときの正賞受賞作は千田理緒「五色の殺人者」(感想ページはこちら

養母から養父殺しを疑われる少年立原志史(しふみ)──少年といっても大学四年生なのですが──という設定からして不穏なのですが、調査を進める悠紀の前に現れてくる志史の交友関係、人間関係。
ホームレス状態だった志史の実父が建築現場の足場から飛び降り死。警察の捜査では実父が養父を殺したようで。建築現場の建築主は小暮理都(りつ)。志史の中学時代の友人で互いに通じ合っているように傍からは見えていたのだが、中学三年生の時に絶交していた。理都の家庭も複雑な事情をはらんでいたことが次第に判明し......
とこのような流れで物語は展開していくのですが、 ネタを割らないように気を付けて書いたつもりでも、これだけ読めば大方の読者には、作者の用意した真相の筋書きが予想できてしまうと思います。しかも、わりとよく見るパターンの物語。
あまりにも物語のネタが割れやすい。ミステリとしてみれば大きな欠点だと思います。

帯に
これは罪と罰、そして一生終わらない初恋の物語だ。
 才能と環境に恵まれた二人の少年。
 その周辺では不審な死が相次いでいた────」
とあって、読後、いくらなんでもネタを割りすぎだろう、と感じたものですが、この作品はミステリとして謎解きを楽しむよりも、別の面を見るべき作品だと思われるので、これでよいのかもしれません。

ミステリとしてみれば、ネタが割れやすく、かつ、登場人物たちの置かれた状況や年齢を考えると、スッキリしない部分も残るので決して高く評価はできないと思います。
この点だけを捉えれば、正賞ではないとはいえ、鮎川哲也賞の優秀賞を受賞したのが不思議なくらいです。

ところが、です。
この作品は面白かったです。
読んでいただければわかりますが、主役二人が鮮烈に印象に残ります。

タイトルは、理都が高1のときに文芸部の作品集に書いた短歌からとられています。
「風よ僕らの前髪を吹きぬけてメタセコイアの梢を鳴らせ」(130ページ)
「翼の墓標 十首」と題されたうちの一首ですが、他の九首もなかなか味わい深いです。

この二人の存在が、ミステリとしての不満を吹き飛ばしています。
だから、ミステリの要素はもっともっと薄めにして、それ以外のエピソードに極力絞ったほうが良かったのではなかろうかと思いました。
鮎川哲也の名を冠した賞であることを考えると残念ではありますが。


<蛇足>
「それで私が立ち読みしてたほんの話でもりあがって。北欧のホラー作家の短編集だったんですけど、志史くんもその人の小説が好きだって……」(25ページ)
ここでいう北欧のホラー作家って、誰でしょうね?
文庫になっている、という手がかりもあるのですが、わかりませんでした。





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ヴェルサイユ宮の聖殺人 [日本の作家 ま行]


ヴェルサイユ宮の聖殺人

ヴェルサイユ宮の聖殺人

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/01/21
  • メディア: 単行本

<カバー袖あらすじ>
1782年5月──ブルボン朝フランス王国が黄昏を迎えつつある頃、国王ルイ16世のいとこにして王妃マリー=アントワネットの元総女官長マリー=アメリーは、ヴェルサイユ宮殿の施錠された自室で刺殺体に遭遇する。殺されていたのは、パリ・オペラ座の演出家を務めるブリュネル。遺体は聖書をつかみ、カラヴァッジョ「聖マタイと天使」に血文字を残していた。そして、傍らに意識を失くして横たわっていたのは、戦場帰りの陸軍大尉ボーフランシュだった──。マリー=アメリーは集った官憲たちに向けて、高らかに告げる。「この方の身柄を預けて下さいませんこと? 私のアパルトマンで起きた事件です。こちらで捜査しますわ。無論、国王陛下の許可はお取りしますからご安心下さい」「俺は助けて欲しいと一言も言ってない! 」かくして、奇妙な縁で結ばれた、才女気取りのやんごとなき貴婦人と第一容疑者のボーフランシュ大尉は、謎多き殺人事件に挑む。


2022年9月に読んだ11冊目です。
単行本で読みました。
第10回アガサ・クリスティ―賞の優秀賞。
このときの受賞作はそえだ信の「掃除機探偵の推理と冒険」 (ハヤカワ文庫JA)(感想ページはこちら


18世紀、フランス革命前夜の王族、貴族階級を舞台にした歴史ミステリです。

国王のいとこであるマリー=アメリーが、殺人現場にいた陸軍大尉ボーフランシュの身柄を預かる、という冒頭の展開に驚いてしまいますが、次第にマリー=アメリーならやりかねないと納得できてしまいます。
マリー=アメリーとボーフランシュ二人が組んで事件の真相を追っていくのですが、この二人のやり取りがおもしろい。

この場面でも明らかなように、マリー=アメリーが現代風の性格をしている点を興ざめに思う方もいらっしゃるのではと思いますが、このように現代風の意匠が盛り込まれているのも、犯人がパターン通りで見え見えであるのも、この物語の中ではかえって趣深いように感じました。
犯人がパターン通りで見え見えといっても、さまざまな手がかりちりばめられていて好印象です。
デビュー作にありがちなことですが、要素盛り込みすぎ、という感もなくはないですが、舞台背景が豪華絢爛なので、これくらいでよいのかもしれません。
なにより堂々とした筆運びが素晴らしい。

応募時のタイトルは「ミゼレーレ・メイ・デウス」
Miserere mei, Deus。「神よ、我を憐れみたまえ」(262ページ)
システィーナ礼拝堂の歌手アッレーグリが作曲、歌詞は詩編第五十篇をそのまま用いているそうです。カストラートが歌い上げるシーンもありますが、クライマックスでの使われ方が印象的です。

次はどういう作品を読ませてくれるのか、とても気になる作家です。


<蛇足>
「凝った刺繍が施された上着とジレから、かなりの洒落者と見受けられたが、穏やかな笑みを湛えた端正な顔立ちに反し、有無を言わせない威圧感を放っている。」(64ページ)
恥ずかしながら、ジレがわかりませんでした。

<蛇足2>
「二人は熱いワイン(ヴァン・ショー)で身体を温めることにした。」(162ページ)
ヴァン・ショーという語が当てられている ”熱いワイン” は日本ではホットワインと言われることが多いように思います。
フランスが舞台ですので、ホットワインという言い方を避けられたのでしょうね。

<蛇足3>
「一度嫁した王族は、たとえ親や兄弟が今際の際であろうとも、二度と故郷の土を踏むことは許されない。離縁されるか、嫁いだ国が無くなるか。不名誉な理由以外には。」(162ページ)
こういう掟があったのですね。
やはり王族・貴族というのはかなり不自由そうです。

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