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En of Love:This is Love Story [タイ・ドラマ]

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「En of Love」シリーズのトリをつとめますのは、「En of Love:This is Love Story」。

いつもの MyDramaList によると、
2020年6月に放映されていたようです。
この「En of Love:This is Love Story」だけ3エピソードと1エピソード短くなっています。コロナのせいかな?

上のポスターで工学部の青い服を着ているのが、Neua(ヌア)。工学部の3年生。「En of Love:TOSSARA」のバーや「En of Love:Love Mechanics」のウィーの友人という設定ですね。
演じてるのは Ratchapat Worrasarn、愛称 Prom という役者さん。
背負われているのが、Praram(プララーム)。高校生という設定です。「En of Love:TOSSARA」のガンの弟で、双子の一人(もう一人の名前がPrarak(プララック))。
演じているのは Atthanin Thaninpanuvivat、愛称 Benz。

ガンとバーが付き合って1年というタイミングで、仲間が集まって(おそらくガンの家で)飲んだ際に知ったガンの弟プララームに一目惚れ?したヌアが、なんとかプララームをものにしようとするお話です。
ヌアがプレイボーイという設定がいかにも過ぎますし、強引な嘘をついてまで入りこもうとするので少々笑えますが、無理やり3エピソードに押し込まれなかったら、もう少し物語も人物像も膨らんだのだろうな、と。
「En of Love:TOSSARA」ほど急にカップルが成立するわけではありませんので、もっと紆余曲折がもりこまれていたのではないかと思えますし、プララームの双子の兄弟であるプララックなども、Benz が一人二役で演じているのですが、ちょっと出てくるだけでさほど双子であることが活かされていません(すこしだけ、ヌアをサポートしてくれるのですが)。

「En of Love」は各話が短いので、タイBLをさっと楽しむのにいいかも。




タグ:タイBL
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En of Love:Love Mechanics [タイ・ドラマ]

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「En of Love:TOSSARA」に続きまして、シリーズ第2話の「En of Love:Love Mechanics」。

いつもの MyDramaList によると、2020年4月から5月にかけて 放映されていたようです。
Studio Wabi Sabi の制作。こちらも全4エピソード。
やはり YouTube では見当たらないですね──といいながら、エピソード4の第2パートだけありましたね。消し漏れでしょうか(笑)。これだけではなんのことかわからないですけど。

「En of Love:Love Mechanics」は、日本のHPにあったシリーズの人物相関図の、マークとウィーの物語です。

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上で引用したポスターの左側、こちらを向いているのが Vee(ウィー)工学部の3年生。演じているのは Anan Wong という俳優さん。愛称は Yin 。
右側が Mark(マーク)。工学部の1年生。演じてるのは Wanarat Ratsameera、愛称は War。
工学部同士の恋愛模様ですね。

マークは、「En of Love:TOSSARA」で、バーにちょっかいを出していて、ガンにやきもちを焼かせていたのですが、バーへの思いは本気だったようで、バーとガンが結ばれてしまった憂さ晴らしをしようと飲みすぎて、ウィーに絡んでしまい、一夜を共に。
ウィーは彼女がいて......なのに関係をもったマークのことが気になって。

こちらは、マークはバーが好きだった、ウィーには彼女がいる、という双方事情を抱えていることもあり、屈折した進展を見せます。
この二人の屈折ぶり、飛んだり跳ねたりは、もっと長い物語にしてもよかったような気がします。
感情の振れの大きいストーリーになっていまして、役者さん(監督? 演出家?)の腕の見せ所、といった感じでしょうか?
ウィーが涙を流すシーンとかよかったですね──そのシーンで、ウィーと一緒にいる友人ヌアも意外といい感じでした。ヌアは次の「En of Love:This is Love Story」で主役を演じます。

王道の恋愛もの、という感じの物語でした。




タグ:タイBL
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En of Love:TOSSARA [タイ・ドラマ]

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タイ・ドラマの感想も久しぶりに書いてみることに。
「En of Love:TOSSARA」。

「En of Love」というのが通しタイトルで、この TOSSARA のほかに、Love Mechanics と This is Love Story とあわせて3つの物語が作られています。
実はこの3つ、観た順がバラバラなのですが、もともと放映された順に、続けて感想を書いていくことにします。

最初に観るときに、通しタイトルの「En of Love」の ”En” がわからなくて、あれこれ調べたのですがわからず......
でも最近これは、Engeneer の ”En” だろうな、と思うようになりました。
タイのBLでは、工学部(Engeneer)が大人気ですし、この「En of Love」でもそう。3つのエピソードいずれも工学部生が中心的役割を果たします。

さて、「En of Love:TOSSARA」です。

いつもの MyDramaList によると、2020年3月から4月にかけて 放映されていたようです。
Studio Wabi Sabi の制作。全4エピソードと短くていいですね。
ぼくが観たときは、日本語の字幕つきでYouTube にアップされていたのですが、今確認するとありません。日本で放送され、ブルーレイ化もされたからでしょうね。

日本版の予告編がこちら。


上で引用したポスターの左側、白衣を着ているのが Gun Tossakan(ガン)で、医学部の1年生。演じているのは Achawin Michaels という俳優さん。愛称は Win 。
右側の、工学部の青い服を着ているのが Bar Sarawat(バー)。工学部の3年生。演じてるのは Thitiphat Chankaew、愛称は Folk。
バーの苗字が Sarawat(サラワット)というに注目。2getherだ(笑)。タイにはよくある苗字なのでしょうか?

ガンがずっとバーに思いを寄せていて、大学生になりきっかけを得て、どんどんアプロ―チしていく、という話です。
タイトルのTOSSARAというのは、この二人のことをSNS上で呼ぶハッシュタグが早速作られていて、そこから採られてます。

ガンは、日本のページ(リンクはこちら)のあらすじにあるように、超イケメンと騒がれ、王子様的人気を誇るという設定なのですが、うーん、その魅力がわかりません。Win という役者さん、外見のことを申し上げて失礼ながら、そういう風には見えないんですけど(笑)......

まあ、さておき、ストーリーはまっすぐで、4話完結という短さもあってか、起伏もあまりなく、どストレート。
口説かれて抵抗あり、戸惑っていいはずのバーも、あっさり第2話には陥落。
こういう単純明快なのもいいのかもしれませんね。

「En of Love」シリーズ全体に関わる人物相関図が、日本のHPにあったので転載しておきます。

EN-OF-LOVE_leaflet_omote_OL (1).jpg



タグ:タイBL
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迷犬ルパン異世界に還る [日本の作家 た行]


迷犬ルパン異世界に還る

迷犬ルパン異世界に還る

  • 出版社/メーカー: 辻真先
  • 発売日: 2023/12/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




2024年1月に読んだ3冊目の本です。
辻真先の「迷犬ルパン異世界に還る」
ソフトカバーの単行本です。
この本、amazon で購入しましたが、通常の商業出版社から出たものではありません。
amazonの登録情報は以下のようになっています。

ASIN ‏ : ‎ B0CPSRVJD3
出版社 ‏ : ‎ 辻真先 (2023/12/31)
発売日 ‏ : ‎ 2023/12/31
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 208ページ
対象読者年齢 ‏ : ‎ 10 歳以上
寸法 ‏ : ‎ 21 x 14.8 x 1.1 cm


なんにせよ、迷犬ルパンシリーズ完結編を読むことができてなによりです。
迷犬ルパンシリーズは、光文社文庫から出ているものはすべて買って読んでいるはずだと思います。
辻真先の作品の多くがそうであるように、非常に読みやすく軽く書かれているようですが、ミステリの押さえるべきポイントはきちんと押さえてあって、楽しく読み進めながら、「そうそう」とか「そう来なくっちゃ」とミステリファンが喜ぶ箇所があちらこちらにあって楽しい読書体験ができます。

amazon の作品紹介は
「1980年代に光文社のノベルスと文庫から刊行していた「迷犬ルパン」の令和版。犬でありながら名探偵だったルパン、実は異世界から転生してきた賢者であった。帰郷する彼と共に異世界へきてしまった中学生の少年少女が魔女や剣士と共に、跋扈する魔法の怪樹と戦って、ついでに現実世界の犯罪まで解決しちまうミステリ。表紙イラスト:いとうのいぢ」
と書かれています。

今回メインを務めますのは、朝日刑事やランではなく、ランの弟であるケンとその彼女である美々子。
ルパンの帰郷先である異世界での冒険がメインで、その前後を現実世界の事件が彩っている、という構成になっています。
なので、ミステリ色は薄目。
往年のファンとしてはその辺はちょっと寂しい気もするのですが、ケンが主役を張るというのと平仄が合っています。
それでも温泉地での事件ということで、ミステリらしいポイントを押さえて、こちらの心をくすぐってくれます。

かなりの部分を占める異世界での冒険は、どうやって敵を倒すかという王道の物語になっていまして、作者が拡げた空想の翼に乗って、現実離れした(異世界ですから当たり前ですが)世界に浸ることができました。

しかし、異世界でのルパンの姿がなぁ......
表紙のイラストにも描かれているのですが、まさか、こういう姿だったとはなぁ。
サファイアの方はまあ範囲内ですが、ルパンは相当思い切った姿(笑)。
でもまあ、こちらの世界へやってきて、朝日刑事たちに事件解決のヒントを与えていくという役目からすると、ふさわしい姿なんですけどね。

異世界に還ってしまったルパン(とサファイア)。
これでお別れ、ということなのかとは思いますが、数多くのシリーズが緩やかに、しかししっかりと結びついている辻真先ワールドですから、またどこかで、ひょいと(犬の)ルパンが出て来てくれないかな、と思います。







タグ:辻真先
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幻影城市 [日本の作家 柳広司]


幻影城市 (講談社文庫)

幻影城市 (講談社文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/10/16
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
野望と陰謀が交錯する満州の人工都市新京。この映画の都は「幻影城市」と呼ばれた。若き脚本家志望の英一は日本を追われ、満州映画協会の扉を叩く。理事長甘粕正彦、七三一部隊長の石井四郎、無政府主義者、抗日スパイら怪人が闊歩する中、不可思議な事件が続発する──『楽園の蝶』を改題、改稿した決定版。


2024年1月に読んだ2冊目の本です。
柳広司「幻影城市」 (講談社文庫)
単行本の時のタイトルは、「楽園の蝶」だったようです。

日本を追われるように満州の首都新京へ逃げ出した24歳の主人公英一。脚本家死亡であることから、伝手を頼って満州映画協会へ。
こういうのいいですね。
持参した脚本について、ドイツ帰りの若き女性監督・桐谷サカエから厳しい洗礼を受ける。
これもいい。
脇を固めるのは、独身寮の相部屋で4歳年上の山野井、脚本部養成所の中国人学生陳文、出稼ぎに新京にやってきたその妹桂花、フィルム倉庫のちょっと怪しげな渡口老人。
楽しくていいではありませんか。

撮影所での幽霊騒ぎからはじまり、主演女優がけがをする事故へと.......
この部分、楽しい。
通勤電車で読んでいたのですが、没頭して危うく乗り過ごすところでした。

面白く読んだのですが、不満もあります。

満州ということで、満州映画協会の理事長があの甘粕正彦。
さらには七三一部隊長の石井四郎まで出てきます。あらすじにもあるように、無政府主義者や抗日スパイの姿も見え隠れ。
とすると、物語の背景というか枠組みの見当がうっすらとついてしまいます。
そしてその通りに物語は進んでいく。
ちょっと興ざめですよね。

「満州には国民が一人もいない」(209ページ)
という指摘があり、
「嘘ですよ、五族協和なんて。この新京ですら、中国人は中国人で街を作り、満州人は満州人でひとかたまり、蒙古人は蒙古人同士、朝鮮人や日本人は言うまでもありまえん。何のことはない、五族が別々に暮らしているだけです。とても協和なんて呼べるものじゃありません。」(210ページ)
と。

虚構を作る満映が、「見えているままのものは何ひとつない。すべてが見かけとは違う。すべてが欺瞞、すべてが幻、すべてが嘘」(207ページ)として ”幻影城市” と呼ばれていることと、満州のありさまを重ね合わせるというのは物語の狙いとしてよくわかるのですが、そのせいでか、謎の底が浅くなってしまっているのは少々寂しい。
もっとそれぞれの立場が入り乱れるような謎を、柳広司なら紡ぎだせたはずと思えてなりません。



タグ:柳広司
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クリコフの思い出 [日本の作家 た行]


クリコフの思い出 (新潮文庫)

クリコフの思い出 (新潮文庫)

  • 作者: 陳 舜臣
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/01/01
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
香港の一流ホテルの空室で、スラブ系の西洋人が殺された。被害者はバンコクのソ連大使館員で、腕ききのKGB謀報官であったことが判明する。しかも使用された毒物は漢方系の極めて特殊なもの。「私」と中垣は、共通の知人で、しばらく消息を絶っている薬学者クリコフの仕業だと睨むが──。網の目のように張りめぐらされた伏線が読者を推理の陥穽に陥れる表題作などミステリー8編。


2024年最初に読んだ本です。
陳舜臣の「クリコフの思い出」 (新潮文庫)
カバー裏にバーコードがなく、奥付は平成元年!
年末年始実家に帰省しますと、通常の積読本を手に取ることができず、実家にある太古の積読本を手に取ることになりまして、こういう次第となります。
こういう相当古い分は自分では積読サルベージと呼んだりしているのですが、今年はサルベージもある程度進めていきたいな、と考えています。

表題作である
「クリコフの思い出」
のほかに
「枯葉のダキメ」
「四人目の香妃」
「キッシング・カズン」
「透明な席」
「蜃気楼の日々」
「その人にあらず」
「覆面のひと」
を収録した短編集です。

「蜃気楼の日々」を除く7作品は、陳舜臣を思わせる私が語り手を務めます。
(権田萬治の解説では「キッシング・カズン」も「私」という一人称形式で書かれていないことにされていますが、私として登場します)
陳舜臣を思わせるからといって、この ”私” が陳舜臣とは限らないわけですが、陳舜臣と思って読んで興趣が増したのは事実です。
もともと陳舜臣の作品は、大人の風格漂うと評されることが多く、初めて接したのは乱歩賞受賞作の
「枯草の根」 (講談社文庫)で中学生(ひょっとしたら小学生かも)の頃だったと思うのですが、日ごろ読んでいる作品との手触りの差を不思議に思った記憶があります。派手なところのない作品なので、中学生にしてみたらつまらないと思ってもおかしくなさそうだったのに、結構いい印象を持っていた記憶。
そういうちょっと別の風格漂う作品の作者が語り手を務めると思ったからかもしれません。

このことは冒頭の表題作「クリコフの思い出」を読むだけではっきりとお分かりいただけるような気がします。
知り合いからの年賀状をきっかけに、CIAやGPU(KGB)などの名前が頻出する物騒なお話に転じていくのですが、そういういわば非現実的な話が ”私” という架け橋によりひょっとしたらという気にさせる。それでいて物語の基盤は地に足のついたまま揺るがない。
このあたりのバランス感、さじ加減が陳舜臣の特長なのだと思われます。

「枯葉のダキメ」は、ゾロアスター教の葬送の在り方(!) が描かれます。タイトルのダキメというのは、鳥葬用に建てられる塔のことらしいです。そのダキメを枯葉で作った後日談なのですが、とてもトリッキーに思えました。

「四人目の香妃」はカシュガルからの囚われの身であった娘がウルムチで逃走するという事件。これと漢の哀帝と董賢の逸話から書名を取った怪しい『断袖篇』のエピソードを結びつける。これ、かなり変な話ですけど、陳舜臣の筆の魔術ですね。

「キッシング・カズン」というのは、幼馴染でキスはし合うが、結婚しないいとこ同士(121ページ)のことを言うそうです。わりとわかりやすい話だと思いましたが、当事者だと気づかないのかもしれませんね。

「透明な席」は、
「シンガポールという尼さんに似合わないまちで、私は寛如という尼さんに会った。」(148ページ)
というちょっと洒落た(?) 書き出しです。せっかく尼なら、インドネシアにしとけばいいのに、とも思いましたが、華僑社会の広がり等を考えるとシンガポールが自然ですよね。
この美しい尼から語られる話が、尼さんに似合わない遺産相続に絡む話で、私が空想を巡らせるのがポイント。

「蜃気楼の日々」は南ベトナムの華僑が残した巨額の資産をめぐる陰謀を扱っています。
ぐわーっと盛り上げておいてストンと落としてみせるところが陳舜臣らしいのかもしれません。この種の作品に多い後味の悪さがないのがポイント高いと思います。
せっかくだから、この作品にも「私」を登場させればよかったのに。

「その人にあらず」辛亥革命後の中国の騒乱を背景に、日本を舞台にした勢力争いを描いているのですが、そこにシンガポールから日本を訪れる車椅子の老女と、当時14歳で争いに加担した老人の回想が重なるところがポイント。
「隆茂号」という雑貨商、当時南京町に実際にあったのでしょうか?

「覆面のひと」というのは、シンガポールで日本に抵抗する ”不良華僑” を日本憲兵が取り締まっていたころ、「日本側のスパイを、シンガポールの人たちは『走狗』と呼び、そのなかの重要な人物を『蒙面人』(覆面のひと)と称していた。」(254ページ)と説明されています。
この「覆面のひと」に対する復讐劇を扱っています。

煽情的に書こうと思えば書けそうな題材でも、落ち着いた筆致で描かれていくところに大きな特徴があります。
いま陳舜臣のミステリーはあまり手に入らない状況ですが、どこかで復刊してほしいですね。




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C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(43) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/17
  • メディア: コミック



シリーズ第43巻です。
「C.M.B.森羅博物館の事件目録(43)」 (講談社コミックス月刊マガジン)

この第43巻は、
「気の合わないヤツ」
「透明魚」
「歯医者」
「カメオグラス」
の4話収録。

「気の合わないヤツ」は、イラクのクルド人自治区が舞台。
家族や一族の名誉を守るために行われる殺人=「名誉殺人」というのが衝撃的ですが、異教徒の蛮習と言い切ることはできませんね。日本だって、家のため、名誉のため、といった動機のミステリ、名作・傑作にもありますよね。
なんとか脱出したいという少女の希望をどうやって叶えるか、という話になっており、定番中の定番のトリック(?) が使われます。
作中では描かれないのですが、少女の伯父の心情を知りたくなりました。伯父も同じサイドに立っているのでは、と思えましたので。

「透明魚」は、監視状況下の美術館へどうやって侵入したか、という謎を扱っています。
扱っているテーマは、表現の自由。
「そんなに大事な権利なの?」
「もちろん なぜなら…… 独裁者が必ず真っ先に潰しに来るのが『表現の自由』だから」
というのが象徴的です。
続けて森羅がいうセリフがすべてかもしれません。
「自分の考えを誰もいない砂漠で叫んでもなんの問題もないし わざわざ法律で守る必要もない
……ってことは『表現の自由』とは他者に自分の考えを広める権利ということになる
 つまりコミュニケーションをとる権利だ
 だから表現するには他者に受け入れてもらうための『手続き』がいる
 これを『プロトコル』と言う
 マナーを守り丁寧な言葉でわかりやすく説明することを心がけて相手と情報をやり取りする場を作る」
そして博物館や美術館は「表現の場というプロトコルを守っている」と。
まだ高校生というのに森羅しっかりしていますね(笑)。さすがC.M.B.の指環の持ち主。
ただ、この作品のトリックは無理だと思います......

「歯医者」は歯医者でタイムリープに陥ってしまった青年の話。その歯医者の待合に森羅がいる(笑)。
予定調和といえば予定調和の物語ですが、すっきりまとまっていてよかったです。
ラストの少女をめぐるエピソードを見ると、青年のお相手が ”Gifted” だという設定だともっとよかったかも、と思いましたが......

「カメオグラス」はマオが登場し、「ピラネージの花瓶」ばりのカメオグラスをめぐる駆け引きがなされます。
カメオグラスに関わる仕掛けは大したことないのですが、転んでもただでは起きないマオがあっぱれ。
それよりなにより、すごく久しぶりにヒヒ丸が出てきたのが嬉しい。
いや、それよりも、ラストでマオが漏らす情報がすごい。
森羅から"C""M""B"の指輪を取り上げようという話が出てるというのですから(一応色を変えて伏せ字にします)。
いよいよシリーズも終盤ということですね......


タグ:加藤元浩 CMB
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Q.E.D. iff -証明終了-(15) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.iff -証明終了-(15) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.iff -証明終了-(15) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/17
  • メディア: コミック

<カバー裏あらすじ>
「その世界」
当主が亡くなった名家・雷明家の遺産相続に巻き込まれてしまった燈馬と可奈。兄弟会議が行われた夜、長男・万作が不可解な死を遂げる! 彼の遺体の懐には奇妙な記号が書かれたメモが入れられていて──
「人がまだ見ることができない」
204X年、AIが日常生活に浸透した日本。ある日、AIが搭載されたロボットが暴走! 新人弁護士・水原可奈の事務所にもAI関係の依頼が殺到する結果に‥‥。証拠を集めるべく、彼女が向かった先には天才SE・燈馬想がいて──!?


Q.E.D. iff のシリーズ第15巻。「Q.E.D.iff -証明終了-(15)」 (講談社コミックス月刊マガジン)
奥付をみると2020年2月です。

「その世界」は、ミステリ好きとしてはちょっと懐かしい感じがするテイスト。
謎めいた記号が書かれたメモ、そしてそれが数学と関係がある、というのがQ.E.D.シリーズらしいところ。
ただ、池の中心にある祠の近くの小舟の上で殺すトリックは、図解がされていてもよくわからず
困惑してしまいました。


「人がまだ見ることができない」は、「Q.E.D.iff -証明終了-(11)」 (講談社コミックス月刊マガジン)に収録されている「溺れる鳥」(感想ページはこちら)と同じ204X年の世界の話です。
フェロー社が製造したAIロボットが暴走し人間に危害を加えた。行方不明となっている技術者アールシュ博士が関与しているらしい。
このあとの展開はエチケットとして伏せる必要があると思いますが、AIをめぐるあるテーマがすっと立ち上がってくるのが見事ですし、それが人間をめぐる別のテーマ ── 人がまだ見ることができない ── と結びつくのも素晴らしい。
作者の視点に賛同するかしないかは別にして、非常によく巧まれた作品世界にしっかり浸れると思います。
ラストにつながるヒントをちりばめる作者の手法もじゅうぶん堪能できます。
作者の腕が冴えた作品です。




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2023年を振り返って [折々の報告ほか]

前回の「向日葵色のフリーウェイ 杉原爽香50歳の夏」 (光文社文庫)の感想までが、昨年2023年に読んだ本でした。
このブログでいうと、2023年6月16日に感想を書いた「大聖堂の殺人 ~The Books~」 (講談社文庫)(ブログへのリンクはこちら)からで──途中折々に落穂拾いが混じっていますが、基本的に読んだ順に感想を書いてきています──、手元の記録だと、読んだ本は総計107作(上下巻など1作で複数冊の場合があるので冊数だと115冊)。
月平均10冊達成できず。


もう2月になってしまいましたが、1年分の感想を書き終わりましたので、久しぶりにベスト10を選んでみました。
順位というわけではなくて、読んだ順に並んでいます。
1作家1作品として、また、新訳による再読作品は、除外してあります。

米澤穂信 「折れた竜骨」 (上) (下) (創元推理文庫)
(ブログへのリンク)
折れた竜骨 上 (創元推理文庫) 折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

山本巧次  「大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢」 (宝島社文庫)
(ブログへのリンク)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

逢坂冬馬 「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)
(ブログへのリンク)
同志少女よ、敵を撃て

松尾由美 「ニャン氏の事件簿」 (創元推理文庫)
(ブログへのリンク)
ニャン氏の事件簿 (創元推理文庫)

山口雅也 「PLAY プレイ」 (講談社文庫)
(ブログへのリンク)
PLAY プレイ (講談社文庫)

阿津川辰海 「星詠師の記憶」 (光文社文庫)
(ブログへのリンク)
星詠師の記憶 (光文社文庫)

長沢樹 「冬空トランス」 (角川文庫)
(ブログへのリンク)
冬空トランス (角川文庫)

ルーパート・ペニー 「警官の騎士道」 (論創海外ミステリ)
(ブログへのリンク)
警官の騎士道 (論創海外ミステリ)

横山秀夫 「64(ロクヨン) 」(上) (下) (文春文庫)
(ブログへのリンク)
64(ロクヨン) 上 (文春文庫) 64(ロクヨン) 下 (文春文庫 よ 18-5)

ミルワード・ケネディ 「霧に包まれた骸」 (論創海外ミステリ)
(ブログへのリンク)
霧に包まれた骸 (論創海外ミステリ 132)


こうして並べてみると、結構バラエティに富んでいるではありませんか(笑)。
大量に買い置きしてある本の在庫から、その時の気分で読む本を選んでいるので、傾向というものがありませんね。

2023年は少数の例外を除いて1作家1作品にしていました。
ちなみに、2作品以上読んだ作家は
赤川次郎、似鳥鶏、森博嗣、山口雅也、山本巧次、若竹七海、アガサ・クリスティ、ダン・ブラウン、ローレンス・ブロック
の8人。
海外の作品は、新訳による再読が多かったですね。古典偏重になってしまった感あり。以前よりも、古典的な作品の居心地がよくなってきたような気がしています。

2024年1月は11冊と、まずまずのスタートでした。
今年も面白いミステリとたくさん出会えますように。

感想も引き続きヨタヨタと書いていきたいと思っていますので、今年分もよろしくお願いします。







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