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Bad Buddy EP2~4 [Bad Buddy [タイ・ドラマ]]

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感想を書いたばかりのタイ・ドラマ「Bad Buddy」、続けてEP2~4を観ました。

出てくるエピソードの基本ラインとして、ナノン演じる建築学科のプランとオーム演じる工学科のパット、それぞれが率いる仲間たちをかちあわせないよう苦労するというベースがあって、二人の仲が深まっていく構図になっているのですが、周りの人物の付け足し感がすごい......
まあ、メインカップルを除けば登場人物なんて添え物ではあるのですが、ここまでピュアに添え物感があるのは逆にすごいかもしれません。
「’Cause You're My Boy」(感想ページはこちら)などで主演をつとめているドレイクくんも完全な脇役です。

二人の行方に大きな影響を与えそうなのが、パットの妹。「2gether」(感想ページはこちら)にも出てきた Love という女優さんが演じています。二人の応援団という感じでしょうか?

EP4にもう一人鍵を握りそうな女性キャラクターが登場します。
プラン、パットと同じ高校だった Ink (インク)。
このあたりから、プランはもともとパットのことが好きだったような気配が強くなってきます。
パットとインクが仲良さそうにしているのを複雑な感じで見つめるプラン。高校のときと現在と二重写しで描かれます。

それにしてもプランのお母さんは強烈ですね。プランがパットとバンドを組んでいたのに激怒して転校させてしまうのですから......すごい。そこまで両家がにらみ合う理由がわからないのですが、すさまじい。

最期に、EP2 にしっかり暮らしているらしいプランと、まあだらだらしているパットが対比されて朝のシーンが描かれるのですが、そこから。
ぬいぐるみが気になる!

[Eng Sub] แค่เพื่อนครับเพื่อน BAD BUDDY SERIES _ EP.2 [1_4]_Moment.jpg


<2022.6.21追記>
感想のリストを作っておきます
Bad Buddy EP1
Bad Buddy EP2~4
Bad Buddy EP5
Bad Buddy EP6~8
Bad Buddy EP9
Bad Buddy EP10
Bad Buddy EP11
Bad Buddy EP12
Bad Buddy 全体を振り返って



タグ:タイBL
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キネマの天使 メロドラマの日 [日本の作家 赤川次郎]


キネマの天使 メロドラマの日

キネマの天使 メロドラマの日

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/05/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

<カバー裏帯あらすじ>
映画を愛する若手スクリプター・東風亜矢子(こちあやこ)。スクリプターとは、撮影現場で役者の動きや衣装など、映像に写るすべてを記録・管理する仕事だ。しかし、彼女の仕事はそれだけではない! 監督のあらゆる我が儘に翻弄されながら、スタントマンやヒロインの代役をこなし、さらに、殺人事件の謎解きまで――!? それでも亜矢子が頑張るのは、やっぱり映画が大好きだから! 舞い込む事件を解決し、クランクアップのその日を迎えられるのか!?


単行本で、2021年10月に読んだ最初の本です。
「キネマの天使 レンズの奥の殺人者」 (講談社文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2弾。

赤川次郎お得意の映画の世界・芸能界を舞台に多くの人物が入り乱れるストーリーを手際よくまとめていく作品で、楽しく読めた、のですが、1作目感想で書いたことが現実となり、新シリーズとして打ち出す必然性があまり感じられません。

まあ、そんなことは考えず、赤川次郎の自在な筆さばきを楽しめばよいのですが......




<蛇足1>
「暴行未遂ってことがあるのでね」
と言ったのは、倉田刑事だった。(244ページ)
素人のセリフとしてならこれで構わないと思うのですが、刑事が発言者だとすると困りますね。
暴行未遂......

<蛇足2>
「要するに、相沢は空腹のあまりに目を回したのだった……」(282ページ)
小説の地の文で「要するに」が出てくるのは珍しいですね。





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映画:シャドウ・イン・クラウド [映画]

シャドウ・イン・クラウド.jpg


映画の感想を続けて、今日は「シャドウ・イン・クラウドー」です。

シネマトゥデイから引用します。

---- 見どころ ----
『キック・アス』シリーズなどのクロエ・グレース・モレッツ主演によるサスペンスアクション。極秘任務を遂行するために爆撃機に乗り込んだ女性大尉が、謎の生物を目撃する。メガホンを取るのはロザンヌ・リャン。『Love, サイモン 17歳の告白』などのニック・ロビンソン、ドラマシリーズ「HAWAII FIVE-0」などのビューラ・コアレ、『ラストウィーク・オブ・サマー』などのテイラー・ジョン・スミスらが出演する。

---- あらすじ ----
第2次世界大戦中の1943年。連合国空軍の女性大尉モード・ギャレット(クロエ・グレース・モレッツ)は、最高機密をニュージーランドからサモアへ運ぶ任務を上官から下される。フールズ・エランド号と命名されたB-17爆撃機に乗り込んだ彼女は、男性乗務員たちから侮辱的なことを言われ、銃座へと押し込められる。その機内で、モードは右翼にまとわりつく謎の生物を発見する。


映画のHPから引用します。

INTRODUCTION

孤軍奮闘する女性パイロットの極限サバイバルを描く高度2500メートルのジェットライド・サスペンス・アクション

第二次世界大戦中の1943年。空軍の女性大尉モード・ギャレットが、フールズ・エランド号と命名されたB-17爆撃機に乗り込んだ。上官からの密命を帯びたモードの任務は、極秘の最高機密をニュージーランドからサモアへ運ぶこと。オール男性の乗組員たちから卑猥な言葉を浴びせられながらも、ひたむきにミッションを遂行しようとするモードだったが、銃座の窓から機の右翼にまとわりつく大空の魔物グレムリンを目撃。やがてグレムリンに機器を破壊され、日本軍のゼロ戦の奇襲も受けたフールズ・エランド号は、制御不能のパニックに陥っていく。はたしてモードは、この絶体絶命の危機を生き抜くことができるのか。そしてある重大な秘密を隠し持つ彼女が、この機に乗った本当の理由とは……。

 『キック・アス』のヒット・ガール役でブレイク後、相次いで多彩なジャンルの話題作に出演し、若手実力派のトップ女優へと成長を遂げたクロエ・グレース・モレッツ。ユニークな作品選びでも知られる彼女が主演を務めた『シャドウ・イン・クラウド』は、第45回トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門で観客賞を受賞したジェットライド・サスペンスだ。高度2500メートルを飛行する爆撃機の機内を舞台にした斬新なシチューションと、予想もつかないスリルとサプライズが炸裂するストーリー展開に目を奪われる快作である。

アドレナリン全開のクロエ・グレース・モレッツ“大空の魔物”グレムリンとの死闘、日本軍零戦との銃撃戦

 クロエ扮する空軍大尉の主人公モードは、究極の男社会の縮図というべき爆撃機に乗り込み、次から次へと想像を絶する試練に見舞われていく。鋭利な鉤爪を持つ伝説の怪物グレムリンの恐怖、忽然と現れた日本軍の零戦の襲撃。しかも身体の自由が制限された爆撃機の銃座に押し込められているモードは、傲慢でどこか頼りない男だらけの乗組員たちにも対処しなくてはならない。そんなまさしく孤立無援にして八方塞がりの状況のもと、モードは命よりも大切な荷物を守りながら捨て身のサバイバルを繰り広げていくのだ。

 独創的なシチュエーションを存分に生かしたサスペンスに加え、ホラー、アクション、ミステリーの要素も惜しみなく盛り込んだ本作は、荒唐無稽なパルプ・フィクション風の面白さに満ちあふれている。とりわけジョー・ダンテ監督の大ヒット作『グレムリン』はもちろん、TVシリーズ「ミステリー・ゾーン」とその劇場版『トワイライトゾーン/超次元の体験』における「2万フィートの戦慄」でも描かれたグレムリンの大暴れは、1980年代ホラーのテイストを今に甦らせたかのよう。ダイナミックなカメラワーク、編集、シンセサイザー音楽、視覚効果が一体化した怒濤の映像世界に圧倒されずにいられない。ハラスメント発言を連発する男たちを黙らせ、悪夢のような苦難に立ち向かうクロエのアドレナリン全開の熱演にも魅了される。

 ジェームズ・キャメロン監督作品『エイリアン2』などからインスピレーションを得て、本作を完成させたのは中国系ニュージーランド人の新鋭女性監督ロザンヌ・リャン。第二次世界大戦に従軍した女性兵士たちへのリスペクトを表明しながら、新たな闘うヒロイン像を鮮烈に描き上げたその確かな手腕は、今後のキャリアの飛躍を予感させずにおかない。


STORY
第二次世界大戦中の1943年8月。ニュージーランドのオークランド空軍基地から飛び立とうとしているBー17大型爆撃機、フールズ・エランド号に、モード・ギャレット空軍大尉(クロエ・グレース・モレッツ)が乗り込んだ。上官からの密命を帯びて派遣されたというモードの任務は、ある最高機密を収納した革製の大きなカバンをサモアまで運ぶこと。しかしフールズ・エランド号の乗組員7名は、爆撃機に女性が搭乗することに反発し、あからさまに嘲笑的な言葉を投げつけてくる。軍の指令書を示して搭乗を許されたモードは、狭苦しい砲台の銃座に押し込められ、唯一協力的な乗組員のクエイド二等軍曹(テイラー・ジョン・スミス)にカバンを預けた。

 やがて離陸したフールズ・エランド号は、雷鳴轟く悪天候のなか、高度2500メートルの上空に達した。そのときモードは右翼の下部で不気味にうごめく生き物の影を目撃するが、誰も彼女の報告を信じようとしない。するとハッチの故障によって銃座の中に閉じ込められたモードに、先ほどの正体不明の生き物が襲いかかってくる。鋭い鉤爪を持つその凶暴な生き物は、かねてから空軍兵士の間で噂になっている“大空の魔物”グレムリンだった。隠し持っていた拳銃でからくもグレムリンを撃退したモードだが、基地への身分照会によって「モード・ギャレットという兵士は存在しない」という事実が発覚し、乗組員たちから疑惑の目を向けられてしまう。しかし次の瞬間、日本軍の戦闘機が正面から接近。すぐさま機銃を握り締めたモードは敵機の撃墜に成功し、乗組員たちのド肝を抜いた。

 そしてフールズ・エランド号をさらなる悪夢が襲う。グレムリンが油圧装置を破壊し、他の乗組員もそのおぞましい姿を目撃したことで機内はパニックに陥った。機長のリーヴス(カラン・マルヴェイ)はこの一連の異常事態の原因が、モードが持ち込んだカバンにあるのではないかと考え、中身を確かめるよう部下に命じる。はたして、そのカバンには何が隠されているのか。極秘任務を装っていたモードの本当の目的とは何なのか。その驚くべき真実が解き明かされようとしたとき、新たに出現した零戦3機の攻撃を浴び、グレムリンが機内に侵入してきたフールズ・エランド号は極限の危機に見舞われていくのだった……。



いやあ、長く引用しましたが、饒舌なイントロダクションとあらすじです。
がんばって作成したHPなのでしょうね。

というのもこの映画、どう考えても駄作だからです(笑)。
この作品、この点からだけでも完全なB級なのですが、いや、もう、無茶苦茶ですよ。
グレムリン、日本軍、そして任務に関連する謎の箱。
どれも無理筋ですし、相互に連関がまったくないのもすごい。
主人公をピンチに陥らせるため、とはいえ、たまたまグレムリンが襲ってきて、たまたま日本軍が来ないはずの遠いところまで攻めて来て、そこへたまたま主人公が謎の任務と称して乗り込んでくる。
まあ、主人公を窮地に追い込むための偶然なので大目に見る必要があるのでしょうが......

この3要素の中身もバラバラです。
空想の存在であるグレムリン。リアリティはないですよね。
実在の存在である日本軍(零戦)。まあ、リアリティはあると言えばあるでしょう。
そして謎の箱にまつわる任務。これ、ネタバレになるので明かしませんが、リアリティがありそうに最初見えますが、実像が明らかになるとあまりのリアリティのなさに脱力します。
ひょっとしたら、リアリティがなさそうでリアリティのないグレムリン、リアリティがありそうでリアリティのある日本軍、リアリティがありそうでまったくリアリティのない任務という異なった3要素をぶち込んだ意欲作と捉えるべきなのか??

とかなんとかボロクソに言っていますが、わりとはじめの方で馬鹿馬鹿しい映画認定をして、まじめに見る映画じゃないなと、B級ぶりを眺めていたので、楽しんで観たことは観たのですが(笑)。

どうしてこの映画を日本に紹介しようと思ったのでしょうね?
ニュージーランドの映画って珍しいと思うのですが、これで紹介のトレンドが途絶えたりしないでしょうか? 心配になる感じです。




製作年:2021年
製作国:ニュージーランド/アメリカ
原 題:SHADOW IN THE CLOUD
監 督:ロザンヌ・リャン
時 間:83分






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Bad Buddy EP1 [Bad Buddy [タイ・ドラマ]]



タイのドラマの感想は基本的にはすでに観終わったものを順に書いていて、たまにリアルタイムで追いかけているものの感想を書いていますが、リアルタイムではないものの、今観はじめたドラマの感想を書いてみたいと思います。
「Bad Buddy」です。

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主演が、「The Gifted」シリーズ(感想ページはこちら)の Nanon (ナノン。上のポスターだと手前左側。奥の窓越しの部分では右側)と、「He is coming to me(彼は清明節に僕の隣のお墓参りにやってきた)」(感想ページはこちら)や「The Shipper」(感想ページはこちら)の Ohm(オーム、上のポスターの手前左側)。
どちらも確かな演技力を備えた俳優さんなので注目です。
また、Nanon はこれまでボーイズラブ・ドラマには出演していなかった――この表現は正確ではないですね。ボーイズラブ役では出演していなかった――のでその意味でも注目です。

いつものMyDramaListによると、2021年10月29日から2022年の1月21日にかけて GMM 25 で放映されたものです。
全12エピソード。各話55分とのことです。
Youtube で GMM TV のオリジナル動画を観ることができます。
日本語字幕はなく、英語字幕で観ました。

まずは予告編から。



この予告編には日本語の字幕がついていますね。
中で言われていますが、BL版ロミオとジュリエット、です。
隣同士で敵対している2家族の大学生2人をめぐるラブストーリー。
かたや建築、かたや工学、とBLによくある学部生という設定で、念のいったことに、双方のグループの仲が非常に悪い(笑)。なにかあれば喧嘩ばかり。
ナノン演じる Pran (プラン)とオーム演じる Pat(パット)自体はそこまでいがみ合っている感じはなく、むしろ幼いころの感じからもともとは仲良さそうな気配--どうでもよいことですが、二人の子供時代のエピソードが出て来て子役が演じているのですが、この子役がかわいくない......そういう演技指導をされているから、だとは思いますが、もっとかわいい子役いるだろうに。

いま EP1 を観終わったところなのですが、うーん、完全に導入部でしかないですね。
この二人の関係性を出発点に、二人が結ばれるというのはかなりハードルが高いように思われました。

また、これまで観てきたタイ・ドラマでは、EP1 に物語の主要な登場人物とキーとなりそうな設定がすべて盛り込まれていることが多かったのですが、この作品も同様だとすると、ほぼほぼこの二人だけで物語が展開しそうな雰囲気です。

もっとも主役の二人の俳優がしっかりした実力派なので、この二人に焦点があたることは当然なのですが、となると全編通して二人のいちゃいちゃ全面展開となるわけですか。それはそれですごいかも。

ということで、観たら感想を書いていきます。
(といいつつ、一気見しちゃいそうですが)


<2022.6.21追記>
感想のリストを作っておきます
Bad Buddy EP1
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Bad Buddy 全体を振り返って




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シャーロック・ホームズの十字架 [日本の作家 似鳥鶏]


シャーロック・ホームズの十字架 (講談社タイガ)

シャーロック・ホームズの十字架 (講談社タイガ)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/11/17
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
世界経済の鍵を握るホームズ遺伝子群。在野に潜む遺伝子保有者を選別・拉致するため、不可能犯罪を創作する国際組織――「機関」。保有者である妹・七海と、天野直人は彼らが仕掛けた謎と対峙する! 強酸性の湖に立てられた十字架の謎。密室灯台の中で転落死した男。500mの距離を一瞬でゼロにしたのは、犯人か被害者か……。本格ミステリの旗手が挑む、クイーン問題&驚天動地のトリック!


2021年9月に読んだ本ラストを飾るのは似鳥鶏「シャーロック・ホームズの十字架」 (講談社タイガ)
「シャーロック・ホームズの不均衡」 (講談社タイガ)に続く作品で、
第一話 強酸性湖で泳ぐ
第二話 争奪戦の島
第三話 象になる罪
という三話収録の連絡短編集です。
特殊な能力を発揮するホームズ遺伝子群の保有者という設定を生かして、不可能犯罪に淫する素敵なシリーズの第2弾。

第一話である「強酸性湖で泳ぐ」で、語り手が天野直人でないことにおやおやと思いますが、事件はいつも通り(?) 不可能犯罪です。強酸性湖に建てられた十字架。その十字架にくくりつけられた死体。
トリックも強烈でしたね。おまえは泡坂妻夫かっ、とひとりで突っ込んでいました。

第二話「争奪戦の島」は、密室状態の灯台の内部で発見された墜落死体。
このトリックはある海外作品のバリエーションでしょうか?(Amazon のページにリンクを貼っているので、リンクをたどる場合はネタバレ覚悟でお願いします)

第三話「象になる罪」のトリックも豪快です。ちょっと犯行現場を見てみたい(←悪趣味)。

ここでふと気になったのは......
このシリーズ、不可能犯罪を仕掛けるのが ”機関” なわけです。しかも国家レベルの。
となると、資金も人員も技術も制限なし。使い放題。
だからこそ、というトリックもいくつかこれまで描かれてきました。
通常のミステリ的思考であれば断念、放棄するようなアイデア、トリックも実現させてしまえる。
これは少々危険な状況ですよね。
似鳥鶏のこと、そこはうまくバランスを取ってくれるとは思いますが、逆の閉塞感をもたらさないか気がかりではあります。

一方で、物語の展開が、個々の事件の真相を暴くというものから、もっと大きな ”機関” をめぐるものに移行していくということでもあります。
第三話のタイトルは
「二頭の象が争う時、傷つくのは草だ」(321ページ)
というアフリカのことわざを踏まえています。
同時に
「名探偵がいるから殺人事件が起こる。そして名探偵が動き回ることで、死者が増えている。もしも世界から名探偵が消えたなら、どれだけの人が死なずに済むのだろうか。」(320ページ)
というテーマとも結びついていて、
「自分たちがやらなければ経済の均衡が崩れ、将来的にもっと多くの犠牲者が出る。だから辰海さんたちは、象となって草を踏み潰す罪を自ら引き受けている。
 その人たちが横にいるのに、一番下っ端で、背負う傷も十字架も軽い僕が勝手に、陽菜ちゃんに対して謝ることはできなかった。」(321ページ)
という感慨につながり、この第2巻のタイトル「シャーロック・ホームズの十字架」 (講談社タイガ)につながります。

だから、巻中に出てくる、
バス事故を辛くも逃れた親子が「バスを降りなければよかった」といった理由
というシチュエーションパズルに、一般的な答とは別の答を直人が導き出すシーン(335ページ)はなかなか感慨深いです。

あとがきによると、「このシリーズはまだまだ続きます」とのことですが、2016年11月にこの「シャーロック・ホームズの十字架」が出た以降続きは出ていません。心配。


<蛇足>
「二度とやるな。一度あった幸運をもう一度期待するのは、最もありふれた破滅のパターンの一つだ」
「はい」
 最近気付いたことだが、辰海さんは真剣になった時ほど喋り方が翻訳調になる傾向がある。(198ページ)
「最も〇〇の一つ」という収まりの悪い表現がしっかりフォローされていますね。さすが似鳥鶏




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鼠、十手を預かる [日本の作家 赤川次郎]


鼠、十手を預かる

鼠、十手を預かる

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/01/29
  • メディア: 単行本

<帯カバー裏側あらすじ>
弱きを助け強きから「盗む」
大泥棒の今宵の獲物は
壱、凍えるような雨の朝、古びた橋の上にたたずむ娘。彼女の待ち人とは。「鼠、無名橋の朝に待つ」
弐、捕物に遭遇した治朗吉。成り行きで負傷した目明しの代りを務めることに「鼠、十手を預かる」
参、小袖が浪人から助けた女。「いずれ斬られて死ぬ身」と語るその理由は。「鼠、女にかげを見る」
肆、千草が殺しの疑いでお縄に。隠居武士の妾宅で起きた事件を解き明かす。「鼠、隠居を願う」
伍、江戸中を恐怖に陥れた、人をかみ殺す赤い眼の狼。狼を操る女の目的は。「鼠、獣の眼を見る」
陸、奉公先で漆の箱に入った書状を託された女。運び出すのは命がけで――「鼠、恋心を運ぶ」

シリーズ第12弾で、単行本です。

これまでいい人度がどんどんアップしてきた鼠がついに目明しに! というキャッチ―な話です。
火傷でしばらくで歩けなくなった定吉のかわりに十手をしばらく預かる、という設定ですが、十手を持ったところで次郎吉は次郎吉、いつもと変わりません。
この変わらないところを描きたかったのかもしれませんね。
最後には
「十手のために働くのも悪くない?」
と聞かれて「こんな物、重たくってしょうがねえ。千両箱の方がよほど軽いぜ!」
と小袖にこぼす始末です。
次の「鼠、女にかげを見る」ではいつもの、十手を持たない次郎吉に戻っています。
せっかくだから、一巻まるまま、この趣向で通してもらったらおもしろかったのに。
古来、盗賊がピュアに探偵役を務めるのもミステリでは王道なのですから。






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岩窟姫 [日本の作家 近藤史恵]


岩窟姫 (徳間文庫)

岩窟姫 (徳間文庫)

  • 作者: 史恵, 近藤
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/02/07
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
人気アイドル、謎の自殺――。彼女の親友・蓮美は呆然とするが、その死を悼む間もなく激動の渦に巻き込まれる。自殺の原因が、蓮美のいじめだと彼女のブログに残されていたのだ。まったく身に覚えがないのに、マネージャーにもファンにも信じてもらえない。全てを失った蓮美は、己の無実を証明しようと立ち上がる。友人の死の真相に辿りついた少女が見たものは……衝撃のミステリー。


2021年9月に読んだ12冊目の本です。
『このミステリーがすごい! 』大賞・隠し玉2冊が立て続けに(個人的に)大外れだったので、お口直しを求めて、安定の近藤史恵に。

人気女性アイドルや芸能界......もっとも縁遠いといってもいい世界ですが、しっかり浸りました。
自殺したアイドル沙霧の日記に、いじめが原因だと名指しで書かれた蓮美の視点から謎を探っていく物語になっています。

ストーリー展開上、どうしても蓮美が自己を振り返るシーンが多くなるのですが、そのそれぞれが洞察に満ちています。
「でも、今になってわかる。そのコンプレックスはただの言い訳だ。
 うぬぼれ続けるのも苦しいから、息継ぎをするように自分の欠点を数え上げていただけだ。
 背が高いことも、きつい顔も、蓮美の魅力であることはちゃんと理解していた。剛毛なのも、大した欠点ではない。
 欠点だってちゃんとわかっている自分でいることが、心地よかっただけだ。
 自分には嘘をつけないという人がいるけど、それは正しくない。
 人は自分にも嘘をつき続ける。」(129ページ)

沙霧の日記が偽りだと信じて探求を始めた蓮美ですが、途中、あの日記を書いたのが実際に沙霧だったのでは、となるシーンも印象深いです。
「自分の死と一緒に、わたしを引きずり落とすため。
 だとすれば、これ以上探るべき真実はない。すべてがおさまるべきところにおさまってしまう。」(219ページ)
ミステリで使われる逆転の構図が、うまく使われています。
ここ以外でも、逆転の構図はテーマと密接に結びついていて素晴らしい。

タイトルの「岩窟姫」は当然「モンテ・クリスト伯(巌窟王)」を踏まえたもので、無実の咎に囚われ、そこから抜け出そうと苦闘する主人公蓮美のことですが、蓮美だけを指しているものではありません。

この作品が扱っている事件、題材は、手垢のついたものでしょう。
そんな題材でも、きちんと物語は広がっていく、拡げていくことができる。
プロがプロらしく手腕を存分に発揮した作品だと思います。

ところで、文庫本で読んだのですが、上で引用した書影は持っているものとは違います。
持っているバージョンは、Amazon では kindle版の画像のようですね。
そちらの末吉陽子さんによる装画が印象的だったので、引用しておきます。

岩窟姫 (徳間文庫)

岩窟姫 (徳間文庫)

  • 作者: 近藤史恵
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2018/02/07
  • メディア: Kindle版



タグ:近藤史恵
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何様ですか? [日本の作家 さ行]


何様ですか? (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

何様ですか? (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 枝松 蛍
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
中学時代に養父から性的暴行を受けた女子高生・平林美和は、義父に殴り殺された弟 “ユウちゃん” を内面化し、その囁きに従って “ファイナルプラン” と名づけられた大量殺人計画を遂行しようとする。一方、倉持穂乃果は意識が高く社交的で、自らの日常や読んだ本の感想をブログに書き続けていた。そんな倉持を嘲笑しながら着々と計画を進める平林であったが、その先には思いがけない事態が――。


2016年の『このミステリーがすごい! 』大賞・隠し玉作品です。
前回感想を書いた才羽楽の「カササギの計略」 (宝島社文庫)と同時刊行。
あちらがホワイトどんでん返し、こちらがブラックどんでん返し、というのが出版社の謳い文句です。

「カササギの計略」 (宝島社文庫)は到底ホワイトとは思えない(&受け入れがたい)という感想を抱きましたが、この枝松蛍の「何様ですか?」 (宝島社文庫)は、宣伝文句通りブラックですね。
ただ、ブラックとはいっても、登場人物がブラックというにとどまらず、作者がブラックです(笑)。

おそらくはほとんどの読者の想定を超えたラストを迎えると思うのですが、超え方がねぇ......
超えたというよりはむしろ、ずれた、と言いたくなるような感じです。
どんでん返しは確かにどんでん返しなのですが......

福井健太の解説で
「本作は三つの視点――平林の独白、男子が兄に宛てた手紙、倉持のブログで構成されている。平林のパートは辛辣な思考と言動に満ちており、とりわけ小説家・星村しおりの扱いは凄まじい。しかし人間の悪意は一様ではなく、あらゆる角度に増殖し、際限なく深化しうるものだ。その相克を通じてより強い悪意を描くドス黒い物語なのである。」
と書かれていて、見事な要約に感心しますが(だから引用しちゃったのですが)、いや、まさかねぇ。物語がそういう方向に向かうとはねぇ。

到底おすすめはできませんが、とにかく不快な話、強烈な話が読みたい方に(笑)。


<蛇足>
「特定の異性に入れ込んでいることを『夢中』と表現するのは最も気持ちの悪い言葉の使い方のうちのひとつだ。」(36ページ)
皮肉のきいた文章ではありますが「最も~のうちのひとつ」という気持ちの悪い表現が使われていて笑ってしまいました。




タグ:枝松蛍
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カササギの計略 [日本の作家 さ行]


カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

カササギの計略 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 才羽 楽
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: 文庫


<カバー裏あらすじ>
僕が講義とバイトを終えてアパートに帰ると、部屋の前に見知らぬ女がしゃがみこんでいた。彼女は華子と名乗り、かつて交わした約束のために会いに来たという。なし崩しに同棲生活を送ることになった僕は、次第に華子へ惹かれていくが、彼女は難病に侵されていて、あとわずかな命しかなかった……。ともに過ごす時間を大切にする二人。しかし、彼女にはまだ隠された秘密があった――。


2016年の『このミステリーがすごい! 』大賞・隠し玉作品です。
前年の第14回『このミステリーがすごい! 』大賞の応募作品を改稿したものです。
このときの隠し玉は2冊同時刊行で、もう一冊が枝松蛍の「何様ですか?」 (宝島社文庫)
出版社としてセットで売り出す意向が強く、この「カササギの計略」 (宝島社文庫)がホワイトどんでん返し、「何様ですか?」 (宝島社文庫)がブラックどんでん返し、二つで白と黒、らしいです。

この宣伝の仕方は作者のせいではないので、それについてあれこれ指摘しても作者にとって迷惑以外の何物でもないとは思うものの......

これのどこが白いのでしょうか? 恐縮ながら、真っ黒ではないかと。
これを「心温まるホワイトどんでん返し」だの「温かな気持ちで読後の余韻に浸ることができる」だの言う人がいるということ自体が信じられない。

ホワイトどころか、非常に気持ち悪いプロットを持った作品です。
この作品の仕掛け、タイトルにならっていうと計略がミステリとしてみた場合の肝だと思うのですが、あまりにも黒く、かつ(心理的に)非現実的なのが致命傷。
主人公である僕を取り巻く物語のほかに、ベビーさんというベビーカーに人形を乗せて歩き回っている女性のエピソードが出てくるのですが、こちらも無理筋。

突然押しかけて来た女が難病に侵されていて、といういかにもベタな設定をひねってみようと考えて思いつかれた物語なのかな、とも考えましたが、ちょっとこのパターンは拒否反応を示さざるを得ないですね。
登場人物の行動があまりにも受け入れがたい。

計略に触れたので、ついでにカササギにも触れておくと、こちらは
「七月七日にカササギの群れが天の川にやってきて、羽を広げて橋を作るんだって。そして織姫はその橋を渡り、牽牛に会いに行くんだ」(248ページ)
というセリフからとられています。
このタイトル自体が一種のミス・ディレクションとして働いているところはいいなと思えたのですが、いかんせん根幹をなすプロットの後味の悪さを払いのける力はありませんでしたね。
ラストはハッピーエンディングっぽい書き方がされていますが、これ、ハッピーエンディングではないと思います。


<蛇足1>
「エンジンをかけて、クーラーを全開にして」「それから助手席の窓以外、全部開けて」「運転席のドアも閉めて」助手疫のドアを開け、開けたと思ったらすぐに閉めた。それを十回ほど繰り返した。
(102~103ページ)
直射日光のあたるところに停めていて、社内の温度がサウナのように上昇しているクルマの社内温度を下げる方法のようです。すごいな。
機会があれば試してみようと思います。

<蛇足2>
「駅前のコインパーキングに車を停めて、英国風の時計台を横目に通り過ぎ」(233ページ)
英国風の時計台? おそらくビッグ・ベンのようなのをイメージすればよいのでしょうね。
あれを英国風というのかどうかは知りませんが。





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