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花嫁は三度ベルを鳴らす [日本の作家 赤川次郎]

花嫁は三度ベルを鳴らす (ジョイ・ノベルス)

花嫁は三度ベルを鳴らす (ジョイ・ノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2020/02/03
  • メディア: 新書

<カバー裏あらすじ>
旅先で埋葬される妻
そこは奇妙な風習が残る土地だった……
実業家の片瀬耕一は妻の靖代、その妹である早紀と東欧を旅していた。トランシルバニアに入ったとき、靖代は体調を崩して亡くなってしまう。異国の地だったが、その土地に埋葬することに。そこには奇妙な風習があり、棺の中で目覚めた時に鳴らすベルを墓標の十字架に取り付けるのだ。鳴るはずのないベルが鳴り響くとき、女子大生・亜由美と相棒ドン・ファンは事件に巻き込まれていく! シリーズ第33弾! 表題作ほか「花嫁は滝をのぼる」収録。


花嫁シリーズも33作目です。奥付は2020年2月になっています。
表題作「花嫁は三度ベルを鳴らす」と「花嫁は滝をのぼる」の2話収録。


「花嫁は三度ベルを鳴らす」は、ドラキュラの故郷といわれるトランシルバニアが舞台ですね。
「花嫁は三度ベルを鳴らす」というタイトルは、当然ジェームズ・M. ケインの郵便配達は二度ベルを鳴らす (新潮文庫)を踏まえたものですが、内容はまったく関係ないですね。
「花嫁は三度ベルを鳴らす」のプロット、読み覚えがあるような気がしてならないのですが......気のせいでしょうか? 赤川次郎の別のシリーズで似たようなお話、ありませんでしたっけ?
「吸血鬼はお年ごろ」シリーズかな?
「吸血鬼に鐘は鳴る」 (集英社オレンジ文庫)(感想ページはこちら)をダブらせて読んだのかもしれません。
というわけで、いつもの赤川次郎の作品世界です。

「花嫁は滝をのぼる」は、世界陸上大会の開催をめぐる政治家、国の横暴と、その被害にある弱者という、こちらも違うかたちでの典型的な赤川次郎の作品世界です。
この種の話、読むほうとしてはもうすっかり飽きてしまっているのですが、大事なことなので、繰り返し、繰り返し訴えていかなければ、と考えておられるのでしょうね...... いわゆる劇場型の決着になっているのがその証拠かな?



<蛇足1>
「ここが、いつも亜由美の部屋だったり、二人きりしかいない、湖を見下ろす湖畔のベンチだったらよかったのだが」(14ページ)
「~たり、~たり」が崩れてしまっていますね。長い文章なのでミスしやすいところではありますが。
あと、湖を見下ろすようなところも、湖畔と呼べるのでしょうか? ちょっと気になりました。

<蛇足2>
「何かご用ですか?」
 用があるから来たのだろうが、谷山の方もそこへ考えが至らない。(15ページ)
「何かご用ですか?」というセリフ、何の用かを話すよう促すセリフであって、必ずしも用のない人に向けたセリフとは限らないように思うのですが......「考えが至らない」と言われてしまっては、谷川准教授かわいそう。久しぶりに登場したのですが、たいした役割を果たしませんしね......残念。

<蛇足3>
「あなたなんですね、航空券を送って来たの」
「ファーストクラスにできなくてすみません」(34ページ)
亜由美のところへトランシルバニアへ向かう航空券が誰だかわからない人物から送られてきた際の電話での会話です。
ところが、そのあとに
「ファーストクラスでこそなかったが、成田に着いてみると、亜由美たちの席はビジネスクラスに帰られていた。」(37ページ)
となっています。
すると、元のチケットはエコノミークラスだったわけですよね。このケースで「ファーストクラスにできなくて」と言いますでしょうか? ビジネスクラスのチケットだったならともかく、エコノミークラスのチケットでは、「ビジネスクラスに(も)できなくて」というところじゃないかな、と思うのですがーー最終アップグレードしてビジネスクラスにしてはいるようですが。

<蛇足4>
「カッパ、はおった方が」
「そうね、滝の近くにいくんだから」(116ページ)
大学生の会話です。最近の大学生でも「カッパ」という語、使うんですね。
ヤッケとかカッパとか、半ば死語と化していると思っていました。

<蛇足5>
開催国に立候補する国はいくつもあったが、北山はあらゆるつてを利用して、立候補を取り下げさせたり、他国のマイナスイメージを、マスコミを使って流した。(145ページ)
ここも長めの文章で「~たり、~たり」が崩れてしまっていますね。
それにしても、世界陸上大会の開催国決定に影響を与えるために他国のマイナスイメージを流すとすると、ここでいうマスコミは日本のマスコミではなく、主として海外に影響力のあるマスコミということになりますね。元総理とはいえ、そんな海外にまで影響力を及ぼせるなんて、日本の政治家では珍しい気がします。




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Dark Blue Kiss その2 [タイ・ドラマ]

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タイのドラマ「Dark Blue Kiss」の感想の続きです。

この告知だと、カオ(右側です)は穏やかな顔していますが、そんな余裕こいてる場合じゃないよ、という感じの物語展開になっています。
「Kiss me again」で無事カップルになり、ピートの父親にも認めてもらってめでたし、めでたし。
「Kiss」で仲間にも知られましたが、時間的には「Dark Blue Kiss」の方が後なのに、まだ仲間には知られていないという設定へと変更が加えられています。
(細かい点だと、カメラが得意なのはピートで、カオはセンスがない、ということになっています)

オープニングが迫力満点で、ピートが怒り心頭という感じで、ノンを突き飛ばし、カオに詰め寄っています。周りの仲間が愕然とするほどの権幕。
何事か、と思いますが、そこで物語は2ヶ月前に遡ります。

すると、まあ、仲睦まじいこと。いいことですが。
ただ、父親に知られているピートと違って、カオは母親に打ち明けられていない。
でも、あまりの仲のよさに、カオのお母さんが気づきそうになっている......(というか気づいていますよね、きっと)という状況。
ちなみにピートのお父さんは引き続き最高です。EP6でピートにコンドームを渡すシーンまであります!

ピートは、先輩の運営するサイトが主催する About Aboyz というコンテストに参加しろと迫られているが、渋っている。けれど、断りに行った場で、ノンと遭遇、不愉快な目にあい、ノンのからかうような態度に腹が立ち、ノンを打ち破るために気が変わった、参加する、と言ってしまう。
カオは、サンのカフェでノンと出会う。注文の順でもめ、チョコレートフラペチーノを服にかけられ...... ノンの服を借りることに。
カオは、母親を助け、妹の学費もアルバイトの家庭教師で稼いでいる。
頑張っているよい子なんですよね。母親の勤める学校の校長先生が、カオの家庭教師の評判を聞きつけ、息子の家庭教師になってくれとカオに頼む。その息子が、なんとノン。(ここまでEP1)

いつものことですが、ここまででこの後の展開の重要な要素がすべて盛り込まれているのがいいですね。

このあとEP2で、サンのカフェでカオがノンに教えているところへピートが来合せ、ノンと言い合いになったりします。ノンもわざとピートを挑発するような言動を繰り返すのですね。
ノンをめぐってピートとカオも言い合いに。
ノンに教えるのをやめろというピートに対し、それは無理だと一旦なだめたカオでしたが、その後のタイミングで、ノンに教えることで二人がけんかになるのなら教えるのをやめると言ってしまいます。

[Eng Sub] Dark Blue Kiss จูบสุดท้ายเพื่อนายคนเดียว _ EP_2 [4_4]_Moment.jpg

やめようと決意したカオでしたが、母親に連れられて校長のところへ行ったら断れない展開に。
このあと細かい展開は紹介するのを省きますが、ピートに隠れてノンに教え続けることが騒動の最大の原因となります。
また隠しているのがばれそうになる、という点で、ハラハラドキドキの展開が続きます。

物語の視点がカオ・サイドに置かれているシーンが多いので、ピートに打ち明けられないカオに同情しやすい建付けになっていますが、この物語全体として、カオがいけないな、と思ってしまいました。
できもしないことを約束し、実際にできないことが確定してもそのことを打ち明けないというのは、恋人とかいう以前に友だちとしても問題があるなぁ、と。
言わない間に、どんどん無理が重なっていく。
ピートは、繰り返し「カオを信じる」「嘘をつかないでくれ」とカオにいいます。なにかがおかしいことには気づいているんですね、きっと。
で、カオが嘘をついていたことを知ってしまう。
それが爆発したのが冒頭のシーンだった、というわけですね(EP9)。

とこう書いてきましたが、そして今でもカオが悪かったとは思っているのですが、カオのしたことを考えてみると、実は大して悪いこと、していないんですよね。
やめるといったのにやめずに、ノンの家庭教師を続けていた、それだけです。そしてそうなってしまった事情もわかっている。
嘘をついていたのは悪いですが、裏切りというほどのことをしたわけでも、浮気をしたわけでもない。
恋人同士の仲が壊れるような事態ではないのでは、とも思います。
ところがですねぇ、ピートの人物像があまりにもリアルに出来上がっているので、ピートが激怒しているのがすんなり理解できるんです。
脚本がよくできている、ということもありますが、やはり演じている Tay の功績だなと思います。素晴らしい。
緊迫感あるシーンだけではありません。
たとえばEP8のレストランのシーンなんか、リラックスムードでふざけあっている様子が、いきいきと伝わってきます。
当初はカオを演じている New 目当てで見はじめた Kiss シリーズですが、もうすっかり Tay のファンです。あっ、誤解のないように書いておきますが、カオ演じる New も演技力あるなーと思ってみています。

さて、物語は二人が破局を迎えて終わり、というわけではありません。
なんとかピートとの仲を取り戻そうと奮闘するカオに(うまくいかないのですが)、さらにつらい出来事が降りかかります。
それもノンの計略が背景にあるのですが(といってもノンはカオを追い詰めようとしたわけではないのですが)、このドラマはどこまでカオを追い詰めれば気がすむのかと思うくらいの窮地にどんどん追い込んでいきます。ピーク(というのかボトムというのか)はなんとEP11。
EP12 で終わらせないといけないのに、収拾つくのかなと心配になるくらいの落とし方です。
ボーイズラブで、ゆるゆる楽しく観ようなんて思っていたら、すごい衝撃です。これ、リアルタイムでエピソードごとに見ていたら、たまらなかったでしょうね。

でも、もっとすごいのは、そこからの決着の付け方。
EP12 の怒涛の展開はさすがです。
いや、参りました。
小道具の効果的な使い方をはじめとして、今までに丁寧に埋め込まれていた伏線を一気に回収して、ラストへつなげていきます。
いや、お見事。
しかもそれが同時に仲間たちへ、ピートとカオがつきあっていることをオープンにすることにつながる、という周到さ。

記念に(?) 決着ついた後の、プールでのキスシーンを挙げておきます。
どこかで見たようなシーンだっていいのです。カオとピートが幸せならば。

[Eng Sub] Dark Blue Kiss จูบสุดท้ายเพื่อนายคนเดียว _ EP_12 _Moment.jpg

このドラマの音楽も気に入っています。
オープニングのスタイリッシュな感じの曲もいいですが、Tay と New が歌っている曲があります。
英語タイトルが"No Fairytales" という曲です。
YouTube に英語字幕つきでアップされていますが、どうもオフィシャルっぽくないのでリンクははりません。下の部分をコピペして検索すれば出てくると思います。
ドラマの緊迫感とは違い、いかにもポップな感じの曲です。
BL OST | DARK BLUE KISS | No Fairytales - Tay Tawan, New Thitipom (Thai+Rom+EngTrans Lyrics)
Tay Tawan X New Thitipoom - ไม่มีนิยาม (No Fairytales) (Thai/Rom/Eng) Lyric Video

ということで、観る前の前評判にたがわず、ピートとカオのパートはとてもよかったです。
さすがにこの続編作るのは無理だろうな......





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Dark Blue Kiss その1 [タイ・ドラマ]

タイのドラマ「Dark Blue Kiss」の感想です。




「Kiss」(感想ページへのリンクはこちら
「Kiss me again」(感想ページへのリンクはこちらこちら
と観てきて、ようやくたどり着きました。「Dark Blue Kiss」に。
物語の時系列としては、「Kiss me again」→「Kiss」→「Dark Blue Kiss」の順かと思うのですが、いつくか設定に変更が加えられており、「Kiss」、「Kiss me again」のイメージのままいると、あれっ? と思うところがあちこちにあります。
この辺の柔軟さはタイドラマの持ち味なんでしょうか?
ほかのドラマでも、続く際にはこういうことがよくあるようです。

さて、「Dark Blue Kiss」ですが、MyDramaListによる2019年10月から12月にかけて GMM 25 で放映されたようです。
YouTube に、GMM TV によりアップされています。
EP1 から EP12 まで、各エピソード50分くらいです。
YouTubeでは、各エピソード4分割されていまして、合計48本ですね。
こちらは日本語の字幕が用意されていたのですが、今確認してみるとなくなっていますね......また日本のどこかが版権を取得したのでしょうか? 絶対面白いので、日本でも売れるとよいのですが。
YouTube ↑ のリンクは、GMM TVの Dark Blue Kiss のリストのページです。

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スタイリッシュという語を目指したかのような告知ですね。
各回の最初に流れる映像もタイトル通りダークブルーを基調にしたものになっています。
音楽もかっこいい感じです。

画面左の3人を上から紹介しますと、
一番上の男性は、レイン。カオの友人、サンの弟、モークの仲間、です。
女性は Manow(マノウ)。
演じているのは Patchatorn Thanawat、愛称 Ploy。
「Kiss」「Kiss me again」では男女カップルの数がボーイズラブカップルの数を上回っていましたが、この「Dark Blue Kiss」では逆転していまして、貴重な(?) 男女カップルです。
割と葛藤なく、あっさりカップルになった印象。
でも、普通にかわいいカップルという感じになっていて、好感が持てましたね。

最後の一人、床に座る形となっているのが Non(ノン)。
ピートとカオの仲をかき乱す高校生です。
演じているのは Chayapol Jutamas、愛称 AJ。
「He is coming to me」(感想ページはこちらこちら)に双子の兄弟である JJ と一緒に出ていましたね。
為念 AJ は「2gether」(感想ページはこちら)に出ていないほうです。
彼のことは、ピートとカオの話をする際に触れます。

右側の座っている男性二人が、もう一組の方のメインになります。
向かって左の方の男性が、「Kiss me again」にも出てきた Sun(サン)。
カオの友人 Rain(レイン)の兄で、カフェを営んでいます。
カオに好意を持っていたようですが、この「Dark Blue Kiss」では整理済の状態ですね。
演じているのは Suphakorn Sriphothong、愛称 Pod。Poddというスペルの場合もあるみたいですね。
その右側が Mork(モーク)。レインの友だちです。ピートと対立するかたちで「Kiss me again」にも出てきましたね。ぶっきらぼうで、喧嘩っ早く、粗暴な感じで設定されています。
演じているのは Gawin Caskey、愛称 Fluke。
鬱陶しそうな顔をするのがうまいですね。

「Kiss me again」で描かれたピートとカオの仲もそうでしたが、最初は仲悪く、その後......という展開です。
「Kiss me again」の場合、ピートは当初カオのことを心底嫌っている一方、どうもカオは嫌ってはいなかった設定のようだったのと同様、こちらの二人も、サンは当初モークのことを嫌っていたけど、モークはそれほどでもなかったような印象を受けます。で、実際に仕掛けるのは、ピートとサンの方、というのがおもしろいですね。こういうパターンがゴールデンパターンなんでしょうか?

正直な感想を申し上げると、こちらのカップルの話は、つまらないわけではありませんが、さほどおもしろいとも思いませんでした。
バリスタのコンテストに挑む、というのが大きなトピックになっているのですが、コンテストの中身も、そのためにとるサンたちの対策も、今一でした。
モークが手伝って前進する、それでサンとモークの仲が深まるきっかけになる、というのはいいのですが、ちょっとエピソードがあまりしっくりくるものになっていないのが残念。

好みの問題もあると思いますが、やはりピートとカオのエピソードがいいですね。
ピートとカオについては明日書きますが、その1の最後に予告編を。



この予告編はそれなりにおもしろく作ってありますが、ちょっと本編のおもしろさとはずれたところを目指して作られているような気がしています。



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バイバイ、ブラックバード [日本の作家 伊坂幸太郎]


バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/03/14
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
星野一彦の最後の願いは何者かに〈あのバス〉で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。そんな彼の見張り役は「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」――これらの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。なんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー。〈特別収録〉伊坂幸太郎ロングインタビュー。


この「バイバイ、ブラックバード」 (双葉文庫)、帯に「長編6冊分にも匹敵するおもしろさ!」と書いてありまして、5人の恋人たち+1 で6冊分ということなんだと思うのですが、これ、ある意味ネタバレかなぁ、と変な心配をしてしまいます。

この前に読んだ伊坂幸太郎の作品、「オー! ファーザー」 (新潮文庫)(感想ページはこちら)のカバー裏のあらすじに「面白さ400%」とあって、そちらは父親一人につき100%のおもしろさということだと思われるのですが、こういう惹句、伊坂幸太郎につきものなのでしょうか(笑)。

「オー! ファーザー」は、母親が四股!をかけていて、結局父親4人という状況になっているという設定でしたが、今度の「バイバイ、ブラックバード」は五股! こっちのほうがうわてですね。

「オー! ファーザー」に「伊坂ワールド第一期を締め括る」と書かれていましたが、その直後の「バイバイ、ブラックバード」はいつもながらの伊坂節(?) を十分楽しむことができました。

現実と地続きのようでいて、不思議とファンタジック。それでいて縁遠い感じがしない。
この感触を楽しむことこそ、伊坂幸太郎を読む喜びのひとつ。
存分に楽しめます。

この作品でおもしろいのは、5人の恋人それぞれのエピソードもさることながら、やはり主人公星野一彦の御目付役(?) の繭美ですよね。
こんなやつ絶対いないや、と思うのに、なぜか親しみを覚えてしまう。いや、こういう人物、身近にいたら嫌でしょうけど、読んでいる間の近しさは不思議です。

とても強く印象に残っているのは女優の出てくる「Bye Bye Blackbird V」ですね。
<余談ですが、この本、目次ではアルファベット表記なんですが、各ページにいくと、「バイバイ、バラックバード V」という風にカタカナ表記なんです>
大きくなったら何になるかと訊かれて「パン!」(パン屋さんではなく、パンです)と答える幼稚園児、最高です。

ちなみに、「Bye Bye Blackbird V」では、「バイ・バイ・ブラックハード」という曲が紹介されます。
『悩みや悲しみをぜんぶつめこんで行くよ。僕を待ってくれているところへ。ここの誰も僕を愛してくれないし、わかってもくれない』というような歌詞らしいです。
また「ブラックバードって、不吉というか不運のことを指しているみたいですよ。バイバイ、ブラックバード、君と別れて、これからは幸せになりますよ」と解説?されたりもします。
本の内容と歌の内容が少しずれているのもまたポイントなのでしょうね。



タグ:伊坂幸太郎
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笑う警官 [海外の作家 マイ・シューヴァル ペール・ヴァール]


刑事マルティン・ベック  笑う警官 (角川文庫)

刑事マルティン・ベック 笑う警官 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/09/25
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
反米デモの夜、ストックホルムの市バスで八人が銃殺された。大量殺人事件。被害者の中には、右手に拳銃を握りしめた殺人捜査課の刑事が。警察本庁殺人捜査課主任捜査官マルティン・ベックは、後輩の死に衝撃を受けた。若き刑事はなぜバスに乗っていたのか? デスクに残された写真は何を意味するのか? 唯一の生き証人は、謎の言葉を残し亡くなった。捜査官による被害者一人一人をめぐる、地道な聞き込み捜査が始まる――。


「ロセアンナ」(角川文庫)(感想ページはこちら
「煙に消えた男」(角川文庫)(感想ページはこちら
「バルコニーの男」 (角川文庫)(感想ページはこちら
に続く、マイ・シューヴァル ペール・ヴァールーによる、マルティン・ベックシリーズ第4作でアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作です。
警察小説の金字塔、名作中の名作、ですね。

旧訳版でも読んでいるのですが、正直、あまりピンとこなかったんですよね。
正直、つまらなかった。
市バスでの大量銃殺事件、そこに警官がいた、ということと、雨、雨、雨で陰鬱だったことだけ覚えていましたが、それ以外はさっぱり記憶に残っておらず......

新訳なって再読したわけですが、このパターンのいつものことながら、昔の自分を叱りつけたい。ちゃんと読め、と。
(それでも、作風があまりにも暗いので、好き嫌いでいうとあまり好きなほうではありませんが)

前作「バルコニーの男」は、あまりミステリらしくないという感想を抱きましたが、この「笑う警官」(角川文庫)は紛うことなきミステリです。

タイトルの「笑う警官」はいろいろな解釈ができると思いますが、直接的にはマルティン・ベックが娘からクリスマスプレゼントとしてもらうレコードのタイトルが「笑う警官の冒険」、最初の曲のタイトルが「笑う警官」というエピソードでしょうか(320ページ~)。
娘は「信じられないほどおかしいわよ」というけれど、マルティン・ベックは「口元を緩めることさえできなかった」というものです。
巻末に収録されているエッセイで、オーサ・ラーソンが「なぜマルティン・ベックは笑わない?」とタイトルとして掲げているように、マルティン・ベックは笑わないのです。
唯一「笑う警官」と呼べそうなのは、解説で杉江松恋がいうとおり被害者のステンストルム刑事なのですが、その唯一の笑う、笑える警官が被害者として殺されてしまうというのでは、陰隠滅滅とした雰囲気に拍車もかかろうというのものです。

舞台であるストックホルムやスウェーデンのことは、今も昔もよく知らないのですが、驚くのはこの作品、1968年出版ということ。50年以上も前の作品とはとても思えません。
マルティン・ベックやコルベリたちは、今まさにストックホルムで暗い顔をして捜査しているのではなかろうかと思えるくらいです。

非常にリアルに感じられる登場人物たちと捜査になっていまして、それがこの作品の最大の長所かと思います。
被害者、特にステンストルム刑事の性的な私生活に踏み込んだ部分があるのが気になりますが(どうも、マイ・シューヴァル ペール・ヴァールーの作品には性的な要素が欠かせないようなそんな感じを受けています)、地道な捜査は充実しているな、と思えましたし、解決に至る過程も自然です。
ただ、その分、ミステリ的な興趣には乏しい、というのか、派手なトリッキーさはありません。だから、旧訳版を読んだ際、つまらなかったと思ったのでしょう。

こういう作品も立派なパターンとして今は認識していますので、とても楽しく(暗い作品ですが)読みました。
新訳は次の「消えた消防車」 (角川文庫)で途絶えてしまっているようですが、ぜひ再開してほしいです。




原題:Den skrattande polisen
作者:Maj Sjowall & Per Wahloo
刊行:1968年
訳者:柳沢由実子








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イヴルズ・ゲート 黒き堕天使の城 [日本の作家 篠田真由美]


イヴルズ・ゲート 黒き堕天使の城 (角川ホラー文庫)

イヴルズ・ゲート 黒き堕天使の城 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2016/12/22
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
考古学者のルカが姿を消した。ナチス・ドイツの研究機関アーネンエルベで、養父の父親の同僚だった男に招かれ、南ドイツの古城に出かけたという。ルカが勤めるトリノのエジプト博物館から助けを求められた夜刀(やと)は、単身城に乗りこむ。彼を迎えたのは人形のように生気がないルカと、おぞましい秘密を持つ住人たちだった……性格も見た目も正反対の“腐れ縁コンビ”が再びタッグを組む! 多彩な館と謎ときが魅力のミステリ・ホラー。


「イヴルズ・ゲート 睡蓮のまどろむ館」 (角川ホラー文庫)(感想ページはこちら)に続くシリーズ第2作。いまのところこのシリーズはここまでしか出ていませんね。

「イヴルズ・ゲート 睡蓮のまどろむ館」感想にも書いたのですが、やはり、ちょっと中途半端なイメージです。

今回の舞台は、日本を離れ、ドイツの古城。
ナチスの残党が出てくるのでは、と思ったあなた、正解です(笑)。
「金属的な輝きを放つ金髪に緑がかった青い目をして身長は父親より高い、アーリアン的な美丈夫だ。」(90ページ)って、いかにも、ですよね。

「災厄の年、ノストラダムス・イヤーと俗称される西暦一九九九年から頻発する地震と火山噴火、各地で相継いだ原子力発電所の事故によって、本州の大半が居住不適地域と化した現在の日本」と前作「イヴルズ・ゲート 睡蓮のまどろむ館」に書かれた設定は、引き続きあまり活かされているようには思えません。

ただ、「イヴルズ・ゲート 睡蓮のまどろむ館」では、異界への門といえる、イヴルズ・ゲートについてはもっぱら人間サイドの話で終始していたのですが、この「イヴルズ・ゲート 黒き堕天使の城」 (角川ホラー文庫)では、向こう側にも目がいくようになっているんです。

「人間が汚れたタライを見て、汚水を流して漂白剤をぶっこんで、タワシでこすり上げてやりたいと思うようなものかな。そうすればタライの中に生きている微生物や細菌は死滅するが、別にそういうものを憎んでいるわけじゃない。ただ、清潔なタライは汚いタライよりいいものだという価値観がある」(307ページ)
と夜刀が比喩を用いて説明していますが、こういう世界観(?)おもしろいですよね。
これをもっと深追いすれば、きっと読後の印象も違ったものになったのでは、と思うのですが。

このあとの続刊が刊行されていないので、あくまでも勝手な想像でしかないのですが、このシリーズ、とても長大なものなのではないでしょうか。これまでの2巻ではちっとも全貌がうかがいしれないような。
だから、この2巻だけをみるとかなり中途半端な印象になってしまう。
このままで終わってしまったら、おすすめし難い作品になってしまいますね。
完成形をみたい気がします。



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胡蝶殺し [日本の作家 近藤史恵]


胡蝶殺し (小学館文庫)

胡蝶殺し (小学館文庫)

  • 作者: 史恵, 近藤
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: 文庫

<カバー裏あらすじ>
市川萩太郎は、蘇芳屋を率いる歌舞伎役者。先輩にあたる中村竜胆の急逝に伴い、その幼い息子・秋司の後見人になる。同学年の自分の息子・俊介よりも秋司に才能を感じた萩太郎は、ふたりの初共演『重の井子別れ』で、三吉役を秋司に、台詞の少ない調姫(しらべひめ)役を俊介にやらせることにする。しかし、初日前日に秋司にトラブルが。急遽、三吉を俊介にやらせることに。そこから、秋司とその母親・由香利と、萩太郎の関係がこじれていく。そしてさらなる悲劇が……。幅広いジャンルで傑作ミステリーを発表しつづける著者が、子役と親の心の内を描く白熱心理サスペンス!


近藤史恵のこの作品、ミステリではありませんね。
タイトルは「胡蝶殺し」と「殺し」ですが、殺人が出てくるわけではない。人も、冒頭で役者:中村竜胆が急逝してしまうことを除くと、死なない。
でも、この作品は「胡蝶殺し」というタイトルがとてもふさわしい。
さらにいうと、事件らしい事件も起こらない。
あらすじには「白熱心理サスペンス」とありますが、サスペンス、というのもちょっと違う気がします。

この作品、市川萩太郎という歌舞伎役者が主人公です。萩太郎の息子が俊介。
先輩中村竜胆の忘れ形見が秋司。
この二人の子役(というか子役候補というか)が物語の中心なのですが、この二人に視点が設定されていないのがポイントだと思います。というのも......

メインは萩太郎。彼の心の動きが、しっかりと描かれる。
歴史を背負う歌舞伎役者の気持ちは、かなり縁遠いものですが、自然にすっと入ってきます。
俊介と秋司の立ち位置(とぼかして書いておきます)をめぐって、秋司の母由香利に引っ掻き回されて、萩太郎が煩悶していくのだな、と考えて読み、確かにその通りにストーリーは進んでいくのですが、秋司に大きな運命が襲い掛かり、思わぬ形で第一章が終わります。
人は死にませんが、胡蝶が殺されて終わります。

続く第二章の趣向を明かしてしまうのは、ミステリではないとはいえ、重大なエチケット違反だと思うので避けますが、第二章でも引き続き萩太郎が視点人物ではあるものの、メインが俊介、秋司にうつったかのように読めました。どちらかというと、俊介よりも秋司に比重がかかっています。秋司はあまり登場しないというのに。
視点人物ではない登場人物、あまり登場しない人物がメインというのもおかしな話かもしれませんが、確かに話の中心は秋司であるように思いました。
第二章だけではなく、振り返ってみるとこの「胡蝶殺し」全体が第一章を含めて秋司の物語といえるように構成されていることがわかります。
すごいなー、と思いました。

その意味では、俊介は脇役なのですが、個人的には俊介にとても共感しました。
あまりおもしろいストーリーにはならないかもしれませんが、俊介を中心に据えた物語も読んでみたいですね。


タグ:近藤史恵
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Kiss me again その2 [タイ・ドラマ]

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タイのドラマ「Kiss Me Again」の感想の続きです。
その1では、Sandee(サンディ)のお姉さんたちに触れましたが、いよいよ Pete (ピート)と Kao(カオ)です。

その1 で引用した告知では、右端に押しやられ、サイズもちょっと小さ目だった ピートとカオですが、物語的にはこの二人のストーリーが一番インパクトありました。
ピートとカオのファンというのか、演じている Tay と New のファンというのか、ボーイズラブファンの熱い支持を得ているようで、GMM TVは YouTube に、ピートとカオのシーンだけを抜き出したバージョンをアップしています。
こちらには、日本語の字幕がついています。
このクリップに従って、ピートとカオのストーリーを紹介します。
(ただしこのクリップは二人が出てくるシーンをすべて抜き出してあるわけではないので、ご留意を)



最初は犬猿の仲だったのですね、二人は。
高校でも知り合いで、カオの友人 Rain(レイン)をめぐって揉めたこともあった。
(ちなみにレインを演じているのは、「2gether」でタインの友人役をやっていた俳優さんです)
大学では、Sandee(サンディ)、Thada(タダ)、June(ジューン)とあわせて5人の仲間を形成するのですが、カオに対するピートの態度はとても悪く、ピートは課題をカオに押しつけて平然としているし、言動もとげとげしい。

ある夜、レインたちがピートに復讐しているところに、カオが遭遇し、倒れているピートを助け起こそうとしたところ、カオを嫌うピートと揉み合いのようになり、偶然、唇が触れ合ってしまう。(ここまでEP1 )

このせいで、二人の仲は一層おかしくなる。
気まずくならないように仲間から抜けろ、とピートはカオに言い放ち(EP2)、仲間たちも手を焼く事態に。
このEP2のシーンはとてもいいシーンだと思います。ピート、カオともに表情が素晴らしい。特にカオの表情はいろんなことを物語っていて引き込まれます。



カオは、カメラの腕を活かして、レインの兄 Sun(サン)がやっているカフェの宣伝のための写真撮影に出かけるなど、仲間たち以外の場所での活動を増やしていく。(EP3~)
ピートの元カノであるMint(ミント)をめぐってもいさかい(行き違い?)があり、仲直りしかけていたのに、ピートはカオと再び険悪モードに。(EP6では殴り合いのけんかも)
バーで揉め事に巻き込まれたピートを仲間たちで助けたことを大きなきっかけに、ピートとカオの仲が改善されていく。(EP7
ところが、ミントが、ピートからカオに乗り換えようとし、ピートはカオを殴りつけてしまう。(EP9



ピートとカオの仲はもうだめなのかな、と思えたところ、カオとサンの間に強引に割り込んでいくピート(EP10)
そして、ピートがカオに告白します(EP10)。

この告白シーン、個人的にすごく印象的です。
というのも......
「Love By Chance」(感想ページはこちらこちら)や「SOTUS」(感想ページはこちらこちら)の感想で「理解してくれることへの共感・感情や友情が愛に変わっていくものかどうか、個人的には疑問です。すごくいい友達、親友というレベルになることは容易に想像できるのですが、そこから恋人というステータスになるものかどうか」と書いてきましたが、もう一つ大きな疑問をずっと抱いていました。
人と付き合う場合、恋心を抱くというステップ(ステップA)と、そのこと(自分が相手のことを好きだということ)を自覚するというステップ(ステップB)、2つのステップがあると思うのです。もちろん2つのステップが同時ということもあります。
上の疑問はステップAについての疑問ですね。
もともと異性愛者(ヘテロセクシャル)だった人物が同性とつきあう場合は、ステップBが重要になるのではと思うのです。自分はヘテロセクシャルだと思っているわけですから、同性のことが好きだと認めるというのは一大イベントでしょう、きっと。
だから、どうやってそれを自覚するのか、というのがずっと抱いていた疑問だったのです。ステップBへの疑問ですね。
それをこの告白シーンは、すっと回答してくれています。
「俺が独り占めしたいのはおまえだ!
最初は俺も Mint を独り占めしたいんだと思ってた。
けどおまえが他の奴と親しくしてるのを見て妙な気分になった。
俺はおまえが好きなんだと思う」
ああ、これは納得できます。なるほど。これだと自覚しますよね。

ピートの性格は、激烈なところがあるのですが、ある意味まっすぐであることがこれまでにもしっかり伝わってきていますので、こと自覚してからの足取りの確かさは素直に信じられます。
対するカオは、こちらはどうももともと同性が好きなタイプのようなので、かつ、仲が悪くはなっていてもピートのことを大切に思っていたようなので、それ(ピートの告白)に応えられるのも自然です。

とはいえ、カオもあっさり受け入れたわけではなく、Mint とすっきりカタをつけることをはじめ、ピートに誠実さを求めていきます。

ピートとカオは、ずっと緊迫感のある関係を続けてきたこともあって、二人がカップル(あるいはカップル未満?)として仲良くしているシーンって、実はあんまりありません。
EP11で、ピートとカオが二人してサンのカフェを訪れるシーンは貴重で、二人の距離感がぐっと縮まっていることを示す、いいシーンです。また同時に、カオに気があるであろうサンが、カオはピートのことが好きなのだと悟るシーンでもあります(ピートがカオのことを好きなのは、割り込んできたところから察していたでしょうけどね)。

Mint とはもう一悶着あるのですが、それがちゃんと次の山場につながっているのですね。
その山場は、ピートの父親に二人の関係が知れてしまうところ(最終エピソードであるEP14)。
このお父さん、「SOTUS S」(感想ページはこちらこちら)に出てくる Ocean Electric社のCEOでしたね。

ピートとカオの物語は、ほかの3つのカップルをはるかに上回るいいインパクトでした。
このあと物語の中の時間的には「Kiss」となり、さらに「Dark Blue Kiss」となります。


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Kiss me again その1 [タイ・ドラマ]

タイのドラマ「Kiss Me Again」の感想です。



「Kiss」(感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第2弾です。
「Kiss」の続き、というわけではなく、「Kiss」より時代を遡り、「Kiss」より前の出来事を描いています。

MyDramaListによる2018年4月から7月にかけて GMM 25 で放映されたようです。
YouTube に、GMM TV によりアップされています。
EP1 から EP14 まで、各エピソード50分くらいです。
YouTubeでは、各エピソード5分割されていまして、合計70本ですね。
こちらも残念ながら日本語の字幕はなく、英語字幕で観ました。
YouTube ↑ のリンクは、GMM TVの Kiss Me Again のリストのページです。

Pete (ピート)と Kao(カオ)がカップルになるまでを描いているので注目!なのですが、それ以外にも盛沢山です。
「Kiss」でメインだったSandee(サンディ)と Sanrak(サンラック)の3人の姉妹が登場。

odvd6f.jpg

この告知の上に5人の女性の顔写真が並んでいますが、これが5姉妹です。
Kiss Me Again」のメインは、この告知の8人。
だけど、8人もいたらもうメインもへったくれもないような気がしますね。
8人並ぶと一人一人が小さくなって見づらいし。

一番左は Sansuay(サンスェイ)。「Kiss」で名前だけ出てきました。一番上のお姉さんです。
演じているのは Jintanutda Lummakanon、愛称 Pango。
これまた気の強い女性です。きれいな顔に似合っている性格といえるかもしれません(ステレオタイプな見方ですが)。
その相手がお隣の So(ソー)。
「Kiss Me Again」のオープニングでは元カレというポジションです。カメラマン。歳下彼氏なんだと思います。
よりを戻すため、 相当の熱意で Sansuay(サンスェイ)にアタックする役どころです。
演じているのは Pirapat Watthanasetsiri、愛称 Earth。
「Love by chance」(感想ページへのリンクはこちらこちら)で、Ae の先輩、Techno先輩の仲間である Type 役をしていた俳優さんです。「TharnType」(感想ページへのリンクはこちらこちら)ではキャスティングが変わってしまって別の俳優さんがやっていましたが。

その右隣りの男性が Matt(マット)。
お医者さん。
母親同士が仲がいいのか、Sandee(サンディ)たちとは家族ぐるみのおつき合いをずっとしてきているような感じです。
物静かですが、いざというときには頼りになる、という感じに描かれています。
演じているのは Tanutchai Vijitvongthong、愛称 Mond。
対するのが、その隣の長身の女性 Sanson(サンソン)。
次女、でしょうか。
背が高くスタイル抜群(というよりモデル体型?)、ですが、顔の方は、いかがでしょう? 個性的な顔立ちですが、きれい、かわいい、というのとは少し違う気がしています。
また、ほかの方がどうご覧になっているのかわかりませんが、嫌なキャラクターです。
Matt(マット)の母親に頼まれて、という背景は一応用意してありますが、Matt(マット)のことをGayだと疑い露骨な探りを入れていく、という流れになっています。
Sanson(サンソン)はもともと Matt(マット)に好意を持っていた、という設定になっていますが、好きな相手に対して、そんなことするかなぁ? もちろん、Matt(マット)が Gayであれば Sanson(サンソン)は恋愛対象たりえないので、確認したいというのはわかりますが、このドラマでのSanson(サンソン)の行動はどう見てもやりすぎです。露骨だし。
正直、カップルが成立するのが不思議なくらいです。
演じているのは Kanyawee Songmuang、愛称 Thanaerng。

その隣が Sanwan (サンワン)。
三女なのか、それとも Sanrak(サンラック)の方が歳上で四女なのか、わかりません。
高校生くらいの設定になっていまして、俗にいうガリ勉タイプ? これ見よがしに眼鏡かけてますね。
メイクの仕方なのでしょうか? ずっとあまりかわいく見えませんでした。
眼鏡をはずしたら別人、という感じにもしてありません。(目の悪い方にはよくあることですが、眼鏡をはずすと目つきが悪くなってしまいますよね。それがリアルに画面に出てきてしまっています)
演じているのは Sananthachat Thanapatpisal、愛称 Fon。
不思議と不機嫌な表情が似合う女優さんです。
相手役はその隣の R。
お金持ちのぼんぼん、という設定です。こちらもどうやら家族ぐるみの知り合いのようです。
素行が悪かったので、父親が立腹。ちゃんとした彼女ができれば落ち着くだろう、と父親が Sanwan (サンワン)とのカップリングを命じる、という流れ。
最初は父親を躱すための見せかけだけのつもりが、Rの方がどんどん本気になっていってしまう。
演じているのは Chutavuth Pattarakhumphol、愛称は March。

ここまでの3組、いずれも男性陣が、長所短所あるけれども、いずれも包容力があるというか、女性サイドを受け止めてあげる、という姿勢が貫かれています。
男性が受け止めるタイプでないとカップルが成立しないな、というくらい、女性サイドが勝手なように設定されているのですね。
これ、男性陣の演技力が重要になってくる設定だと思うのですが(あまりに女性が勝手だと、それでも受け入れるのかよ、と視聴者は思ってしまうので)、うまく説得力があるように見えました。いい俳優を揃えた、ということかな、と。

で、ここまできてようやく、Pete (ピート)と Kao(カオ)にたどり着きますが、ここからその2へ。




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The Gifted Graduation EP13 [The Gifted [タイ・ドラマ]]

タイのドラマ「The Gifted Graduation」の感想の続きです。
今回は最終話であるEP13 です。
例によってストーリーを明かしてしまうので、ご注意ください。



いやあ、ついに終わってしまいました、「The Gifted Graduation」。
「The Gifted」ほどのインパクトはありませんでしたが、相応のクオリティを保った続編になっていました。よかった、よかった。

EP12 に続き、オームの活躍が見られてよかったです。
彼、「The Gifted」でも「He is coming to me」(感想ページへのリンクはこちらこちら)でも、コミカルな役柄になっていまして、お茶らけた感じばかりだったのですが、「The Gifted Graduation」の終盤の活躍は真剣モードでよかったですね。
お茶らけとの落差がまた、グッときました。
同様に「He is coming to me」に出ていたウェーブの方は「The Gifted」シリーズでは剣呑な感じが素敵でしたので、オームもしっかり活躍できてよかった。
いや、本当に、オームが能力使って最初から校長を消しちゃえばよかったのにね(笑)。

観終わったばかりで感想を書いていますので、後になって振り返るとあれこれ出てくる可能性は大ですが、一応、EP12の感想で書いた解決しないといけない問題点は、さらっと説明されていました。
ちょっとずるい解決策でしたが、作品世界、登場人物の性格と照らし合わせて無理のないものになっていまして、それなりの説得力かな、と思えました。

気になったのは、やはりパン。
結局、一人で決めてんじゃん、お前! と思えました。
仲間たちもそれを支持しているようになっているので、これはこれであり、なのかもしれませんが、最後くらいみんなで相談してもよかったんじゃないかな、と思ってしまいました。
まあ、おかげで? ナムターンが最後の最後に登場する必然性は出てきたのですけれども。

あと、パンといえば、物語の折々に挟まれるモノローグ、語り掛けの部分。
EP13 にも出てきましたが、「The Gifted Graduation」通して、一貫したものにはなっていなかったように思いました。惜しい。

興味深いのは Grace でしたね。
想定していた通り、物語のキーとなる人物、能力だったわけですが、最後の一波乱?は印象的でしたね。ありがちといえばありがちなんですが。
それでも、プンの作った機械が再登場した際には、おおっと思ってしまいました。
(タイムパラドックスは......考えない、考えない!)
幸せになってね。

この物語の結末自体は、ひょっとしたら賛否両論あるものかもしれません。
それなりの収まりどころではあると思いますが、The Gifted の位置づけ自体が大きく変わってしまう展開になっていまして、果たしてこれでいいのかどうか。(ついでに書いておくと、The Gifted が The Gifted でなくなるというのはちょっと設定としておかしい、あり得ない気もします)
それでも、高校生がとる選択肢としては妥当なんじゃないかな、と思えました。

「The Gifted Graduation」全体として、途中拡げまくった風呂敷は、うまく畳んだというよりは、畳まなくてもよいような展開にした、というほうが似つかわしいですが、物語としてはすっきり仕上がっていたように思います。
「The Gifted」と比べると衝撃度には欠けますが、十分面白かったです。


いままでの感想をまとめておきます。
The Gifted EP1
The Gifted EP2~4
The Gifted EP5~7
The Gifted EP8~13

The Gifted Graduation EP1~3
The Gifted Graduation EP4~6
The Gifted Graduation EP7
The Gifted Graduation EP8
The Gifted Graduation EP9
The Gifted Graduation EP10
The Gifted Graduation EP11
The Gifted Graduation EP12






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